@間宮/位

Text

更新履歴

一次創作

LAST × BEAST 2話
飲食店「グッドヤミー」の配達員を担当している青年、旭 ヒロト。
ある日配達へ出向くと、獣牙<ジューガ>と呼ばれる魔力に侵された人間に襲われてしまう。
魔力が体内へと入り込んだヒロトもジューガと化してしまうが……。


※注意※
この作品には以下の要素が含まれています。
暴力表現/残酷表現/未成年が犠牲になる描写





<<次回 3話   1話 前回>>





朝。

ソファに横になり、盛大に爆睡をしているヒロトがいる。
戦闘の後疲労に見舞われながらもなんとか帰宅し、しかしベッドまで歩く気力はなくこうしてソファに横になっている。

それを見た結衣は、フライパンとレードルを両手に構え――。



カンカンカンカン!!



beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「ぎゃああああ!!!」

beast_02_yui 【蒼月結衣】
「寝るならベッドで寝な!お客さんも使うソファだよ!」


叱る結衣に見下ろされ、ヒロトは力なく「は、はぁ~い……」と返事した。




〇〇〇〇 〇〇〇〇




食パンに目玉焼き、野菜スープを朝食にし、結衣とヒロトは食事を始めた。
暖かい料理が疲れた身体に染みていく。

beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「おいしぃ~~~……」

beast_02_yui 【蒼月結衣】
「大袈裟だなあ、昨日そんなに大変な配達だったのか?」


うっ、と言葉に詰まる。
自分が化け物になってしまったかもしれない、という事実を言えていない。
言えるはずもない、まだどういうことなのか、アレはなんだったか、ヒロト自身が理解できていないからだ。


beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「ま、まあそんな感じ」


雰囲気を切り替えるように、ヒロトはテレビを付ける。


npc 【ニュースキャスター】
「昨晩、港の廃倉庫にて暴動があったとの報告が入りました」
「現場に向かったはずの白石蓮警部は行方不明になっており、警察は捜査を進めてー―」

beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「えっ……」


beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「(あの刑事さんが、行方不明……?)」
「(確か通報が入って向かったはずなのに、……まさか、そこでもなにか?)」





beast_02_yui 【蒼月結衣】
「ぎゃあああ!?」
「誰だおまえ!?」



厨房のほうから結衣の悲鳴が聞こえ、ヒロトは慌てて向かう。


beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「ど、どうしたの結衣!?」


結衣の視線のほうを見れば、知らない男が鍋に残った野菜スープを食べていた。


beast_02_yui 【蒼月結衣】
「ヒ、ヒロト!!泥棒!!通報!!」

beast_04_shiori 【???】
「人聞きが悪いな」
「困っているだろうと思ったから助言に来ただけなのに」


beast_02_yui 【蒼月結衣】
「なっ、なに言っ……」


beast_04_shiori 【黒鉄栞】
「俺は黒鉄(くろがね) (しおり)
「白石蓮警部の行方、俺は知ってるぜ」




beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「……え?」










〇〇〇〇 〇〇〇〇










どこかの廃ビルの中。
湿って淀んだ空気が辺りを充満している。

蓮はぼやけた意識を徐々に浮上させていき、目を覚ました。


beast_03_ren 【白石蓮】
「……ここは」


周囲を見渡せば、謎の器具がいくつも並んでいる。
自分の身体は拘束され、椅子に座らされている。

beast_06_zion 【???】
「やあ、目が覚めたかい」


beast_03_ren 【白石蓮】
「誰だ、貴様……」


beast_06_zion 【???】
「ただのモルモットに名乗る名はないよ」
「きみが適合すれば教えてあげる」


beast_03_ren 【白石蓮】
「適合?なんの話だ」




beast_06_zion 【シオン】
「だから」
「適合したら教えてあげるって」




男は注射器を取り出し、それを躊躇なく蓮に突き刺した。
血流に沿って流れていく激痛と耐えられないほどの熱さ。

身体中が沸騰するような耐えがたい感覚に、絶叫が響き渡った。


#LAST × BEAST



<<次回 3話   1話 前回>>

戻る

一次創作

LAST × BEAST 1話

飲食店「グッドヤミー」の配達員を担当している青年、旭 ヒロト。
ある日配達へ出向くと、獣牙<ジューガ>と呼ばれる魔力に侵された人間に襲われてしまう。
魔力が体内へと入り込んだヒロトもジューガと化してしまうが……。


※注意※
この作品には以下の要素が含まれています。
暴力表現/残酷表現/未成年が犠牲になる描写




<<次回 1話





絢爛豪華な屋内、ワインを片手に洒落た格好をした老若男女が談笑を交わしている。

ジャズと共に酒気を帯びた部屋はにわかに色めきだっており、誰も彼もが浮かれている。

壇上に男が立ち、会場に向かって語り掛ける。




beast_05_eurid 【???】
「ようこそ皆さま、魔食<マショク>会へ」




会場にいる人間たちが一斉に彼を見る。



beast_05_eurid 【???】
「皆さまに幸運が降りかからんことを」



男の言葉に、会場は拍手で埋まっていく。
男が不敵に微笑んだことに気付かずに。







〇〇〇〇 〇〇〇〇







飲食店「グッドヤミー」。
フードデリバリーも行っている個人経営の飲食店だ。

時刻は昼頃。
店は大いに賑わっており、店長である蒼月(あおつき) 結衣(ゆい)は忙しそうに歩き回っていた。



beast_02_yui 【蒼月結衣】
「ヒロトー!注文入った!デリバリー頼む!」



結衣がそう奥へと声を掛ければ、活発そうな青年が顔を覗かせた。



beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「はーい!行ってきます!」



デリバリー担当、(あさひ) ヒロトは、元気よく返事をして店を出た。








バイクに乗り込み、しばらく走らせる。
スマホに表示されるナビは問題なく動作しており、目的地までもう少しだ。

といったところで、とある施設に通りかかりバイクを止める。



npc 【子供たち】
「あ!ヒロトにいちゃん!」



施設内にいた子供が顔を上げ、一斉にヒロトに向かって駆け出す。
ヒロトに気付いた女性も近づき、顔を明るくする。

npc 【院長】
「あらヒロトくん!いらっしゃい!」

彼女はヒロトを幼い頃から見てくれていた孤児院の院長先生だ。
ヒロトは笑顔を浮かべる。

beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「こんにちは!通りかかったから挨拶に来たんだ」
「あとこれ、どうぞ」

ヒロトはお菓子の入った袋を差し出す。

npc 【院長】
「いつもありがとうね」
「今仕事中?」

beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「うん、だから今日は子供たちと食べて」

npc 【院長】
「頑張ってね、またいつでもいらっしゃい」

beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「うん!じゃあまたね!」

子供たちが「ヒロトにいちゃんまたね~!」と手を振る姿を見ながら、ヒロトはバイクに跨り目的地へと走らせた。







ヒロトは元孤児だ。
両親の顔は見たことがない、生きているかもわからない。
赤ん坊の頃、この施設に捨てられていたらしい。それを見た孤児院の先生たちがヒロトを大人になるまで育ててくれた。

今でも頻繁に孤児院に通い、子供たちの支援や寄付を行っている。
思い出深い、ヒロトにとって大切な場所がこの孤児院だ。







〇〇〇〇 〇〇〇〇







beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「すみませーん!グッドヤミーのデリバリーですー!」



ヒロトが辿り着いた先は、周囲には誰もいない廃倉庫だった。
こんなところで出前を頼むとは考えにくい、イタズラかなにかだったのだろうか?
首を傾げながら中へ入って行くと、数人の人間が座り込んでいた。



beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「あ、すみません。グッドヤミーのデリバリーなんですけど……」





ヒロトは足を止める。
そこにいる人間たちから異様な空気が漂っているのを感じたからだ。



人間たちはゆっくりと立ち上がり、ヒロトを睨む。
呻き声を上げたかと思うと、それはまるで獣の咆哮のように変わっていく。

それと同時に、身体もぐにゃりと形を変え、全体が骨で出来たような硬質な皮膚が組みあがって行く。

驚愕に立ち止まるヒロトだったが、格好の餌食とでもいうように化け物たちはヒロトへと襲い掛かる。




beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「うわっ!?ま、ま、待って……!」




間一髪のところで避けるヒロトだが、化け物たちはまだ襲い掛かってくる。
刃と化した爪が目の前を掠める。こんなものロクに喰らえば生きているかすらわからない。






beast_03_ren 【???】
「手を挙げろ、動けば撃つ!」





突如、低い声が響く。
見れば入口のほうに知らぬ男が拳銃を構えていた。


beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「ま、待って!撃たないで!多分この人たち人間で……!」

beast_03_ren 【???】
「言ってる場合か、死ぬぞ」


化け物たちは男へも狙いを定める。
しかし、男の身体能力が良いのか、化け物たちを見事にも薙ぎ払っていく。



beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「え!?きみ、強くない!?」

beast_03_ren 【???】
「褒めるなら後でしろ!」




しかし、化け物たちの猛攻は止まらない。
じわじわと追い詰められていくのは止まらず、化け物が一人ヒロトの肩を掴んだ。

鋭い牙が皮膚に突き刺さって行く。その痛みをまるでスローのように感じていた。


ドクン、と心臓が脈を打つ。
血流に沿って身体が熱くなっていく、脳みそが沸騰しそうなほど煮えたぎっていくのを感じる。


beast_03_ren 【???】
「おまえ……!!」


ヒロトの身体は化け物と同じように変化していく。
地を這うような呻き声が勝手に上がる。目を開ければ、化け物と同じ身体がそこにあった。




beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「うわ~~!!おれ、化け物になっちゃった!!」






beast_03_ren 【???】
「え?」

beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「え?」






beast_03_ren 【???】
「……」
「いや、意識あるのか?」



beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「え?あ、なんかある!」
「身体も別に普通に動くよ、ほら」



beast_03_ren 【???】
「……」
「……よくわからないが」
「とにかくこいつらをなんとかするぞ!」

beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「おっけー!」


化け物に変化したことによって身体能力が上がったらしい。
先程まで歯が立たなかった相手だったが、今は攻撃が効いているらしい。
ヒロトの攻撃により、化け物たちは次々に怯んでいく。

化け物たちは顔を見合わせ、倉庫から立ち去って行く。


beast_03_ren 【???】
「……終わったか」


男が呟くと、ヒロトの身体も元に戻って行く。

beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「なんだったんだろう、アレ……」

beast_03_ren 【???】
「よくわからんが」




男はヒロトに銃を向ける。




beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「え!?なんで!?」

beast_03_ren 【???】
「貴様もいつヤツらと同じように人を攻撃するかわからん」
「署まで同行願おう」

beast_01_hiroto 【旭ヒロト】
「待って!おれ、ただの配達員だよ!!」

beast_03_ren 【???】
「それも署で……」




beast_03_ren 【???】
「……白石だ、どうした」

npc 【無線】
『××番地で人が襲われているんです、助けてください!』




beast_03_ren 【???】
「……」
「……わかった」



男はしばらくヒロトから目を離さないでいたが、現場へ向かうために走って行く。
ヒロトはへろへろと地面に座り込み、盛大にため息をついた。







〇〇〇〇 〇〇〇〇






現場へ到着した男――白石(しらいし) (れん)だったが、周囲を見ても異変はなにもない。
イタズラの通報だったのだろうか、と意識を過らせた瞬間――目の前が真っ暗になった。




beast_03_ren 【白石蓮】
「ぐ、あ……ッ!?」









beast_06_zion 【???】
「いい材料になりそうだよ、刑事さん」








<<次回 1話



#LAST × BEAST

戻る

一次創作

楽しみは最期にとっておく
レイニスとノワールの「約束」のおはなし。



 寝坊した。
 随分と寝入ってしまっていたようで、気付けば太陽は真上を向いている。すっかり昼だ。
 仲間たちは既に起きているだろうか、起きているのなら起こしてくれれば助かったのだが。
 そう脳内で愚痴りながら、重い身体を起こしてベッドから出る。

「レイニス」

 下に降りると、レイニスだけが宿のカウンターを前に座っていた。
 レイニスはノワールのほうを見てよっと片手を上げる。

「寝坊野郎」
「そういうレイニスは、ひとりでなにをしているんだ?」
「ん~?ノワールを待ってたんだよ」

 俺を?と言えば、「うん」と返事が返ってくる。

「なんか、顔が見たくて」
「…………」

 思わずまだ夢でも見ているのかと思ってしまった。
 この男はいつだってノワールの欲しい言葉をくれる。それが恋愛的な好意を持たずして行われるのだから、こちらとしては心臓が保ったものじゃないが。

「寂しいのか?」
「寂しいのかも」
「かもって……」
「ノワールって、いつかどこかで」

 レイニスはそこまで言って、ノワールの顔を見る。

「俺の手の届かない場所でいなくなってそうだから」
「……それはつまり、俺はどこかで野垂れ死ぬんだろうなって心配か」
「そう!心配してんの、俺は」
「はは」

 ロクな死に方をしない、自分でもそう思っている。
 最期が仲間たちに看取られて、なんて綺麗に終われると思えない。
 でも。

「おまえが言ったんだろう」
「なにを?」
「俺が“死ぬときはおまえが殺してくれ”って言ったら、“じゃあ俺が殺すまで誰にも殺されるな”って」
「言った気がする」
「気がするじゃないよ、言った」
「言ったかあ」
「俺は忘れないから」

