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No.2
一次創作
奇々怪々霧雨一族
町一体を取り締まっている霧雨一族。その前当主の葬式が今日だ。
霧雨一族のひとりである「
霧雨
(
きりさめ
)
藍子
(
らんこ
)
」は、久々に見る親族の顔ぶれを懐かしみながらも一日を終えようとする。
しかし、気づけば荒廃した世界に辿り着いていて……。
―――――
田舎と呼べるほど閉鎖的でもなく、都会と呼べるほど商業施設がわかりやすく建ち並んでいるわけでもない。
しかし、そんな町の一帯を取り締まっている巨大な家があった。
霧雨
(
きりさめ
)
一族。
今日はその霧雨家の当主の葬式が上げられていたのである。
線香の匂いが漂う。
ある程度の行事も食事も終えて、各々自由な時間を過ごしていた。
【
霧雨藍子
(
きりさめらんこ
)
】
「(こんなつまらない場所、帰ってもいいんだけど)」
親戚が一堂に会することなんて滅多にない。
霧雨藍子は懐かしい顔を見ながら、煙草を吸っていた。
【
霧雨圭吾
(
きりさめけいご
)
】
「煙草は身体に悪いよ~、藍子ちゃん」
ぱっと目の前が陰る。
顔を上げれば、そこには顎鬚を蓄え、いかにもちゃらんぽらんな雰囲気をした男性が立っていた。
【霧雨藍子】
「自分の身体の責任くらい自分で取るわよ」
【霧雨圭吾】
「そうかい、んじゃ俺も一服」
説教しておいて自分も吸うのかよ。と心の中で呟き、藍子はライターを渡す。
【霧雨圭吾】
「新しい当主さまの顔見た?」
【霧雨藍子】
「見てない」
【霧雨圭吾】
「まだ若い兄ちゃんだったよ、大丈夫なのかね」
【霧雨藍子】
「なにが?」
【霧雨圭吾】
「若いモンが家の風習に囚われて、自由を得る間もなく家のてっぺん任されるんだぜ」
「俺ァ、若い子には自由に生きてほしいね」
【霧雨藍子】
「……」
ちらほらと帰宅する人も増えていく中、藍子も帰路につくために霧雨家を出た。
住宅地に入り、一層人の気配はなくなっていく。
夕陽が周囲を赤く照らしており、まるで世界中が赤く染まったみたいだった。
【霧雨藍子】
「(世界の終りみたい)」
ぼんやり、そう思った。
――遠くからアラームの音が聞こえる。
どこかの家のものだろうか、そう思いながら歩みを進めていく。アラームの音は止まない。
頭の中にずっとアラームの音が響いている。
【霧雨藍子】
「(……おかしい)」
アラームの音は次第に大きくなっていく、ぐわんぐわんと頭の中を揺らし、それは頭痛に変わっていく。
耐えきれないほどの騒音に、藍子はついに目を閉じた。
【???】
「目を覚ましませんねえ」
【霧雨圭吾】
「起きろ藍子!!ここにいたら危険だ!!」
目を覚ます。
【霧雨藍子】
「え……圭吾さん?」
「と、誰?」
そこは荒廃とした赤い世界だった。
見慣れた街並みは倒壊し、全体が廃墟のようになっている。
空は赤く染まり、まるで永遠の夕暮れだ。
【霧雨圭吾】
「こいつは霧雨家のヤツだよ、
世恋
(
せれん
)
っつーんだ」
【
霧雨世恋
(
きりさめせれん
)
】
「どうも♪よろしくお願いしま~す♪」
【霧雨藍子】
「は、はあ」
「こちらこそ……、っていうか、なんなのこの状況」
【霧雨圭吾】
「俺にもよくわかんねえ、目が覚めたらここにいた」
【霧雨圭吾】
「状況は当主サマが見てくれてるらしいが……」
藍子が「当主さま?」と言えば、圭吾は親指を自身の後ろに向けた。
そこには若い男が周囲を見ており、腰には日本刀を下げている。