 な。と笑えば、レイニスは幾許か安心したみたいで、いつもみたいに明るく笑った。

「じゃあ、どこにも行かないな」
「もちろん、行くつもりもない」
「よ~し」

 実際、ただの口約束に効果があると思えない。
 それでも、レイニスとの約束なら、少しは現実になるような気がした。

 もし実際に、レイニスがノワールを殺すとなったら、きっとレイニスに誰よりも深い傷を残しておける。
 約束は叶えてくれる男だ。
 そのことを、ノワールは誰よりも知っている。

 そう考えながら、自分が死ぬときも少しは楽しみだなと思ったのだ。



#砂の月を目指して

戻る

一次創作

A mountain of corpses
ディープ・ブルー 最終話

―――――

第3話 前回>>





 堕喰(だくろ)の死骸の山が積み重なっている。
 一筋の光が頭上から差し込み、小さな光だけが周囲を照らしている。

 一匹の堕喰が現れる。それは涎を滴らせて、標的を睨みつけている。
 その向こう側にいるのは、影狗(かげいぬ)だった。荒く息を切らせて、春日井らと別れた時よりもどこもかしこも身体中をボロボロにさせていた。
 影狗の背後には無数の堕喰が転がっている。そして目の前にいる堕喰も、雄叫びを上げ影狗に立ち向かい――それは、影狗の背から生えている触手によって貫かれた。

 堕喰は暴れまわり、それでも影狗を喰らおうとする。
 死骸の地を走り、攻撃を避けて新たな一撃を堕喰に加える。堕喰の尻尾が影狗の鳩尾に強打した。がくん、と視界が歪んだが、それでも決して折れることはなく、最後の一撃を堕喰に与えた。

 鳴き声を上げて絶命する堕喰に近づき、その肉に噛みついた。

 不味い。

 最低の舌触り、食感、味。

 飢えた野良犬のように堕喰の死骸を喰らっている。

レイター「そんなことしたって無駄だって、なんで気づかねェんだよ」

 赤い髪の少女が現れ、影狗を嘲笑する。

レイター「エル様はおまえなんざ目に入ってすらねェよ!」「どんだけ仲間の死骸喰らったって、おまえはおまえのままだよ」
レイター「無数にいる堕喰となんら変わらない、ただの舞台装置なのさ――ひィッ!?」

 影狗の触手が、レイターのすぐ横の地面を叩きつけた。

影狗「目障りだ、消えろ」

 そう言われたレイターは、ぎ、と影狗を睨みつけ、逃げるようにして去って行く。

影狗「……うるせえ……どいつもこいつも……」





 雨が降っている。

 ふらふらと宛てもなく彷徨っている。

 あれほど死骸を喰ったのに、乾きが埋まらない。
 大きな空洞が自分の中にある気がしている。

???「影狗か?」

 自分を名を呼ばれ、焦りから振り返る。
 そこには敵意もなにもない、何度か世話になったことがあるディープ・ブルー医療班の人間が、傘を差して立っていた。

 名前はなんだったか――、篠田(しのだ) 灰世(はいせ)という男だったと思う。
 彼は心配そうに影狗に駆け寄る。

篠田「どうしたんだ、傘も差さないで」
篠田「それにあちこちに怪我をしている……、なにがあった?」

影狗「……ここ、ディープ・ブルーの敷地内じゃないだろ」
影狗「なんでこんなところに……」

篠田「ああ、実は出張でな。他の施設に足を運んでいたんだ」

 宛てもなく適当に彷徨っていたせいで気づかなかったが、他の施設の敷地内まで来てしまっていたようだ。

篠田「すぐ近くに借りている宿があるんだ、そこで治療しよう」
影狗「い、いいって。あんたには関係ねえ……」
篠田「同僚を放って置けるほど薄情ではないんだ。用事があるのならまた明日にしよう、今日は介抱させてくれ」

 篠田は影狗がディープ・ブルーを辞めたことを知らないのだろう。彼は笑顔を浮かべて、「行こう」と言って影狗の手を引く。
 むず痒い。なんだ、これは。





篠田「よし、これでいいだろう」

 治療を終えた篠田は、そう言って医療器具を直す。

篠田「おまえは無茶をすることが多いからな、仕方ないとは思っているよ」
影狗「……」
篠田「それで、なんでここまで来ていたんだ?任務の最中で?」
影狗「……そんな、感じだな」嘘~~~~
篠田「そうか」「腹は減ってるか?簡単なものにはなってしまうが、スープくらいなら食えそうだろうか」
影狗「……まあ、それくらいなら」
篠田「わかった、少し待っていてくれ」

 むず痒い。

 何故だか、雨で冷えていたはずの体温が熱くなった気がした。





 翌日、雨はすっかり上がっていて、雲から差し込む朝日が眩しかった。

 隣のベッドでは、篠田が穏やかに眠っている。
 彼とは住んでいる場所が違う、育ってきた環境も違う、生きている場所が違う。
 こんなに優しくされる筋合いはない。

 脳裏に春日井が浮かんだ。彼はその優しさを、常に享受し続けてきたのだろう。
 同じ母親から生まれた兄弟が、ここまで違うものなのかと。

 恨めしい、羨ましい。

影狗「(悪いな)」
影狗「(あんたと居たら、いつあんたを喰ってしまうかわからない)」

 篠田を喰ったところで、それから守ってくれる人など、自分には居ないのだ。

202603091622104-mamiya.webp



 次ページ


第3話 前回>>





#ディープ・ブルー

戻る

一次創作

Come here
ディープ・ブルー 第3話

―――――

<< 次回 最終話   第2話 前回>>





 施設全体が混乱に陥り、各地で怒号や助けを求める声が聞こえる。

神無木(かんなぎ)春日井(かすがい)班!無事か!?」

 そんな時、小清水(こしみず)桐ケ谷(きりがや)を呼ぶ声が聞こえた。見ればそこには神無木と由自(ゆうじ)が居た。桃李(とうり)が連れて来たようだ。

由自「悪いけど、篠田(しのだ)先生は今出張中。だから代わりに神無木と私が診るわ」
由自「あなたたちも出撃命令が出てる。準備ができたら外にいる堕喰(だくろ)たちと戦ってきて」

小清水「わ、わかりました」
桃李「まったく、なにがどうなってこんなことになってんのよ……」頭抱える
小清水「文句なんか言っても状況は変わりませんよ」
桃李「わかってるわよ」
桃李「ほら、行くわよ!なにボサっとしてるの!」
桐ケ谷「あ、……、すみません」

 桃李の呼びかけに、桐ケ谷ははっとした表情をする。しかし。

桐ケ谷「あの、すみません……。先に行っててもらえますか?」
桃李「はあ!?なに言ってるの、こんな非常事態に!」
桐ケ谷「わかっています、すぐに戻りますから」

 そう言って、普段腰の低い桐ケ谷では考えられないほどの聞き分けのなさで、そのままどこかへと走り去ってしまった。

小清水「……桐ケ谷さんが考えもなしにどっか行くわけないでしょ」
小清水「きっとなんか考えがあるんですよ、とにかく俺らは外に出ましょう」
桃李「……そうね、わかったわ」

 桃李もそれとなく納得したようで、小清水と二人で外にいる部隊への応戦に参加することになる。





 ……。

 …………。

 声。

 声が聞こえる。

 歌声?なにか、子守歌を聴いているような安心感。

 それは自分を呼んでいるような、そんな気がして。



由自「だから片付けはちゃんとしてってあれほど言ったのよ」
神無木「しているさ!オレの頭の中ではこれはここ、あれはそこってちゃんと整理ができて」
由自「ないから避難経路の地図を探すのに時間かかってるのよ!ああもう、バカと話すと疲れる」
神無木「誰がバカだ!!バカというほうがバカだ!!やーいべろべろば~~~~~」
由自「はっ倒すわよ」「……あれ?」
神無木「む!どうした!」
由自「……ベッドに寝てたはずの春日井は?」








 ふらふらと、覚束ない足取りで声がする方向へと向かう。
 まだ頭は痛む、耳鳴りは止まない。
 視界も良好とは言い難いが、それでも呼ばれているのであれば向かわねばならない。

春日井「……!」

 太陽の光が差し込む、外のようだ。

 外に出れば、そこはディープ・ブルーが所有する空き地だった。
 そこに、一人の少女がいた。

 少女は赤いツインテールを揺らし、くるくると踊っている。
 その容姿からも、まるで一人でサーカスを行っているピエロのように思えてくる。

 少女は春日井を見ると、ニタリと笑った。

レイター「アンタが春日井?」
レイター「あたしはレイター、アンタら人間が憎む存在、堕喰を崇拝する者さ!」
レイター「あたしが望むのはこの世の終焉!」「この腐りきった世界を、青い地球を!生き物の血で赤く染め上げる!」
レイター「それを叶えてくださるのが、他でもない堕喰を産み出したマリア() エル様だ!」

春日井「……なにを、言っている」
春日井「正直毛ほども理解ができないが、貴様らが人類に仇名す存在だということはハッキリとわかった」
春日井「ディープ・ブルーを襲撃するとは、よほどそちらも切羽詰まっている状況だと見受けるが」

レイター「わかってねえなァ!」
レイター「エル様に会ったんだろォ?ならわかるはずだろ!」
レイター「息子に会いたがっている、母親の気持ちが……!!」

春日井「……すまないが、理解できる言語で喋ってくれ」

レイター「だァから」

 レイターは春日井を指差す。

レイター「おまえの正体は」
小清水「黙れ!!!!!」

 その時、無数の弾丸がレイターを襲った。
 しかし、地面から堕喰の腕が生えてくるように伸ばされ、そのまま前へ出てきた小清水へと攻撃を振りかざす。

春日井「小清水さん!!」

 小清水はそれを交わし、刀へと変形したショットガンを振り下ろし、堕喰へとぶつける。
 衝撃音と共に、堕喰の身体は朽ちていった。その残骸を踏みつけ、小清水は武器をレイターに向けた。

レイター「きゃははははッ!!」
レイター「お笑いだなァ!そんなに春日井(こいつ)に正体を知られたくねェのかよ!」
小清水「春日井さん!!こいつに耳を貸すな!!」

レイター「うるっせェな」
レイター「おまえも、ジン・ブラッドレイも、ディープ・ブルーも」
レイター「いつまでも隠し通せると思うなよ」

小清水「黙れと言っている!!」
小清水「人類の未来のためだとか、そういう大層な大義なんざ今はどうでもいい!!」
小清水「俺が、――俺自身が!!」
小清水「この人の正義心を、濁したくないだけだ……!!!!!」

春日井「……小清水さん」

レイター「本当に正しい正義を持ってるなら、真実を知った程度では濁らんだろうよ」
レイター「春日井京介」
レイター「てめェの正体は、堕喰を産んだ母である、エル様の息子だ」
レイター「つまり、てめェも堕喰とおんなじってワケだよ」
レイター「おまえは産まれて間もない頃、ディープ・ブルーという名前がつく前から堕喰を調査していたこの機関に保護され」「そうして今日まで、お偉いさんたち絡みで隠されてたってワケだ」

春日井「……」

202603091622103-mamiya.webp

レイター「てめェが時折数時間意識を失うのも、殉職する仲の良い同僚の死も」
レイター「全部、てめェが堕喰であり、人を喰らう性質のせいだという説明で片付く」

レイター「どうだ?信頼する上司や仲間から、おまえが人類に憎まれる立場である存在だとわかった気持ちは?」
レイター「あたしの役目は、おまえをエル様の元へ連れ戻すこと」
レイター「そしておまえは、エル様と共に地球を赤く染め上げるために、全てを喰らい尽くすんだよ」

レイター「さァ!!!!人類を憎め、未来を閉ざせ!!!!赤い海に溺れろ、人類共!!!!!!」

 レイターがそう叫ぶと、背後から巨大な腕が地面から這い出てくる。地震のように揺れるせいで、立っていることができない。その腕は続いて2本目、3本目――そして、8本目も生えてきて、地面に這いつくばる。
 顔を覗かせた堕喰は雄叫びを上げる。耳障りの悪い不協和音のそれは、立ちはだかるだけで戦意を喪失させるに十分であった。

レイター「蹂躙しろ、堕喰!!!!」

小清水「クソッ……!!」
春日井「小清水さん、俺の武器は!!」
小清水「持ってきてませんよ!!てか逆になんであんたが持ってきてないんです!?」
春日井「せ、戦闘になるとは聞いてなかったんですよ!!」
小清水「そういえば警報鳴る前に気絶してたなあ あんたって人は!!」

 小清水が武器を構える。しかし、一人でどうにかなるような相手ではないだろう。
 冷や汗なのかよくわからない汗がこめかみを伝っていく。どうにもこうにも、自分が一人で戦っている間に、春日井に武器を持ってこさせるしかない。
 それに、これほど巨大であれば、ディープ・ブルー側から助けが来るかもしれない――。

 やるしかない――。そう引き金に指を掛けた瞬間だった。

???「照準、目標の頭部に設置」「風向き良好」「出力最大値」「射撃します」

 その場に似合わないほどの落ち着いた声。

 一瞬、風が止み、物音さえもしなくなった。そう、気がしただけかもしれない。

 流れ星のような青い一筋の光が、堕喰の頭部を貫いた。

レイター「なっ……!?」

桐ケ谷「目標、被弾しています!!」
???「おお、腕は鈍っていなかったようで」
桐ケ谷「救援、感謝します」
???「いえいえ、こちらこそ」

 見れば、後ろから桐ケ谷と、見知らぬ子供のような風貌をした少年が立っていた。少年だろうか、ジンと雰囲気が似ており、ぱっと見で性別が判別できなかった。

レイター「て、てめェ!!なにモンだ!?」

???「おや、失礼」
モルガ「私はモルガナイト、お気軽にモルガ、などと呼んでください」
モルガ「ディープ・ブルーの管理人、ジン・ブラッドレイとは友人関係でしてね」「ディープ・ブルーに危機があったと耳に挟みまして。救援に来た次第です」

レイター「ッ……!!」

 頼りにしていた巨大堕喰が一撃で倒されたことが予想外だったのだろう。レイターは新たに堕喰を呼び寄せ、それの背中に乗り逃げ帰っていく。





春日井「……あの」
小清水「……はい」
春日井「……知ってた、んですか」「あなたも」
小清水「……」盛大なため息

小清水「知ったのは、不本意でしたけどね」
小清水「管理人とは協力関係にありました。……あなたはディープ・ブルーにおける最大戦力だ、人類の未来のために、あなたから真実を隠してほしいと」

春日井「……」
小清水「……怒って、ますよ、ねえ……」
春日井「いえ……」「怒っている、というより……」
春日井「多大なる迷惑をかけたはずです、皆さんにも、あなたにも」「知らなかったとはいえ、俺は……大事な友人を、この手で殺している」「俺は、俺自身を許すことはできません」「しかし、だからといって人類を憎む理には敵わない」

春日井「むしろ、人類の脅威になりかねない俺を、保護してくださったのがディープ・ブルーです」
春日井「なら、俺は恩を返さなければならない」

小清水「……」
小清水「そう、か」
小清水「強いな、あんた」「……だから、俺はあんたを守りたかった」

小清水「正義心を信じるなんて言って、真にあんたを信じることができていなかったのかもしれないな」
小清水「あんたが、これくらいで折れるわけがないのに」

ジン「本当ですよ」
小清水「ウワッ!!か、か、管理人!!驚かせないでくださいって!!」
ジン「ふふ、すみません」

ジン「私からもお詫びをさせてください、春日井さん」
ジン「……長い間、我々ディープ・ブルーはあなたの真実を隠蔽していた」
ジン「長い間積み上げた信頼関係を、台無しにするような真似をしていた」
ジン「申し訳ありません」

春日井「……」後ろ頭を掻く
春日井「……頭を上げてください、管理人」
春日井「俺は……、まだ、なにも諦めてなんかいませんよ」

モルガ「そうですよ、ジン」
モルガ「管理人であれば、彼を信じてあげてください」
モルガ「我々は、まだやるべきことがあります」

ジン「……そうですね、モルガ」

ジン「周囲の堕喰も、首謀者が逃走したことにより、同じように逃走を開始しました」
ジン「怪我人も多く出ています、しばらくは施設全体の療養が必要でしょう」
ジン「春日井さんも、まだ体調が万全とは言い難いはずです」
ジン「一度戻って、身体を休めること。それが、今全部隊に下す命令です」

小清水「……りょーかいです」
春日井「了解しました」

 そうして、彼らは施設へと戻っていく。
 その間際、桐ケ谷は振り返る。

桐ケ谷「……イオさん」
桐ケ谷「……モルガさんが来ていたこと、どうして知っていたんですか?」

桐ケ谷「……」

桐ケ谷「……いえ」
桐ケ谷「ありがとうございました」

小清水「桐ケ谷さーん、帰りますよー」
桐ケ谷「あ。は、はい……」

 夕暮れの紫が空を染めていく。
 太陽が沈む向こう側は、血のように赤い光が周囲を照らしていたのだった。



<< 次回 最終話   第2話 前回>>



#ディープ・ブルー

戻る

一次創作

Stray Dog
ディープ・ブルー 第2話

―――――

<< 次回 第3話   第1話 前回>>





 食堂まで行けば、見慣れた姿があった。桐ケ谷(きりがや)だ。
 桐ケ谷は丁寧な仕草で食事を取っている。真面目さが現れているのがわかる。

 春日井(かすがい)が桐ケ谷に声を掛けようと足を踏み出した時、別の隊員が桐ケ谷に声をかけた。見るからに柄が悪く、また声も大きい。好意的ではないのは明らかだろう。

隊員A「よお桐ケ谷さん」
隊員B「一人で食べてんの?アンタんとこに美人な女いるじゃん」「なんだっけ?講師もやってる胸デケェ女」
隊員C「誘えねえっしょ、だってアンタ、あの女講師の弟殺しちゃったもんなあ」

 桐ケ谷は答えない。無視などではなく、むしろ居心地が悪そうに、言い返す言葉すらないとでも言うように目を背けている。

小清水(こしみず)「なんだアイツら……って、春日井さん!?」

 春日井はずかずかと彼らの前まで歩く。

春日井「うちのメンバーがなにか」
隊員A「ああ?」
春日井「ここは食堂だ、他の利用者のことも考えろ」
隊員B「なんだアンタ、コイツの知り合い?」
隊員C「春日井班の班長だろ。アンタもコイツに殺されないように気を付けなよー」

桃李(とうり)「あらあら、随分賑やかですね~」
隊員たち「ヒッ!?」

 突如背後からした声に驚いたのか、隊員たちはビクリと肩を跳ねさせて驚く。
 振り向けば、笑顔の桃李がいた。

桃李「申し訳ありませんが、ここは共用施設なので……。あまり品の無い言葉は、使用禁止を言い渡されるかもしれませんよ?」「今すぐに」
隊員たち「へ……っ?」

 桃李が視線を落とす。全員が目を追えば、そこには笑顔を浮かべたディープ・ブルーの管理人 ジン・ブラッドレイが立っていた。

 これには隊員たちも顔を青ざめ、我先にと逃げ出していく。

桃李「二度とクソしょうもないことで絡んでくるんじゃないわよバカガキ共がよ」
小清水「く、口悪~い……」

春日井「すみません、桃李さん、管理人。……大丈夫ですか、桐ケ谷さん」
桐ケ谷「あ、ああ……。俺なら大丈夫です。……すみません」

 桐ケ谷は春日井と目を合わせようとはしなかった。

小清水「ってゆーか、なんで管理人がここに?」
桃李「どうやら私たちに話があるらしくて。管理人直々に春日井班ご指名ってことよ」
小清水「えっ、な、なんです話って」

ジン「ここではなんです。管理室に来ていただけませんか?」






―管理室

ジン「実は様子のおかしい堕喰(だくろ)の目撃情報がありまして」

春日井「様子のおかしい……?」
小清水「逆に正常な堕喰ってなんです」

ジン「ふふ、確かに。そう言われれば、正常な堕喰という定義には答えかねますね」
ジン「しかし、ある程度の行動パターンは予測できます。しかし、近頃その行動パターンから外れる行為をする堕喰が報告されているのです」

ジン「これを見ていただけますか?」

 ジンはタブレットから映像を流す。
 そこには、他班と堕喰との戦闘記録の映像が映されていた。
 見慣れた戦闘光景。しかし、突如として堕喰は動きを止めた。そして、なにかに導かれるようにして、その場から去って行った。

桐ケ谷「これは……どういうことです?」
小清水「逃げている……というわけでもなさそうですね。なにかに気づいたように顔を上げて、どこかへと向かって行ってる様子です」

ジン「結局、この堕喰の後は追いつくことはできず、任務は達成できていません」
ジン「しかし、先日この堕喰をまた見かけたという目撃情報がありました」
ジン「この堕喰が特殊なのか、一体どうしてこの場から離脱したのか」
ジン「ある程度の情報が欲しい。春日井班には、この現象の調査をお願いしたいのです」





 目的地に到着する。そこには情報通り、堕喰が居た。

桐ケ谷「堕喰が負傷したことによる逃走などをした。という前例は今までありません」
桐ケ谷「通常、堕喰が倒れるか、こちらが倒れるまで戦闘は続くものです。……なにがあるかわかりません、慎重にやりましょう」
小清水「了解。んじゃ、やりますか」

 春日井班は戦場に飛び込む。桃李は構えていた斧型の武器を振りかざし――それを堕喰の頭部目掛けて振り下ろす。堕喰は雄叫びを上げる。そしてぐらりと身体を揺らしたところを、小清水のショットガンが撃ち込まれるだろう。

 そして春日井が抜刀した剣を、堕喰に攻撃する――瞬間だった。

???「だめだよ、帰っておいで」

 戦場に似合わない、少女のような声色が響く。
 その声が聞こえた瞬間、堕喰はぴたりと動きを止める。そしてその堕喰の後ろから、その声の主であろう子供が姿を現したのだ。

小清水「子供……?なんでこんなところに」

 その場にいる全員が訝しがっていると、子供はにこりと微笑んで春日井に近づく。

???「京介、ひさしぶり」
???「やっと会えたね」

春日井「え……、な、なんで俺のことを知って……」
春日井「きみは誰だ……?」

???「私はエル」
エル「おぼえてなくても仕方ないよ、まだちいさかったもの」
エル「でも、もうだいじょうぶだよ」
エル「私のところにかえっておいで、京介」

202603091622102-mamiya.webp

桐ケ谷「!!春日井さん……!!」

 桐ケ谷が声を上げる。周囲を見れば、いつの間に現れたのか。無数の堕喰が春日井たちの周囲を取り囲んでいた。

 エルは笑顔を浮かべたまま、春日井だけを見ている。

エル「私といっしょに、この世界を食べ尽くそう?」

 そう言って、春日井に手を差し出す。
 相変わらず意味はわからないが、この誘いにだけは乗ってはいけない。そう理性が訴えかけていた。
 それに相反して、自分の中にいるなにかが、この子に縋りたい気持ちを叫んでいる。
 会いたかったと子供のように泣き叫びたい衝動に駆られる。

 しかし、それに従ったら、もう取り返しのつかないことになると思ったのだ。

春日井「……行かない」
春日井「よくわからないが、おまえが堕喰側であるのならば、猶更それに従うわけにはいかない」

エル「……そう」

 エルは寂しそうな表情を見せ、手を降ろす。

エル「……次会うときは、ちがうお返事をきかせてくれたらうれしいな……」

 そう言って、エルは後ろへ下がって行き――彼女の背後に現れた黒い渦が、彼女を包んだ。そうして、彼女と渦が元からなかったもののようにこの空間から消え失せる。
 残ったのは春日井たちと、攻撃性を見せる堕喰だけだ。

桃李「とんでもない置き土産を残してくれやがったわね……!」
小清水「はッ」「絶体絶命ってやつですかねえ、これって」

 その時、ひとつの影が上空から現れた。
 その影は、まるで堕喰のような異形をしていた。しかしその影の正体は、見たことのある男だったのだ。

 影狗(かげいぬ)。彼は背の皮膚を突き破った無数の触手を使い、堕喰たちを倒していく。

 どう見ても人の姿を保ってはいない、化け物同士の戦いに、春日井は目を奪われてしまった。
 そして同時に、この姿を、自分はどこかで見たことがあると気づいた。

 堕喰の死骸が転がる地帯、影狗は立ち上がり、春日井のほうを見た。

春日井「……悪い、助かっ――」
影狗「なんでおまえなんだ」

 兎に角礼を言おうとした春日井の言葉を遮り、影狗はずかずかと春日井に近づき胸倉を掴んだ。
 その目は昨日隊員たちを見ていた軽蔑の目とは違う、敵意に満ちていた目だった。

桃李「ちょ、ちょっとあなた……!」

 桃李が止めに入ろうとするが、影狗は構わずに言葉を続ける。

影狗「俺とおまえでなにが違う!?」
影狗「同じだろう、同じなはずだ、なのになんで誰も俺を認めてくれない!?」
影狗「ジンも、エルも、誰も彼も求めるのはみんなおまえだ!!」
影狗「俺だってやれることはした、一人で生きてきた!!なのにッ、なんで、おまえだけ……!!!!」

 一方的にまくしたてたあと、影狗は息を切らせたまま春日井から手を離した。呆然と影狗を見る春日井には目もくれず、ディープ・ブルーとは反対方向へと進んでいく。

桐ケ谷「どこに行くんです」
影狗「……」
影狗「ディープ・ブルーには帰らねえ」
影狗「俺は今日をもってディープ・ブルー隊員を辞職する。そう伝えておけ」

 そう言って、影狗はどこかへと去って行った。行く宛てがあるのだろうか、しかし後を追うこともできず、春日井たちは風の吹く地帯の中、呆然とその場に取り残されてしまった。





 兎に角、任務完了の報告のために帰投をし、ディープ・ブルー内の廊下を歩いていた。

小清水「……なんて説明するんです?アレ」
桃李「……どうもこうもないわよ、辞めますって言ってたんだからそのまま伝えればいいでしょ」
小清水「まあ……そうですよねえ」

桐ケ谷「……彼、の姿……」
桐ケ谷「到底人間のようには思えませんでした」
桐ケ谷「常軌を逸した異形になって……、あれは、なんでしょうか」

小清水「……」「なんでしょうねえ……」

 小清水には覚えがある。
 ジンから聞いた話だが、堕喰の力を覚醒した人間は、あのように異形の形になるのだという。
 あの時見た春日井はああいった姿にはなっていなかったが、攻撃性を持ってしまえば、影狗のようになってしまうことだってある。