【霧雨藍子】
「あなたが、当主さま……?」
【
霧雨夕映
(
きりさめゆえ
)
】
「
夕映
(
ゆえ
)
でいいですよ、お気遣いなく」
【霧雨世恋】
「あ!ではわたくしのことも、お気軽に世恋とお呼びください♪」
【霧雨藍子】
「え?あ、うん……」
【霧雨藍子】
「じゃなくて、一体どうしてこんなことに……」
【霧雨夕映】
「話が長くなりますが」
【霧雨夕映】
「私たちがいるこの世界は、私たちが元居た世界とは違う並行世界です」
「地球が壊滅した世界……、私たち霧雨一族は、壊滅した地球を救うために何世代にも渡って戦ってきた戦闘一族」
【霧雨夕映】
「前当主が亡くなった今、新たに選抜されたのが我々だということです」
【霧雨圭吾】
「そ、そりゃまた……とんでもねえ話だな」
【霧雨藍子】
「じ、じゃあ私たちは、この世界を救うために戦えってこと?」
「そんなこと、いきなり言われても……!!」
【霧雨世恋】
「そもそも、戦えと言ったってなにと戦うんです?」
【霧雨夕映】
「それは……」
話し合いの中に、突如として獣の咆哮が遮った。
振り返れば、ワイヤーを人型に何重をも巻いたような黒い渦の異形がそこに立っていた。
幽霊のような、化け物のようなそれは、ゆっくりと藍子たちに歩み寄ってくる。
【霧雨藍子】
「……考えなくても、アレと戦えってことよね」
【霧雨圭吾】
「つったって武器らしきモンはなにも持ってねえぞ!?」
【霧雨世恋】
「あったら戦うんです?」
【霧雨夕映】
「皆さん、隠れていてください。ここは私が……!」
夕映が刀を引き抜き確実に化け物へと振り下ろした。
しかし、刃を受けても化け物にダメージが通ったように見えない。
化け物は夕映を薙ぎ払い、藍子たちを狙い走り出す。
【霧雨藍子】
「ヤバい……っ!!」
【???】
「エネミーを探知した、これより排除する」
どこからともなく声が聞こえた。
次いで一陣の風が吹いたかと思えば、見知らぬ男が目の前に立っていた。
男は刀を鞘に仕舞う――化け物は、目にもとまらぬ速さで斬られ、爆風と共に消え去った。
【霧雨藍子】
「……」
【???】
「排除完了。帰還する」
【霧雨圭吾】
「ちょちょちょ、ちょーーーっと待った!!」
「お、俺たちは世界を救うために来たらしいけど、きみはなんだ?」
【???】
「帰還する」
【霧雨藍子】
「帰ろうとするな!」
【霧雨夕映】
「……」
「……
霞
(
かすみ
)
、説明してやってくれ」
「対話を許可する」
霞と呼ばれた男は夕映を見てから、一回頷く。
【
霧雨霞
(
きりさめかすみ
)
】
「俺もこの世界を救うために造られた」
「長時間この世界に居続けることのできないおまえたちの代わりに、ずっとここにいてこの世界を監視している」
【霧雨霞】
「霧雨一族が生み出したアンドロイドだ」
【霧雨世恋】
「ほほー!!アンドロイドですか!!」
「面白いですねえあなた、ところで私たちの武器とかはどうなっているんです?」
【霧雨霞】
「引継ぎ式だ。前当主から受け取れ」
「霧雨家が保管しているはずだ」
【霧雨圭吾】
「……もう一回霧雨家に行くしかねえ、か」
「ん?長時間いられないってことは……俺らは帰ることができんのか?」
【霧雨夕映】
「任務を達成したら自動的に帰還できるはずです」
【霧雨藍子】
「なるほど、そうだったのね……」
【霧雨藍子】
「っていうか、なんで選ばれたのが私たちなの?戦闘経験もなにもないんだけど」
【霧雨霞】
「それを答える権限はない」
「帰還する」
【霧雨藍子】