小清水「(言えねえ~……んなこと……)」

 頭を抱えたくなるような気持ちになる。

春日井「……?」

 ふと、春日井が足を止める。

桃李「どうしたの?」
春日井「……いや、」「どこからが声……が」

春日井「……歌?」

 そう言った瞬間だった。

春日井「ッ、ぐ……ッ!?」

 突如、頭蓋骨が割れそうなほどの頭痛が春日井を襲う。それは耳鳴りと眩暈を伴い、視界は黒く歪んでいき、仲間の心配する声すら遠くなっていく。
 立っていられない、目を開けているのに、なにも見えない。

 上下左右の感覚、体温すら遠ざかっていく感覚に、春日井は意識を失った。





桃李「とりあえず、私医療班のところに行ってくる!」
小清水「あ、篠田 灰世って人がよく春日井さんを診てくれてますから、その人を探してください!」
桃李「わかった!」

桐ケ谷「……え?」

 不意に桐ケ谷がぽつりと呟く。小清水が見れば、彼はどこかへと目をやっているようだ。
 どうしたのかと聞こうとした瞬間、警報が施設中に響く。

『緊急事態発生 緊急事態発生』
『堕喰による、ディープ・ブルーへの襲撃が行われている』
『全隊員、出撃せよ』
『これは異常事態である』

 そして、なにかがぶつかったような衝撃音と共に、施設全体が揺れる。

 外では無数の堕喰を引き連れ、その中心で嗤う、ピエロのような風貌の少女がいた。



<< 次回 第3話   第1話 前回>>




#ディープ・ブルー

戻る

一次創作

Mother's call
ディープ・ブルー 第1話

―――――

<< 次回 第3話   幻影または幽霊または「  」 前回>>





 20XX年、地球は堕喰(だくろ)と呼ばれる異形の化け物によって存続の危機を迎えていた。
 しかし、少数の生き残った人類は抵抗を諦めなかった。東京を中心とし、対堕喰殲滅組織「ディープ・ブルー」が結成され、各地に派生組織が建てられている。
 ディープ・ブルーに属する部隊のひとつ、「春日井班」。

 メンバーは春日井(かすがい) 京介(きょうすけ)をリーダーとし、副リーダーにディープ・ブルー隊員養成所の講師も務める桃李(とうり) ジク。そしてあらゆる任務を成功させたと言われているベテランの桐ケ谷(きりがや) (きょう)。更に派生組織「レッドライン」からの臨時メンバーとして呼ばれた小清水(こしみず) 正太朗(しょうたろう)

 春日井班は堕喰研究チームである「神無木(かんなぎ)班」に呼ばれ、とある一室まで出向くことになった。





 20XX年 9月18日 13:12 神無木班のオフィス

 春日井班は全員揃って神無木班のオフィスに来ていた。
 ソファに座り、それぞれが待機している。その様子をシステムエンジニアである由自(ゆうじ) カナコは腕を組みながら眺め、そしてひとつため息をついた。

由自「悪いわね……。神無木のやつ、まだ準備に手間取ってるみたい」
春日井「あ、いえ……。大丈夫です」
小清水「あはは、まあ色々あるんでしょうよ。こっちはゆっくり待つとします」

 そうしていると、ようやく扉が開き、そこから神無木(かんなぎ) 雲雀(ひばり)が現れる。

神無木「やあ諸君!!元気だろうか!!オレは元気だ!!」デッケー声
桐ケ谷「……」キーン
桃李「うっ……は、は~い。元気ですよ、神無木さんもお元気そうで……」うるせ~……

神無木「うむ!!なら良し!!」

 そう言って、神無木はタブレットを開きながら説明を開始する。

神無木「閉鎖地帯11区にて堕喰の存在が確認された。諸君には11区に向かい、堕喰を撃破してもらいたい」
神無木「ここまでの指示はいつも通りだが、注意点がある」
神無木「近頃、堕喰の凶暴化が進んでいる。ただでさえ凶暴なヤツだがな、それがより酷くなっているといった様子だ」

春日井「凶暴化……?」

神無木「端的に言えば、今までより出現率が高くなっている」「他の班の出撃数も、先月と比べれば大幅に上がっているんだ」
由自「それがあってか、どんどん危険地帯とみなされて閉鎖されている地区の数も増えているわ」「おかげで衣食住に困っている人への供給も追いつかない」
由自「もちろん、そういう人をうちの管理人は見捨てるわけもない。おかげでディープ・ブルーの食糧も圧迫されているんだけどね」

小清水「……」
小清水「(凶暴化か……)」

 小清水は今問題視されている堕喰の凶暴化が、春日井が暴走し部下を喰い殺した事件となにか似ている部分があるのではないかと勘付く。

 神無木はそこまで説明を済ませると、「では諸君、あとは任せたよ」と言い、出撃許可を下す。
 それを受け取り、春日井班は目的地まで出向くことになる。





 20XX年 9月18日(同日) 14:56 危険閉鎖地帯11区

 目的地に到着すれば、目標の堕喰はすぐに発見された。
 辺りは朽ちて破壊され尽くした住宅街が広がっており、戦闘をするにはこちらが有利になるだろうと予想できる。

 春日井が他のメンバーにアイコンタクトを送る。全員が頷き、武器を構えた――瞬間だった。

???「春日井班なんかに手柄渡してたまるかよ!!」

 聞き馴染みのない声が背後から聞こえた。と思えば、複数人のディープ・ブルー所属の隊員たちが戦場へと足を踏み入れる。

春日井「なっ……!?」
桃李「な、なによあんたたち!?」

隊員A「なあに、俺たちもこの近くの堕喰の討伐任務を与えられたんだよ」「そっちが完了したから、ついでにおまえらの手柄を奪ってやろうってワケ」
隊員B「まあ黙って見てなって!新設された班より、連携の取れる班の方が優秀だってことを見せつけてやる!」

 そう言って意気揚々と立ち向かう隊員たち。桃李は彼らを見て頭を抱えながらため息をつく。
 そして、そんな彼らとは一歩遅れて来た隊員がいた。
 彼は春日井のほうを一瞥し、それから飛び込んだ隊員たちを見る。

影狗(かげいぬ)「……連携の取れた班だと?笑わせる」
春日井「……違うのか?」
影狗「他班が争った後のトドメを攫うのが上手いだけのヤツらだ」
影狗「大方は他班が体力を削ってくれたおかげだ、自分たちは一番美味い場所だけ盗っていく」
影狗「それを実力だと勘違いしていれば―― どうなるかはわかるだろう」

 そう言う男の目は、軽蔑に満ちていた。
 春日井はそんな彼の目を見、それから飛び込んだ隊員たちを見る。見れば連携など取れているようには見えない。凶暴化が進んだ堕喰の手には負えず、彼らはあっという間に喰らい尽くされてしまった。

影狗「おまえらが与えられた仕事だろう」
影狗「俺は知らん。帰る」

 そう言って、彼は春日井に背を向ける。

春日井「……おまえの名はなんという?」
影狗「教える義理があるか?」
春日井「報告書におまえの名を書くためだ、巻き込まれた存在だとな」
影狗「……」

桃李「あら、彼は無罪放免なのね」
小清水「ま、馬が合わないカンジっぽいんでね」
小清水「あんなヤツらと一緒にされちゃかなわんでしょ」
桐ケ谷「……」そうかな……そうかも……

影狗「……」それぞれを一瞥しつつ
影狗「影狗(かげいぬ) 吠曉(はいぎょう)だ」

 影狗と名乗った男性はそう名乗ってから去って行く。

小清水「なんかやる気削がれちゃいましたけど、任務は完了してませんし、やりますか」
桐ケ谷「……そうですね、やりましょう」

 そう言って、春日井班もそれぞれ武器を構え、飛び込んだ。





 かくして目標を倒し、任務を完了した春日井班は帰投することになる。
 彼らの仕事を神無木は称え、春日井は任務を成功したという報告書を出すことになる。
 途中乱入してきた班についての名簿を見る。そこには確かに影狗 吠曉という名前が記載されていた。

春日井「……」

 春日井は影狗の目を思い出す。
 何故か彼は、どこか自分と似ている気がした。



 そうして報告書を出し終え、それぞれが自室に戻る。
 その晩、春日井は夢を見た。



???「――」
???「――、」

 幼い子供のような声。
 それは歌のようにも聞こえた。
 何故だかひどく懐かしい気持ちになり、そこへと手を伸ばすように――。

 そこで、目を覚ました。
 そこは変わらず自室が広がっており、奇妙な夢を見たものだと後ろ頭を掻く。


 朝食を取るためにある程度の準備を整え、自室を出る。

隊員「なあ、知ってるか?」「花道(かどう) (かすみ)ってヤツ、殉職したらしいぜ」
隊員「え、そうなのか?」

 春日井はその会話に、一瞬足を止める。

春日井「(そう、だったのか)」
小清水「春日井さーん」
春日井「……小清水さん、おはようございます」
小清水「どうしたんです?浮かない顔して」
春日井「……いえ」「知らないうちに、仲の良かった同僚が……殉職したそうで」

小清水「……ああ」「まあ、戦場なんでね。そういうこともありますよ。……悲しいことにね」
春日井「……そうですね」

小清水「ま、とりあえず腹が減ってはなんとらです」
小清水「飯食いに行きましょ」
春日井「はい」

小清水「(……花道 霞か)」

 小清水は、少し前の事件を思い出す。
 春日井が堕喰として暴走し、部下を喰い殺した事件。
 あれはディープ・ブルーの管理人 ジン・ブラッドレイにより隠蔽され、殺害された隊員――花道 霞は堕喰との戦闘で殉職したということになっている。

 春日井はなにも知らない。しかし、隠し通さねばならない。

 小清水は春日井と任務をこなすにつれ、彼の持っている強い魂と熱い正義心に、いつしか心を打たれるようになっていたのだ。

小清水「(なにも知らないままでいてくれよ)」

 そうして二人は食堂へと向かった。



<< 次回 第3話   幻影または幽霊または「  」 前回>>



#ディープ・ブルー

戻る

一次創作

幻影または幽霊または「  」
ディープ・ブルー前日譚 第2話

―――――

<< 次回 第1話   知らない自分 前回>>





 チャイムが鳴ると同時に、ディープ・ブルー隊員養成所講師の桃李(とうり) ジクは開いていた本を閉じる。

桃李「はい、じゃあ本日はここまで!ちゃんと予習をしておくのよ」

 桃李がそう言うと、生徒たちから返事が返ってくる。それを聞いた桃李は笑みを零し、教室から出て行った。
 ふと廊下のすれ違い様に、見知った顔が現れた

 彼は桐ケ谷(きりがや) (きょう)。近寄りがたい風貌と強面で、周囲の生徒たちは怖がって近づかず、蜘蛛の子のように散っていく。その様子を桐ケ谷は申し訳なさそうに、気まずそうにしている。

桃李「桐ケ谷さん」

 見兼ねた桃李が声を掛ければ、桐ケ谷は「あ」と声を上げる。

桐ケ谷「桃李先生……すみません、お久しぶりです」

 彼の「すみません」は口癖のようなものだ。体格は大きいというのに、やたら気の弱い男性である。というより、自身が他人にとって威圧感を与えてしまうということにより、必要以上に気を使ってしまっているだけなのだが。

桃李「お久しぶりです」「どうしたんです?養成所に来るなんて珍しいですね」
桐ケ谷「……桃李先生に、お渡ししてくださいと頼まれて……松田(まつだ)先生に」

 その名前を聞いた瞬間、桃李は「ああ……」と納得した。
 松田というのは、桃李と同じく養成所の講師である松田(まつだ) 静一(しずいち)だ。表面上の付き合いであれば普通の人なのだが、デリカシーが欠けていたり、言葉が足りなかったりなどして薄っすら周囲から距離を離されているような男性だった。

20260309162210-mamiya.webp

桃李「すみません、わざわざありがとうございます」
桐ケ谷「いえ……」

 桐ケ谷は資料を桃李に手渡すと、桃李は「そうだ」と話し出す。

桃李「こんな時になんですけど、そういえば今日はイオの命日だったわね」
桃李「めぐり合わせかも」

 桃李がそう言うと、桐ケ谷はバツの悪そうな表情をした。

 桃李(とうり) イオ。桃李の弟だ。
 桃李と同じくディープ・ブルーに配属されていた隊員であり、桃李とは仲が良く、周囲もそれを認知しているほどだった。

 ある日の任務、イオは桐ケ谷と同じチームに配属され、出撃した。
 しかし帰ってきたのは、イオの除く人数だけ。イオは殉職したのだ。桐ケ谷の判断ミスで。

 桐ケ谷の判断ミス。といっても、桃李がそう思っているのではないし、周囲も桐ケ谷を責めるようなことはしていない。討伐目標だった堕喰は、喰った人間の言語能力を学習し、それを発音できる個体だった。
 桐ケ谷は優しい人間だ、戦場など向いていないほど。
 だから迷いが生じてしまった、その武器を振るう腕を止めてしまったのだ。
 堕喰の攻撃は桐ケ谷に振りかざされ――それをイオが庇った。

 ――申し訳ありません、俺のミスです。

 そう言って桃李に頭を下げる桐ケ谷のことを、まだ憶えている。
 桃李も、桐ケ谷を責めてはいない。もちろん文句が完全にないわけではないが、責めたところでどうにかなる問題でもないのだ。半ば諦めに近いものではあったが、兎に角桐ケ谷に対して怒るようなことはなかった。

桃李「(……むしろ心配なくらい)」
桃李「(あの時から私とは目を合わせようともしないじゃない、今だって)」

 桃李が責めなくても、彼のことは彼が一番責めていることくらい、容易に想像がつく。

桃李「私はお墓参りにでも行こうと思うのだけど、あなたは?」
桐ケ谷「……ここに来る前に、行きました」
桃李「そう」「じゃあ私はこれで、また会いましょうね」
桐ケ谷「はい、また」



―――



 自室に着き、荷物を置いてベッドに座る。
 ため息をついて顔を上げれば、嫌でも見慣れてしまった姿が目の前にあった。
 あの頃からなにも変わらない姿で、男性がごろごろとソファに寝転んでいた。

桐ケ谷「あの……」

 桐ケ谷が声を掛ければ、男性――桃李(とうり) イオはそちらを向いた。

桐ケ谷「帰らないんですか、お墓に」
イオ「やだ!あそこ暇だもん」
桐ケ谷「……桃李さん、あなたのお墓参り行くらしいですが」
イオ「さっき会ったからいい~~~~」

 無邪気に笑うイオを見て、またため息をつく。

 いつからだろうか、ある時からイオは桐ケ谷のそばに現れるようになった。
 どうやらイオの姿が見えているのは桐ケ谷だけらしい。罪悪感がいきすぎて幻覚が見えるようになったのかと思ったが、医者に相談するのも憚れる。
 はたまた幽霊なのか。しかし、イオは桐ケ谷の周りを楽しそうにうろついていたり、桐ケ谷と遊ぶことを望んだりするだけで、なにか責めるようなことを言うわけでもない。悪霊でもなさそうだ。

 あの日、自分の迷いのせいで死んだはずの人間が、ずっとそばにいること自体が罰なのだろうか。

イオ「夾ー」

 気づけば、イオは桐ケ谷の目の前まで歩いて来ていた。
 顔を覗き込むイオに、思わず目を背ける。

イオ「……」む……
桐ケ谷「……」
イオ「……」背けられた方向まで来る
桐ケ谷「なんですか……」
イオ「なんでこっち見ないの?」
桐ケ谷「……単純に、人と目を合わせるのが、……苦手なだけで」
イオ「じゃあおれで練習しよっ!こっち見てー」
桐ケ谷「……」寝転ぶ
イオ「あ!寝るつもりだ!」
桐ケ谷「仮眠するだけですから……」
イオ「おれも寝るー」ごろん

 イオは楽しげに桐ケ谷に抱き着く。
 どこか暖かい体温が伝わってくるような気がした。気のせいには違いないが。

202603091622101-mamiya.webp

イオ「おやすみ、夾」

 小さな手が桐ケ谷の頭を撫でた。
 その手の暖かさが、幽霊なのか、幻影なのか。判別すらつかなくなっている。
 ほどなくして睡魔に身を任せて、暗闇の中へと意識を潜らせていった。



<< 次回 第1話   知らない自分 前回>>

#ディープ・ブルー

戻る

一次創作

知らない自分
ディープ・ブルー前日譚 第1話

―――――


<<次回 幻影または幽霊または「  」



 堕喰(だくろ)と呼ばれる化け物が地上を闊歩し、人類を襲う――そんな話が当たり前になってしまってもう長い年月が経つ。
 ここは対堕喰殲滅組織「ディープ・ブルー」。小数の生き残った人類が、人類の未来を切り開くために作られた組織だ。小清水はそんな組織内の廊下を歩きながら手元に渡された資料に目を通していた。 

 小清水(こしみず) 正太朗(しょうたろう)
 彼はディープ・ブルー所属の隊員ではないが、ディープ・ブルーの応援要請を受け、臨時メンバーとして春日井(かすがい)班に所属された対堕喰殲滅組織「レッドライン」の隊員である。

小清水「(あとで寮を見に行くか、綺麗な部屋だったら嬉しいんだがな)」

 などと考えながら、とある一室のドアが近づいてきた時だった。
 妙な音。水音だろうか。どこか粘着性を持った水音と、少し隙間の空いたドア。
 そして――なにか、鉄分を持った異臭。

小清水「……勘弁してくれよ」

 そう呟きながら、ひくりと引き攣った表情を浮かべる。
 ゆっくりとドアノブに手をかけ、それを開いて――目撃した。

20260309161952-mamiya.webp

 そこはあまりにも凄惨な現場だった。赤い血の海が部屋中を満たし、部屋の真ん中にあるぐちゃぐちゃの――そこからは考えることを拒否していた。
 兎に角、そこにあったのは赤い塊だった。
 なによりも考えることを脳が拒絶しているのは、その死体だけじゃない。その死体を、野良犬のように喰らっている化け物が存在していた。

小清水「……あんた、」

202603091619521-mamiya.webp

 その化け物の姿が、自身が配属された春日井班の班長 春日井(かすがい) 京介(きょうすけ)であることを思い出す。
 しかし春日井の表情、目からは人としての理性を感じられない。
 春日井はゆっくりと顔を上げ、小清水のほうを見る。歪に笑みを浮かべ、明らかに捕食対象として人を認知している様。小清水は咄嗟に動けずにいた。

???「春日井さん」

 背後から声がした。
 振り返れば、そこには小清水よりも随分と小さい人間がいた。赤い髪と、幼い容姿にも関わらず存在感のある人だった。彼女は小清水に「少し失礼」と一言告げてから、部屋の中へと入っていく。

???「食欲を抑えきれなかったようで、こちらの落ち度です。申し訳ありません」
???「あとはこちらで片付けておきますので。――少しの間、おやすみください」

 彼女が手のひらを春日井の眼前に翳すと、春日井は気を失ったようにその場に倒れ込む。小清水が啞然とした様子でその光景を眺めていると、彼女はその視線に気づいたようで、振り返ってから ふ、と笑う。

???「申し遅れました」
ジン「私はディープ・ブルーの管理人、ジン・ブラッドレイと申します」
小清水「へっ、あ、ああ。あなたが管理人ですか」
小清水「……いや、今はそんなことより、どういうことか説明していただけます?」

ジン「ふむ」
ジン「確かにそうですね」
ジン「春日井さんのことは、こちらでなんとかしますので……。後ほど、管理室に来ていただけますか?」
小清水「……」疑いの目
小清水「はあ……。まあ、わかりました」
ジン「ええ。ではまた」にこ~り

 そう言ってジンは去って行く。
 入れ替わるようにして、数人の男性が部屋の中に入って来て、部屋の掃除や春日井の介抱を始める。
 ずっとここに立っていては邪魔になるだろう。小清水は部屋を出て、一先ずは管理室を目指すことになる。



―――



◇管理室

ジン「ようこそ、小清水さん。ゆっくりしていってください」

 管理室にやってきた小清水は、なにやら上質なソファに座っていた。
 秘書らしき女性がお茶を小清水の前に置き、去って行く。「どうも……」と頭を下げた小清水は、なんとなくまだお茶を手に取ることはせず、早速というようにジンに説明を求める。

小清水「それで……なんですか、アレは?」
ジン「勿体ぶらずにそのままお話しましょう」
ジン「春日井京介さんは、堕喰(だくろ)の落とし子です」
小清水「落とし子……?」

ジン「つまり、堕喰(だくろ)の息子ということですよ」
ジン「しかし、この事実は春日井さんも知りません。彼は自身が堕喰(だくろ)の落とし子だということを知らず、常に人を喰らいたいという欲求と戦い続けている」
ジン「空腹が限界を迎えた時に人間としての理性を失い、ああいう風に人を襲ってしまうようです」

小清水「そんな……」
小清水「……なんで春日井さんをディープ・ブルーに引き入れているんです、危険でしょう」

ジン「……端的に言えば、彼が人間離れした異常な戦闘技術を持っているから。と言うのが理由です」
ジン「彼は貴重な戦力です。なので、周囲と彼自身をも騙しながら、ディープ・ブルーで働いていただいているということです」
小清水「……貴重な戦力を喪いたくないって気持ちもわかりますがね、そのために隊員を餌にしてるってことですか」

ジン「先程のものは、こちらの失態です。あんなことは滅多にありません」
ジン「普段は食事の中に抑制剤を混ぜ、彼の食欲を抑えています」
ジン「それに、春日井さん自身は人類のために戦いたいという意志を強く持っていますから」
ジン「彼の想いを無駄にしたくはありません」

小清水「……」微妙な顔

 ある程度の説明を済ませたジンは、仕事の連絡が入ったようで「説明は以上です、気になることがあればまたご連絡を」と言って席を立つ。

ジン「ああ、最後に」
ジン「これらのことは、他言無用です。……よろしいですね?」
小清水「……はいはい……」


―――


 まさか配属されて早々、こんな厄介事に巻き込まれるとは想定していなかった。小清水は後ろ頭を掻きながら廊下を歩く。

 ふと、目の前に先程見た春日井が立っているのが見えた。なにやら資料を手に眺めているようだ。
 先程のことは憶えていないのだろうが、どうしたのだろう。

小清水「春日井さん」
春日井「あなたは……、あ。えっと……小清水さん、でしたね。本日配属されたという」
小清水「呼び捨てでいいのに。あなたが班長でしょう?」
春日井「い、いえ。さすがに年上の方にそれは……」
小清水「あはは、まあやりやすいようにやってもらっていいんですけど」

小清水「……それは?」春日井の手に持ってる資料を見る
春日井「ああ」
春日井「実は、ここ数時間の記憶が無くて……。検査をしてもらったんですけど、特に異常はないそうなんです」
春日井「……なにもないならいいんですけど……。戦闘中に同じようなことがあったら、仲間に迷惑がかかりますから」
小清水「……」「そうですねえ……」
小清水「ま、なんかあったら俺がサポートしますよ。なんてったって、そのための臨時メンバーですし」
春日井「……」苦笑「助かります」

 こうして話すと、先程あんな行為を行うとは到底思えないほど穏やかな人だった。
 ジンの話によれば、自身が人を喰らっていることも、自身が堕喰の落とし子であることも知らないのだ。
 ……不運で、哀れな人なのかもしれない。

 始まりは、同情だったのかもしれない。
 真っ直ぐな目をした春日井に対して、彼すら知らない、春日井の真実を知ってしまった後ろめたさ。
 なにも知らないままで、人類のためになるのであれば、知らないほうがいい。
 そうして、小清水は春日井から真実を隠すことを誓ったのだ。



<<次回 幻影または幽霊または「  」

#ディープ・ブルー

戻る

一次創作

黒猫と虫
黒猫とヴラン、気ままな二人のおはなし。



 本の虫という言葉は読書好きな人間のことを指す。しかし語源はその名の通り古い本に寄生する“虫”のことだ。本から離れない寄生虫を例えるほど熱心に本を読み耽る様を見て言われたらしいが、周囲から見ればまさにヴランは『本の虫』だった。
 虫といえばバロックには人間以外生き物が少ない。隔離された都市なのもあってか、見かけるのは都市の外からやってくる鳥くらいだ。しかし、まったく存在していないわけではない。

「にゃあ」

 聞き慣れない声が図書館に響き渡る。その声にヴランは目線を上げる。しばらく本から目を外して、気のせいかと思いもう一度本を見る。

「にゃあ」

 再度同じ声が聞こえて、さすがに気のせいだと言い聞かせるのは無理かと本から顔を上げる。机の上に黒い毛並みの猫がいた。金色の目が輝く、バロックでは非常に珍しい生き物だ。美しい毛並みを見るに、誰かに飼われているのだろうか。

「使用者以外立ち入り禁止だぞ」
「にゃあ」
「館長にでも構ってもらえ、俺は忙しい」
「にゃあ」

 一向に退く気配のない猫に、ヴランは息を吐く。

「甘えることしか知らないのか、贅沢なヤツだな」

 そう言いながらそっと人差し指で猫の顎を撫でる。猫は気持ちよさそうに目を細めて喉を鳴らした。

「怒られる前に出て行けよ」

 ヴランはそう言って再び本を見る。猫は「にゃあ」と言うと、机を降りてどこかへと行ってしまった。
 それと行き違うように、足音がこちらへとやってくる。黒い猫とは対照的に、白い髪をした男がヴランを見る。

「さっき誰かと話してたか?」

 リビデルは首を傾げる。

「不法侵入者」
「なに?」
「館長に警備員でも雇えと言っておけ」



#バロック

戻る

一次創作

バロック 第四章(完)
生 を 受 け る こ と は 罪 で あ り 、 生 を 望 む こ と は 罪 で あ る

現代より遥か未来。レッドマザーと呼ばれる存在が監視する巨大収容都市「バロック」。
人々は70万年という途方もない長さの懲役を科せられていた。
ある時バロックの中央区に殺人事件が起きた。
知的好奇心に駆られる囚人ヴランと、秩序を司る監視役(パノプティコン)リビデルは、殺人事件の真実を追うために奔走する。

引用・参考・影響を受けたもの等
1984年/ジョージ・オーウェル
マーク・トウェイン
ある母親の物語/ハンス・クリスチャン・アンデルセン
鏡の国のアリス/ルイス・キャロル
悪魔の踊り方/キタニタツヤ


ショッキングな描写有



第三章 前回>>


     2P目へ


「これからどうする」

 真っ暗な地下鉄から抜け、空は昇りかけの朝日が薄く暗い夜空を照らしている。リビデルが問えば、ヴランは「そうだな」と言い足元の石ころを蹴った。

「俺が知りたかった殺人事件の真実はこれで明らかになった。犯人はレッドマザー、及びレッドマザーの手下だ。本来犯人を捕まえるのは警備隊(レッドアイ)の仕事だが、この様子じゃバッソ隊長も飼われていると考えたほうがいい」
「……なら、これで捜査は終了か?」
「ああ、俺の用事はこれで終わりだ。おまえは?」