「あっ!!こら待てーーー!!」
【霧雨世恋】
「ふ~む、この世界を守るためにこれから戦う……」
「なんだかワクワクしますねえ♪」
【霧雨圭吾】
「そうかぁ?おじさんちょっとしんどいぜ」
【霧雨夕映】
「……選ばれてしまったからには、遂行するしかありません」
「頑張りましょう、皆さん」
【霧雨藍子】
「本当に大丈夫かなあ……」
突如として実家が世界を守る組織だったことを知り、そして世界を救うという任務を背負う羽目になった。
果たしてうまくいくのだろうか……。
不安を胸に抱えつつ、明日霧雨家に乗り込むことを予定に組み込み、改めて帰路につくのだった。
#短編創作
2026.3.7
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霧雨一族のひとりである「霧雨 藍子」は、久々に見る親族の顔ぶれを懐かしみながらも一日を終えようとする。
しかし、気づけば荒廃した世界に辿り着いていて……。
―――――
田舎と呼べるほど閉鎖的でもなく、都会と呼べるほど商業施設がわかりやすく建ち並んでいるわけでもない。
しかし、そんな町の一帯を取り締まっている巨大な家があった。
霧雨一族。
今日はその霧雨家の当主の葬式が上げられていたのである。
線香の匂いが漂う。
ある程度の行事も食事も終えて、各々自由な時間を過ごしていた。
「(こんなつまらない場所、帰ってもいいんだけど)」
親戚が一堂に会することなんて滅多にない。
霧雨藍子は懐かしい顔を見ながら、煙草を吸っていた。
「煙草は身体に悪いよ~、藍子ちゃん」
ぱっと目の前が陰る。
顔を上げれば、そこには顎鬚を蓄え、いかにもちゃらんぽらんな雰囲気をした男性が立っていた。
「自分の身体の責任くらい自分で取るわよ」
「そうかい、んじゃ俺も一服」
説教しておいて自分も吸うのかよ。と心の中で呟き、藍子はライターを渡す。
「新しい当主さまの顔見た?」
「見てない」
「まだ若い兄ちゃんだったよ、大丈夫なのかね」
「なにが?」
「若いモンが家の風習に囚われて、自由を得る間もなく家のてっぺん任されるんだぜ」
「俺ァ、若い子には自由に生きてほしいね」
「……」
ちらほらと帰宅する人も増えていく中、藍子も帰路につくために霧雨家を出た。
住宅地に入り、一層人の気配はなくなっていく。
夕陽が周囲を赤く照らしており、まるで世界中が赤く染まったみたいだった。
「(世界の終りみたい)」
ぼんやり、そう思った。
――遠くからアラームの音が聞こえる。
どこかの家のものだろうか、そう思いながら歩みを進めていく。アラームの音は止まない。
頭の中にずっとアラームの音が響いている。
「(……おかしい)」
アラームの音は次第に大きくなっていく、ぐわんぐわんと頭の中を揺らし、それは頭痛に変わっていく。
耐えきれないほどの騒音に、藍子はついに目を閉じた。
「目を覚ましませんねえ」
「起きろ藍子!!ここにいたら危険だ!!」
目を覚ます。
「え……圭吾さん?」
「と、誰?」
そこは荒廃とした赤い世界だった。
見慣れた街並みは倒壊し、全体が廃墟のようになっている。
空は赤く染まり、まるで永遠の夕暮れだ。
「こいつは霧雨家のヤツだよ、世恋っつーんだ」
「どうも♪よろしくお願いしま~す♪」
「は、はあ」
「こちらこそ……、っていうか、なんなのこの状況」
「俺にもよくわかんねえ、目が覚めたらここにいた」
「状況は当主サマが見てくれてるらしいが……」
藍子が「当主さま?」と言えば、圭吾は親指を自身の後ろに向けた。