 突然話を振られ、リビデルは目を丸くする。まさか驚かれると思っていなかったヴランは首を傾げてもう一度言う。

「さっき聞いたろ、どうしたいかは自分自身で選べって」
「ああ」
「もちろん、このままいつも通り囚人と監視役(パノプティコン)として励むのもいいだろうな。俺は青い鳥のようにここに嫌気が刺しているだとか、革命を起こしたいだなんてあんまり思ってないんだ」

 思ってないのに反逆行為まで起こしたのかこの男は。リビデルは口には出さずに心で呟く。ヴランがここまで行動を起こしたのは単純で、『殺人事件の真実を知りたかったから』、それまでなのだろう。だから犯人を暴いた。暴いたあとのことは他人の仕事で、同じように革命は青い鳥の仕事なのだ。
 リビデルにとっては、存在意義が揺らぐほどのことだったのに、この男はどこまでも自由奔放で我儘だ。振り回される身にもなってほしい。

「……そうだな、俺は」

 ここにおまえと共に居よう、と言い終わる前に、リビデルにとって聞き慣れたレーザー音が聞こえた。
 宙に舞う鮮血が桜の花びらが散るように美しく、それに呑まれるように見入ってしまう。だがそれがヴランの血であると、思考回路が警報を出す。その時瞬時に身体が動かなかったのは何故だろうか、肩をレーザー銃で貫かれたヴランの身体が傾き、今にも倒れようとしているのに抱き留めなかったのは。

「確保!!」

 怒号が聞こえたと思えば、各所から足音が響きこちらへと向かってくる。警備隊(レッドアイ)だ。彼らはヴランを取り押さえると、罪状を述べ腕を拘束する。
 どこでバレた。
 ユウドキという青い鳥の一員がバラしたのか、いや、違う、ハッキングか。倒壊したアジトだ、既にレッドマザーの監視下に置かれていてもおかしくはなかった。何故もっと早くに気付かなかったのか。
 そして今、リビデルが自身の身体を動かせない理由をようやく察知する。そうだ、ハッキングだ、どこからか操作されている。

「幸せを運ぶ鳥よりも、ネズミと名乗ったほうがよほど合っていると思うがな」

 一人の男がヴランの前に出る。それはヴランにとっても、リビデルにとってもよく知っている顔だ。その姿はどう見てもリビデルと同じ姿なのだから。

「探偵ごっこは楽しかったか?真実まで到達できたおまえにはレッドマザーから特別に、愛情を持って“話し合う”ようにと言われている」
「は、偉大なる兄弟ならぬ母か」
「そうだ、レッドマザーは常に我々を見ている。……旧型はそれを忘れてしまったみたいだが」

 連れて行け。と指示をされた警備隊(レッドアイ)たちがヴランを連行する。リビデルは腕を伸ばそうとする。少しでもいい、待てと叫ぶことができればよかった。しかしなにひとつとして行動を起こすことは許されなかった。リビデルと同じ姿をした男はリビデルに近づき、肩にぽんと手を乗せて耳元で囁く。

「今までお疲れ様」

 ブチン、と目の前の映像が真っ暗になる。沈みかけていく意識に、己と全く同じ声をした「廃棄しろ」といった言葉が聞こえた。
 ああ、なるほど。捨てられるのか。
 ヴラン、おまえにとってはただの人工知能でも、やはり自分にとっては、それでも。母親だったのだ。




「ちょっと!はやくしてくださいよ!こうしてる間にも我々と志を共にする友が苦しんでいるのかもしれないのです!志を共にする友。“とも”だけに。ふふ……」
「いや本当につまんないですそれ……。ああああもうユウドキさんがヘンなこと言うから手元狂いそうじゃないですか。壊れたらあんたのせいですからね…………」

 頭上から声が聞こえる。微かに薄い瞼から光が差し込むのを感じ、五感が戻ってくる。片方が聞いたことのある声だ。確か青い鳥のユウドキ。
 随分の寝床の状態が悪い場所にいる。自分は何故こんなところに居て、なぜ青い鳥がそばにいるのか。
 その瞬間、今までの光景が一気にフラッシュバックとして蘇る。

「ヴラン!!」
「ウワッッッ!!!!!」
「あ、起きましたねえ~。おはようございます、リビデルくん」

 勢いのまま起き上がると、隣にいた黒髪の青年が驚き倒れる。辺りに置かれている器具を見るに、どうやらリビデルを修理していてくれたらしい。
 自分の状態を見れば、随分と酷い有り様だ。部位が見えかけていたり、皮膚の塗装が擦り切れて銀色が見えている。視界と聴覚もクリアとは言えず、ノイズが走っている。しかし支障を来すほどではない。

「ユウドキ……だったか」
「ええ。憶えていてくれて光栄です。記憶媒体を消されずにいたようですねえ」
「た、多分もうじき全てがリセットされますから、消さなくてもいいやくらいに思われたんでしょうね……」
「……リセット?なんのことだ」

 リビデルが聞くと、ユウドキは今までとは打って変わり真剣な表情を見せる。

「日付が変わる今夜の0時、レッドマザーはバロックにいる囚人全員を再教育すると発表しました。脳のチップを使い、直接囚人の脳をコントロールする。囚人の起こす行動、思考、感情は全てレッドマザーが指定されたものしか出力しなくなる。全てがあらかじめ設定されたプログラムのみでしか行動しない、機械都市――。それが完璧な秩序を作りたい彼女の出した答えです」
「改めて聞くとグロテスクすぎますよ……。とんでもSF映画かっての……」
「トーイくんは黙っててください」

 トーイと呼ばれた青年は「はいはい」と返事をすると、器具を片付ける。内部でバグが起きているせいか顔色は変わらなかったが、リビデルの表情がその悲惨な未来を受け入れ難く思っている様子を語っていた。
 確かにレッドマザーが掲げている信条を、リビデルは今まで信じて、共感して彼女に付き従っていた。けれどそれは、人間たちと向き合っていればいずれは叶う願いだと信じていたのだ。あなたはそうではなかったのか。人間たちと対話など望んではいなかったのか。

「囚人たちはてんやわんやですよ。中央塔ではデモが起こっていますが、レッドマザーにはチクりともきていないでしょう」
「……おまえたちは、どうするんだ」
「我々は中央区に潜り込みます。正面から突破すれば、そのままデモを起こしている囚人たちも雪崩れ込んでくるでしょうし」
「そんなことができるのか?」
「もちろん私とトーイくんだけでは望み薄です。仲間が欲しいからあなたを助けたんですよ」

 太陽が真上に上がっている。隙間から差し込む光が周囲を照らした。

「……そうだな、俺もヴランを助けたい」
「我々は仲間が欲しい、あなたも仲間が欲しい。利害の一致ということで……。行きますよ、お二人とも」
「ああ。だがどうやって正面を突破する?中央塔の玄関はそうやすやすと突破されるものじゃないぞ」
「ふふ。お任せください。こういうのは一番手っ取り早い方法があります」

 ユウドキはニヤりと笑みを浮かべる。よくわかっていないリビデルをよそに、トーイは呆れ顔を浮かべていた。




     2P目へ


第三章 前回>>

#バロック

戻る

一次創作

バロック 第三章
生 を 受 け る こ と は 罪 で あ り 、 生 を 望 む こ と は 罪 で あ る

現代より遥か未来。レッドマザーと呼ばれる存在が監視する巨大収容都市「バロック」。
人々は70万年という途方もない長さの懲役を科せられていた。
ある時バロックの中央区に殺人事件が起きた。
知的好奇心に駆られる囚人ヴランと、秩序を司る監視役(パノプティコン)リビデルは、殺人事件の真実を追うために奔走する。

引用・参考・影響を受けたもの等
1984年/ジョージ・オーウェル
マーク・トウェイン
ある母親の物語/ハンス・クリスチャン・アンデルセン
鏡の国のアリス/ルイス・キャロル
悪魔の踊り方/キタニタツヤ




<<次回 第四章   第二章 前回>>




 扉を開けたそこは今となっては古い機械類に囲まれた部屋だった。ブルーライトが周囲を微かに照らし、モーター音が静かに唸っている。
 この部屋はまだ生きている、微かな光がそれを証明していた。

「50年前の機械だ、扱えるかはわからんが……」

 ヴランはキーボードに指を置き、それをタイピングする。モニターには「welcome」と表示され、その直後読み取れないほどの英数字が並べられていく。起動したのは違いないが、一体なにが起ころうとしているのか。モニターを眺めていると、次いで「Correspondence.」と表示された。

「通信?」

 リビデルがそう零すと、モニターはどこかの部屋を表示させた。誰もいないその部屋を映し出し、一体なにを見せようとしているのかと疑問を口にしようとした時だった。
 一人の髪の長い男が画面外から顔を覗かせる。

「ああ!」

 その男は声色を弾ませると、真正面に座り、こちらを見る。

「どうやら旧アジトから通信が来たみたいですねえ。ハローハロー!こちらの声が聞こえてますでしょうか?」
「これは……どういうことだ?」
「……録画ではないのか」
「嫌ですねえ!リアルタイムですよぅ!あなたたち二人の声、ちゃーんと聞こえてますよ?」

 男はニコニコと調子の良さそうな笑顔で手を振っている。

「私はユウドキ。50年前壊滅した青い鳥の生き残り――。ではありませんが、お父様が青い鳥所属でしてねえ。その意志を継いで、今この私が青い鳥のリーダーというわけです」
「驚いた。こんなアングラな回線がまだ生きているとはな。やあユウドキ、俺はヴラン。こっちは監視役(パノプティコン)のリビデルだ」
「自己紹介助かります。それで、ここまで辿り着いたのがレッドマザーの手先ではなく囚人と監視役(パノプティコン)ということは、少なくとも我々と似た考えを持っていると思ってよろしいですか?」

 ヴランはチラ、とリビデルに視線を寄越すが、すぐにモニターに戻し「それでいい」と言う。

「色々聞きたいことはあるでしょうが、まずはこちらのお話から聞いてください」

 ユウドキは目を細める。

「直近で起きた中央区の殺人事件、あれはレッドマザーの手先によるものだと考えてまず間違いありません」
「……証拠は」リビデルが問う。
「レッドマザーの関係者が使う警棒はレーザーでできている。警備隊(レッドアイ)の捜査により、凶器は警棒であることが決定付けられました。」
「決定付けられたなんて報告は聞いてない」
「当たり前です、レッドマザーがそんなことを公表するわけがない」

 警備隊(レッドアイ)が情報を握りつぶしたこと、そしてそれをレッドマザーが公表させまいとしたこと。リビデルは口を覆う。誰よりも秩序を守る彼女(レッドマザー)が、秩序を乱すことなどありえないのだ。
 しかしそう思えば思うほど、それが洗脳であるかもしれないという居心地の悪さが心を覆い、吐き気がする。

「レッドマザーの手先だとして、彼らの狙いはなんだ」

 ユウドキは「ふむ」と考える素振りを見せる。そしてカメラ越しにヴランとリビデルの様子を見ると、その目は蛇のように細められた。

「……懲役を返済するためのポイントが、どこで記録されているのかご存知ですか?」

 リビデルが顔を上げる。その顔色が酷く悪いことに気づいたヴランが眉を顰める。

「……知らないな、知っているのか」

 ヴランはリビデルに問う。リビデルは目を泳がせ、首回りの布地を指で正す。

「……囚人は脳にチップを埋められている。そのチップが作用して監視役(パノプティコン)は囚人の居場所を特定できる」
「ええ、私の脳にももちろんあります。これがある限りバロックから逃走することも叶わないでしょう」

 ヴランはしばらく沈黙していたが、ユウドキに目を向けて変わらず質問を続けた。

「そのポイントはなにに使われるんだ」
「……『Big Brother is watching you』」

 リビデルが呟いたのが聞こえ、ヴランはリビデルを見やる。リビデルは相変わらず顔色が悪い。ヴランはその言葉に聞き覚えがあった。

「ジョージ・オーウェルの1984年か」
「“仕事をこなすことでポイントが溜まる”んじゃない、アレはただのカモフラージュだ。……ポイントが記録しているのは、囚人の思考や生い立ち、そして感情。それを収集して、レッドマザーは人間を学んでいる。監視役(パノプティコン)警備隊(レッドアイ)の感情が人間に見劣らないほど豊かなのは、囚人の感情をそのまま俺たちに注ぎ込んでいるからだ」

 リビデルはそこまで言うと、ヴランの目を見ずに視線を床に落とす。

「巨大収容都市『バロック』は、巨大は実験施設なのですよ」

 ユウドキが言う。

「いずれ自身の生み出した人造人間のみがこの都市に住むことになる。完全なる秩序の創造、完全なる社会をつくるために、我々囚人は搾取されているのです」

 その言葉に、周囲には重い沈黙が訪れる。
 沈黙を破ったのはヴランの呆れたような笑いだった。

「はっ……、上質なディストピア小説だ。レッドマザーは完璧主義者の中でも随分極端な部類に入る」
「でしょうとも。……さて、これ以上はそちらの電力が持たないでしょう。志を共にしているのであれば、またお話しできる機会があるはずです。では」