そこには若い男が周囲を見ており、腰には日本刀を下げている。
「あなたが、当主さま……?」
「夕映でいいですよ、お気遣いなく」
「あ!ではわたくしのことも、お気軽に世恋とお呼びください♪」
「え?あ、うん……」
「じゃなくて、一体どうしてこんなことに……」
「話が長くなりますが」
「私たちがいるこの世界は、私たちが元居た世界とは違う並行世界です」
「地球が壊滅した世界……、私たち霧雨一族は、壊滅した地球を救うために何世代にも渡って戦ってきた戦闘一族」
「前当主が亡くなった今、新たに選抜されたのが我々だということです」
「そ、そりゃまた……とんでもねえ話だな」
「じ、じゃあ私たちは、この世界を救うために戦えってこと?」
「そんなこと、いきなり言われても……!!」
「そもそも、戦えと言ったってなにと戦うんです?」
「それは……」
話し合いの中に、突如として獣の咆哮が遮った。
振り返れば、ワイヤーを人型に何重をも巻いたような黒い渦の異形がそこに立っていた。
幽霊のような、化け物のようなそれは、ゆっくりと藍子たちに歩み寄ってくる。
「……考えなくても、アレと戦えってことよね」
「つったって武器らしきモンはなにも持ってねえぞ!?」
「あったら戦うんです?」
「皆さん、隠れていてください。ここは私が……!」
夕映が刀を引き抜き確実に化け物へと振り下ろした。
しかし、刃を受けても化け物にダメージが通ったように見えない。
化け物は夕映を薙ぎ払い、藍子たちを狙い走り出す。
「ヤバい……っ!!」
「エネミーを探知した、これより排除する」
どこからともなく声が聞こえた。
次いで一陣の風が吹いたかと思えば、見知らぬ男が目の前に立っていた。
男は刀を鞘に仕舞う――化け物は、目にもとまらぬ速さで斬られ、爆風と共に消え去った。
「……」
「排除完了。帰還する」
「ちょちょちょ、ちょーーーっと待った!!」
「お、俺たちは世界を救うために来たらしいけど、きみはなんだ?」
「帰還する」
「帰ろうとするな!」
「……」
「……霞、説明してやってくれ」
「対話を許可する」
霞と呼ばれた男は夕映を見てから、一回頷く。
「俺もこの世界を救うために造られた」
「長時間この世界に居続けることのできないおまえたちの代わりに、ずっとここにいてこの世界を監視している」
「霧雨一族が生み出したアンドロイドだ」
「ほほー!!アンドロイドですか!!」
「面白いですねえあなた、ところで私たちの武器とかはどうなっているんです?」
「引継ぎ式だ。前当主から受け取れ」
「霧雨家が保管しているはずだ」
「……もう一回霧雨家に行くしかねえ、か」
「ん?長時間いられないってことは……俺らは帰ることができんのか?」
「任務を達成したら自動的に帰還できるはずです」
「なるほど、そうだったのね……」
「っていうか、なんで選ばれたのが私たちなの?戦闘経験もなにもないんだけど」
「それを答える権限はない」
「帰還する」
「あっ!!こら待てーーー!!」
「ふ~む、この世界を守るためにこれから戦う……」
「なんだかワクワクしますねえ♪」
「そうかぁ?おじさんちょっとしんどいぜ」
「……選ばれてしまったからには、遂行するしかありません」
「頑張りましょう、皆さん」
「本当に大丈夫かなあ……」
突如として実家が世界を守る組織だったことを知り、そして世界を救うという任務を背負う羽目になった。
果たしてうまくいくのだろうか……。
不安を胸に抱えつつ、明日霧雨家に乗り込むことを予定に組み込み、改めて帰路につくのだった。
#短編創作