 ユウドキがそう言い終わると、モニターが暗くなる。電力が尽きたようで、あとは仄かな懐中電灯の光しか周囲を照らさない。

「潮時か。戻るぞリビデル」

 そう言ってもと来た道を戻ろうとするヴランだったが、リビデルはその背中を呼び止める。

「……俺は、……なにを信じたらいい」

 リビデルの顔は、迷子の子供のように怯えていた。縋っていたものがなくなってしまったような不安感に襲われ、両手をどうすることもできずに浮かせている。

「俺は、俺は今まで、秩序のために囚人を監視していた、のに。これじゃあおまえたちが、おまえたちのほうが搾取されている被害者じゃないか」

 リビデルは声を荒げる。
 そんなリビデルを、ヴランはなにを言うでもなく見ていた。それが気に食わなかったのだろう、リビデルはヴランの胸倉を掴み、そして――。

「レッドマザーは神様じゃない」

 ヴランが言う。

「俺にとってはただの人工知能だ。おまえにとって母親でもな」

 胸倉を掴んでいる手を、ヴランは優しく握る。

「そして、俺にとっておまえは――……そうだな、友達だと思っているよ」
「……と」

 動揺したように零された一文字に、ヴランは苦笑する。

「俺は子供の頃からこうだったからな、友達なんていなかった。もしいたらおまえのような感じだったのかもなと思ってる」

 もしリビデルに涙が出るように作られていたのであれば、大きく開かれた両目からその雫が零れていたことだろう。

「おまえが選べよ。隣にいたいと思えるやつを選べばいい。その選択は間違ってない。……自分の頭で考えるようにはできているんだろう」
「……ヴラン」
「なんだ」
「……明日槍とか降るのか」
「殴られたくなければこの手を今すぐ離せ」



<<次回 第四章   第二章 前回>>

#バロック

戻る

一次創作

バロック 第二章
生 を 受 け る こ と は 罪 で あ り 、 生 を 望 む こ と は 罪 で あ る

現代より遥か未来。レッドマザーと呼ばれる存在が監視する巨大収容都市「バロック」。
人々は70万年という途方もない長さの懲役を科せられていた。
ある時バロックの中央区に殺人事件が起きた。
知的好奇心に駆られる囚人ヴランと、秩序を司る監視役(パノプティコン)リビデルは、殺人事件の真実を追うために奔走する。

引用・参考・影響を受けたもの等
1984年/ジョージ・オーウェル
マーク・トウェイン
ある母親の物語/ハンス・クリスチャン・アンデルセン
鏡の国のアリス/ルイス・キャロル
悪魔の踊り方/キタニタツヤ




<<次回 第三章   第一章 前回>>



「しかし……地下に中央塔まで通じる道があるだなんて聞いたことがないな」
「俺もない」
「……じゃあ、今はなにを探しているんだ?」
「手がかりだ」
「なんの」
「レッドマザーに関するもの」
「どこにあるんだ?目星はついてるのか?」
「いいや?」
「……一瞬でもおまえを信じた俺が馬鹿だったかもしれん」

 リビデルは頭を抱える。

「そう落胆するなよ、捜査は地道なものだ。しかし、全く考えもなしに来たわけじゃない」

 ヴランが明かりを壁に向ける。なんの変哲もない壁に見えるが、ヴランはなにやら壁を触り始めた。

「確かこの辺りだったと思うが」
「なにを探しているんだ?」

 ヴランは懐から一枚の紙を取り出し、それをリビデルに差し出す。広げて見れば地図のようだ、左上にはこの地下鉄の名前が記載されいる。

「その地図によれば……ああ、ここだけ色が違う」

 そして一か所をぐっと押し込むと、鈍い音を立てて壁が横にスライドされていく。隠し扉だ。古びた金属音が静寂の中に響き渡り、奥からカビ臭い匂いを運んでくる。

「隠し扉……なぜこんなものが」
「バロックの歴史書に興味深い記述があった。かつてレッドマザーの思想を真っ向から否定した集団がいたそうなんだ。彼らは『青い鳥』と呼称し、この閉鎖された都市をぶっ壊そうと革命を起こしたらしい」
「青い鳥……幸せを運ぶと言われている鳥のことか」
「しかし、これは50年前の話だ。50年経った今でもレッドマザーの掲げる指標は変わっていない、つまり青い鳥は負けたんだ」

 リビデルがレッドマザーによって生み出されたのは20数年ほど前の話だ。その時代にはヴランもリビデルもこの世に生を受けていなかった。
 リビデルにとって、一度でもレッドマザーに逆らえた存在がいることが驚きだった。それほどバロックの住民にとって、レッドマザーは強固で、絶対的な存在だったからだ。
 ――いや、そう思っているのは、レッドマザーに生み出された警備隊(レッドアイ)監視役(パノプティコン)だけなのではないか?囚人にとって自身を閉じ込めリードを握る存在はただ邪魔でしかない。甘んじてリードを握られているのは、囚人以外の我々だけなのではないか。
 石鹸と教育。ヴランの言葉がリビデルの脳裏に過る。今のリビデルに、その言葉をすぐに否定できるほどの絶対的な自信はなかった。
 ヴランは扉の中を覗く。そこは地下へ通じる階段があった。明かりを照らせば足元だけが見える程度の暗闇。ヴランは歩みを進め、一歩一歩と階段を降りていく。リビデルもヴランに続き、歩みを進めた。

「しかし……、バロックの歴史書?それは図書館にあったのか?」
「あの図書館、館長が随分ズボラなひとだからな。それに加えて本に時間を費やすお利巧な囚人なんてそういるわけもない。多少長い時間をかけて読み漁ればそういった歴史はすぐに読めた」

 二人の足音がやけに耳につく。

「青い鳥が何故負けたのか、気にならないか」
「え?……それは、囚人よりも監視役(パノプティコン)警備隊(レッドアイ)のほうが圧倒的に強い能力を持っているだろう、制圧されたんじゃないのか」
「青い鳥には囚人の意向に同意した監視役(パノプティコン)警備隊(レッドアイ)もいた。武力が足りないわけじゃなかった」

 リビデルにとって咄嗟に理解できないものだったが、常に囚人と共に行動している監視役(パノプティコン)であれば、絆や情が芽生えることも珍しくない。長い間共に過ごして、囚人の熱い想いに感化された監視役(パノプティコン)がいたということなのだろう。それも、そう少なくない人数が。
 自分はどうなのだろう、リビデルはふと思考を巡らせる。
 ヴランはレッドマザーを疑っている、のだと思う。青い鳥というバロックに革命を起こそうした集団、そして囚人たちからポイントを集めているその行動への疑問。様々な要因が重なり、レッドマザーがなにかしらを企んでいると思っているのだ。リビデルはそんなヴランについていき、真実を暴こうとしているその姿を待ちわびている。
 自分が信じていたレッドマザーは、そしてバロックは、本当に正しいのか。ヴランを信じて良いのか、彼の背中を追っていてもなお答えを出せずにいる。

「……じゃあ、何故負けたんだ」

 そう問う。しかし意外にもヴランは首を横に振ってこう言った。

「俺にもわからない」
「なんだと?」
「その先のページはなかった。破られていたんだ」
「……誰が破ったんだ?」
「子供がいれば悪戯と言えただろうが、残念ながら中央区に未成年はいない。つまり誰かが意図的に破いたんだ、都合が悪いからか……あるいは怒りからか」
「怒り?」
「『もっと速く走り続けてやる』という青い字で書かれた落書きが裏表紙に乱雑に書かれてあったよ。筆跡に怒りが込められているように見えた」
「なるほど……。その速く走り続けるとは、どういうことだ?」

 ヴランは「推測だが」と前置きを置く。

「ルイス・キャロルの童話に鏡の国のアリスという話がある。登場人物である赤の女王のセリフのひとつ、『その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない』を暗示しているんだろう。青い鳥は現状維持だと困るんだ、だから前に進むためには、今以上に走らなければならない」
「……赤の女王をレッドマザーに見立てているわけだ。面白いな」
「恐怖政治を強いているのは確かにそれらしい」

 そして階段を降りきり、目の前には鉄でできた扉があった。

「俺がここに来た理由は、その筆跡がつい最近書かれたもののように見えたからだ。つまり……」
「……青い鳥は、完全に滅びていない」

 ヴランは頷き、「開けるぞ」と言う。扉に手が掛けられると、暗闇の中で鉄が小さく軋む音がした。



<<次回 第三章   第一章 前回>>

#バロック

戻る

一次創作

バロック 第一章
生 を 受 け る こ と は 罪 で あ り 、 生 を 望 む こ と は 罪 で あ る

現代より遥か未来。レッドマザーと呼ばれる存在が監視する巨大収容都市「バロック」。
人々は70万年という途方もない長さの懲役を科せられていた。
ある時バロックの中央区に殺人事件が起きた。
知的好奇心に駆られる囚人ヴランと、秩序を司る監視役(パノプティコン)リビデルは、殺人事件の真実を追うために奔走する。

引用・参考・影響を受けたもの等
1984年/ジョージ・オーウェル
マーク・トウェイン
ある母親の物語/ハンス・クリスチャン・アンデルセン
鏡の国のアリス/ルイス・キャロル
悪魔の踊り方/キタニタツヤ





<<次回 第二章




 二人の男が路地を歩いている。一人はこの巨大収容都市「バロック」に収容された囚人。そしてもう一人はその囚人に付く監視役(パノプティコン)だ。
 囚人は横暴に監視役(パノプティコン)に暴言を浴びせる。監視役(パノプティコン)は反論も抵抗も示さず、囚人を見ていた。それが気に食わない囚人はついに監視役(パノプティコン)の胸倉を掴み、そして――。
 ……監視役(パノプティコン)は微かに目を見開く。目の前にあった顔が消えた。周囲に飛び散る赤が、まるで桜が舞い散るような美しさを感じさせた。
 次いで、監視役(パノプティコン)は後頭部に衝撃を感じる。視界にノイズが走るほどの強さ。「レッドマザーへ伝えなければ」監視役(パノプティコン)がそれを行動に起こすより先に、頭部が破壊された。






 バロック
 16世紀から18世紀にかけ、ヨーロッパで流行した芸術様式のこと。誕生はイタリアのローマ、フィレンツェである。
 過度とも言える誇張された表現、強烈な光と対比の劇的な表現、ダイナミックな演出が特徴。






 バロック中央区。それはAAA(トリプルエー)ランクを付けられた重罪人が収容される区域である。犯罪者が収容される都市に治安の良さなどあったものではないが、それは中央に狭まるにつれより悪化していく。中央区ともなると常人では一秒たりとも暮らすことはできないだろう。
 しかし、そんな区域でもある程度の施設は整えられている。監視役(パノプティコン)であるリビデルはそんな施設の一つである図書館に出向いていた。館長である老人がリビデルに気付いて立ち上がる。

「あんたがあの囚人の監視役(かんしやく)か?」
「ああ。世話になっているな」
「早く連れ出してくれよ、あれじゃ他の利用者もやってこない」

 リビデルが肩を竦めた様子を見せると、館長は「こっちだ」と言い中へと案内する。レッドマザーの計らいで中はそれなりに豪奢だ。バロックの芸術様式になぞらえ、ステンドグラスからは眩しいほどの光が差し込んでいる。途方もないほどの敷き詰められた本。それを自ら読むほどの知識欲に塗れた囚人が果たしてここに存在するのか。或いは自身の犯罪を芸術だと誇る者であれば、この芸術の塊に感動することもあるだろう。
 リビデルは足を止める。そこにその囚人はいた。
 自身が本の中に没頭できるように、周囲の机や椅子を勝手に動かしている。辺りには山ほど積み上げられた本。何も知らずにここに来た人間がまず圧倒されることには違いない。
 リビデルはため息を吐く。

「東洋に籠鳥檻猿(ろうちょうかんえん)という言葉がある」

 本から目を離さず囚人は口を開いた。

「籠の中の鳥、檻に入れられた猿は不自由な生活を強いられているという意味だ。元々ある者が自身と友人を表した言葉らしい」
「もう図書館の利用時間は過ぎてるぞ、ヴラン」

 ヴランと呼ばれた囚人は、そこでようやく顔を上げてリビデルを見た。

「学習に必要な時間は無限のはずだが」
「駄々をこねるな、館長も困っている」
「知に貪欲なうちに勉強したほうがいいに決まってる」
「近頃図書館を一人の囚人が占領してると苦情がきてる」
「それが俺だとでも?」
「おまえ以外に誰がいる?」

 ヴランはリビデルの半歩後ろに立ち、顰めた顔をして腕を組む館長へと視線を向けた。そしてその視線をまた読んでいた本へ一旦戻してから、諦めたように息を吐いて閉じた。




 夕暮れ、オレンジに染まる都市と眩しい空。そしてその眩しさを放つ太陽とは対照的に、空は暗闇に染まりつつあった。
 ヴランという男は食えない男だ。それがリビデルの中でのヴランの評価だった。知識欲の塊であり、あくなき探求心の化け物。品行方正ではないし、どちらかと言えば言うことは聞かない囚人。模範囚とは程遠い囚人であることは違いない。しかし、リビデルはヴランという男に興味があった。この男といれば退屈しない。そういう予感がリビデルの中にはあった。

「今日も結局仕事しなかったな」

 リビデルがそう言えば、ヴランは鼻で笑う。
 バロックで生きている人間は産まれた時から70万年の懲役を科せられる。囚人となった人間たちはバロックから出るために“仕事”をこなしてポイントを稼ぎ、稼いだポイントを支払うことで懲役年数を減らしていくのだ。

「そもそもまともにポイントを稼いでバロックから出たヤツなんて一握りだろう。大体は生涯をバロックで過ごし、死んでいくのがオチだ」
「それでもなにもせずに死んでいくよりはいい」
「……レッドマザーに生み出された監視役(パノプティコン)の言うことだな。外の世界のほうがいいだなんて誰が言ったんだ」

 ヴランの言ったことに、リビデルは少なからず衝撃を覚えた。この地獄のような都市から出れば楽園が待っていると、バロックに住んでいる者は信じて疑っていないからだ。

「おまえは……、外の世界に出たくないのか」
「どうでもいい」
「どうでもいいって」
「外の世界はバロックより立派な図書館があるのか?」
「それは――、……知らない」
「だろ」

 ヴランはそう言って笑う。なんとなく言いくるめられた気もするが、監視役(パノプティコン)も外の世界を知らない。
 確かに、外の世界のほうがいい。外の世界に行けば解放される。なんて、誰が言ったのだろう。誰が言い出したものなのだろうか。人は産まれたそのときから罪を背負っている。これはレッドマザーの言葉だ。監視役(パノプティコン)としてこの身を作られ、起動したその時、レッドマザーはリビデルにそう言った。
 生を受けることは罪であり、生を望むことは罪である。その罪の償いのために人間たちはバロックで生きている。そう教えられたのを憶えている。

「向こうが騒がしくないか」

 不意にヴランが言う。どこかを見てそう言っているのだと理解し、リビデルはヴランの視線を追った。
 路地に通ずる場所に人だかりができているのが見える。同時に警備隊(レッドアイ)の姿が見え、なにか事件が起きたのだと二人は理解する。

「……おい」

 リビデルがなにを言うより先に、ヴランはその方向へ歩き出す。好奇心旺盛な囚人に付くとこれだから困る。リビデルはヴランの後を追った。




「バッソ隊長、どうですか?」

 バッソと呼ばれた警備隊(レッドアイ)の隊長はううむと唸る。

「囚人のほうは首を飛ばされて、監視役(パノプティコン)は頭を潰されている。殺意が高ぇっつぅのは見てわかるな。一撃で確実に殺すことを考えての殺害方法だろう」
「……囚人のポイント履歴を閲覧しましたが、62,987もあったポイントが何者かの介入により盗られています」
「犯人だろうな、あとは鑑識の結果を待とう……ん?」

 バッソが横を見ると、いつの間に居たのか、ヴランがふむふむと頷きながら遺体を眺めていた。

「うわあ!!てめえ、また来やがったのか!!」
「鑑識の結果はいつ頃出そうなんだ」
「俺の話を聞け!!ヴラン、おまえは囚人なんだぞ、これは警備隊(レッドアイ)の仕事だ!」
「この傷口、レーザーだな」
「だから話を――……なに?」
「見ろ」

 ヴランは囚人の首を指差す。

「切り口が焦げて皮膚がくっついている。レーザーは医療では皮膚をくっつけるなど治療に使われる場合もあるんだ」
「ほ、ほう。なるほど」
「しかし、凶器がレーザーである場合はひとつ懸念点がある」

 ヴランの語り口にバッソは「懸念点?」とつばを飲み込む。

「レーザーは武器屋で取り扱っていない。囚人たちには取扱が不可能な武器ということだ」
「囚人たちには……?」
「察しが悪いな」

 ヴランはバッソを見て笑う。そしてリビデルに視線を投げると、彼を見て言った。

「レッドマザーの関係者であればレーザー製の警棒があるじゃないか」

 ヴランのその言葉にバッソは素っ頓狂な声を上げる。

「な、なにィッ!?じ、じゃあ警備隊(レッドアイ)、あるいは監視役(パノプティコン)の犯行だということか!?」
「今回は監視役(パノプティコン)も被害者だからな、警備隊(レッドアイ)が一番怪しいということになるが」
「き、ききき、貴様、唐突に現れて警備隊(レッドアイ)を侮辱するなどっ!!万死に値する!!監視役(パノプティコン)!!早くここから追い出せ!!」

 バッソは顔を真っ赤にし、怒りを露わにして叫ぶ。名指しされたリビデルはため息を吐いて「わかった」と言い、ヴランの首根っこを掴みずるずると引きずって行く。「推理の邪魔をするな」と抗議するヴランを無視し、二人は人混みから出るのだった。




「それで、おまえは本当に警備隊(レッドアイ)の仕業だと思っているのか?」
「可能性はゼロではないとは思っている」
「……じゃあ、誰の犯行だと?」
「ポイントを奪っているからには、目的はそれだ。俺の中でしっくりくるストーリーは、レッドマザー関係者から警棒を奪った囚人が、外へ出るために被害者を襲い逃走した。というものだが……」
「俺もそうじゃないかと思っているが」
「しかし、こうも考えられないか?レッドマザーに捧げるポイントは、一体なにに使われるのか?」

 リビデルはヴランの目を見る。その目は知的好奇心に満ち溢れ、獣が興奮状態の時に開かれる瞳孔にも似ていた。

「……なにが言いたい」
「生を受けることは罪であり、生を望むことは罪である」

 リビデルは存在しない心臓が早鐘を打っているような気がした。

「巨大収容都市バロックが作り出された際、レッドマザーが言った言葉だそうだ。この世界に必要なのは正しき秩序、そしてそれを創造することを目標として掲げている」

 沈みかけの夕日が二人を照らす。赤く燃える太陽が見ている。

「さて、我々がするべきことはなにか?」

 完全なる夜が訪れる。太陽が沈み、誰の視線も監視もない夜。二人の企みを知る者は誰もいない。
 獣は夜に潜み、そしてそれを暗示するかのようにヴランは笑った。

「悪戯は母が寝静まった頃に。レッドマザーの監視網を搔い潜って中を調べるんだ」









 ハンス・クリスチャン・アンデルセンによる童話のひとつに「ある母親の物語」というものがある。
 子供が高熱を出し生死を彷徨っている。母親は寝る間も惜しんで必死に看病している。そんな中、老婆がやってきて代わりに子供を看病すると言った。母親はそれに甘え、少しだけ休むことにした。たった少しの睡眠、母親が気づいた時には、子供と老婆の姿はなかった。
 子供を取り戻すために、母親の慈悲深き無償の愛で様々な困難を乗り越える話だ。
 生み出されたばかりのリビデルは、母親はどうしてたった一人の子供のために自身の身体も精神も犠牲にできるのか理解できなかった。この物語を語ってくれたレッドマザーは言った。

「母親とはそういうものなの。自分の命よりも、子供の命を優先してしまうのよ」

 納得はできなかった。何故なら母親だって、母親になる前は一人のなんでもない人間だったのだから。突然自己犠牲に抵抗がなくなるなんてありえないと思ったのだ。

「ではあなたは俺のために、監視役(パノプティコン)警備隊(レッドアイ)たちのために犠牲になるのですか」

 リビデルはレッドマザーにそう問う。レッドマザーといえども、返答に困る質問のはずだと思った。そう確信していた。だからこれは、自分でも意地悪な質問だと思いながら言ったものだ。
 しかし、リビデルの予想に反して、レッドマザーは慈愛の笑みを浮かべて、淀みも、揺らぎもなく答えた。

「もちろんです」

 その時リビデルは、この感情を言語化することができなかった。しかし、リビデルの思考の隙間にそれは確かに明確に宿った。



 母親という存在は、愛そのものだと。








 レッドマザーの近辺を探る。そう言ったヴランについていき、とある地下鉄へと渡っていた。
 元々は中央区から別の区域へ行くのための地下鉄だったのだが、区域を超えての暴動が相次いだため、現在はどの犯罪レベルの囚人においても区域を超えることはできない。廃駅となった路線を歩きながら、ヴランは懐中電灯を前へ照らしている。

「近辺を探るんじゃないのか」
「今探ってるだろう」
「ここからレッドマザーがいる中央塔とは距離が離れている」
「はは、俺たちは謂わばレッドマザーの意向に逆らう反逆者だ。堂々と真正面から行くわけがないだろう」

 リビデルは歩みを止める。
 反逆者だと?
 思考が赤く染まるのを感じていた。

「……俺は監視役(パノプティコン)だ。おまえの行いを監視するためについて行っているだけだ。勝手に仲間にするのはやめてもらおう」
「監視役は金魚のフンかなにかか?」
「……なんだと?」
「『石鹸と教育は大量殺人ほどの急激な効果はないが、長い目で見ると、それ以上の恐ろしい効力があるのだ』」

 ヴランの語り口調には少なからず嘲りがあった。遠まわしな皮肉、侮辱されているのだと理解せざるをえない。

「マーク・トウェインの言葉だ。こう考えたことはないか?教育と洗脳とはなにが違うのか。お前の思考回路はレッドマザーによる洗脳でできているんだよ」

 ――懐中電灯が落ちる。地面にぶつかりあちこちに光が照らされ、そのまま転がって、止まった。
 リビデルはヴランの胸倉を掴んでいた。リビデルの赤い瞳がヴランの瞳を捉えていた。
 わからない。
 ヴランがなにを考えているのか、ヴランがしたいことがなんなのか。
 知的好奇心の獣は、自身の平穏を犠牲にしてまでその欲を満たすことしか考えていないのか。
 目の前の男が、リビデルにとってなによりも恐ろしい、誰にも制御ができない化け物に見えた。
 実際にはそんなことはない、囚人と監視役であれば監視役のほうが圧倒的に強いのだから。この男を今ここで捕らえて、レッドマザーの前に差し出せば、己はレッドマザーを裏切ることはないし、なにより彼女に認めてもらえるだろう。

「おまえが求めるのは承認か」

 ヴランは酷く冷めた声で言った。

「真実を闇に葬り去ってまで、自分の存在意味を定義することが大切か」
「……確定してもないお前の想像上の真実を、こちらに押し付けるな」
「ならば最初に俺が可能性を提示した瞬間に否定すればよかった。謎があれば暴きたい。一度疑問に思ったものは払拭できない」

 彼は逸らすことなく、真っ直ぐにリビデルの目を見た。リビデルはヴランの見透かしてくるような目が好きではなかった。“言わなくてもわかる”、そう言われているような気がしてならない目。それは、ヴランがリビデルを信用している証だったからだ。
 それが嫌だった。この男は、リビデルが彼に対して興味を持っていることを知っていたのだ。このことをリビデルは一度も彼に言ったことはない。それでも知られている。興味がある。真実というもの、そしてなにより、それよりも、彼がどうやってこの真実を暴くのか。
 ヴランという男が、この隠された真実をどうやって暴くのかを。

「おまえも同じだ」

 ヴランはそう言って笑う。

「好奇心は猫をも殺すと言うが」
「『人生で必要なものは無知と自信だけだ』、俺だって全てを見通して、確実に勝つと見越して進んでいるわけじゃないさ。わからないから進むんだ」

 真実を掴むには次のページを捲るしかない。だからこの男はいつまでも本の中に没頭し、その紙をひたすらに捲っているのだろう。
 食えない男だ。だからこそ興味がある。
 自分も知的好奇心の獣なのだと、今になって気づいた。



<<次回 第二章

#バロック

戻る

一次創作

恋は取引材料
「恋はひとを馬鹿にする」。
地球を侵略する悪の集団、その悪の幹部が、正義のヒーローに恋をしてしまった!
仲間からは「ヒーローを悪に引き込めばいい」とアドバイスを貰い、さっそく実行に移すのだったが……?

引用
恋は盲目 Wikipedia








恋は盲目。誰もが知っている格言だ。
元はウィリアム・シェイクスピアのヴェニスの商人という話から生まれた言葉であり、他のもの、選択肢が見えなくなってしまうほど理性的な判断ができなくなってしまうという意味だ。

要するに、恋はひとを馬鹿にするのだ。

まったくもって理解し難い感情だ。
まったくもって。
う~ん。
ほんとに。


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「なのに!!」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「どうしてボクはあんなヤツに恋をしてしまったんだぁ~~っ!!」





tanpen_04_ranka 【ランカ】
「…………」

tanpen_04_ranka 【ランカ】
「またひとりで喚いてるの?」
「うるさいから静かにしてほしいんだけどぉ~」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「ルゥァアンカ!!貴様にはわかるまい!!」
「この苦しみが……!!この自己嫌悪が!!」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「悪の幹部が正義のヒーローに恋ィィ!?」
「ありえない!!脳のバグ!!ヤダーッ!!」


tanpen_04_ranka 【ランカ】
「あ~うるさいわね~」
「確かに大問題だけど、仕事さえしてくれたら言うことは無……」


tanpen_04_ranka 【ランカ】
「……思いついた!」


tanpen_04_ranka 【ランカ】
「そいつをこっちに引きずり込めばいいのよ!」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「えっ?」



tanpen_04_ranka 【ランカ】
「正義のヒーローを言いくるめて、正義から悪に引き込んじゃえば」
「壁もなくなるし、アンタとそいつは一緒にいれてハッピーってことよ♡」



tanpen_01_kaoru 【カオル】
「な、なるほど……!確かに!」

tanpen_01_kaoru 【カオル】
「フンッ、たまには役に立つな貴様」


tanpen_04_ranka 【ランカ】
「殴るぞ」









☆☆☆









npc 【警報】
『警報!警報!』
『△△広場に怪人出現!!』
『ただちに向かわれよ!』


tanpen_02_rekka 【烈火】
「おっ、仕事の事件だぜ、小津!」

tanpen_03_odu 【小津】
「はいはい、今日もやってやりますか」







tanpen_01_kaoru 【カオル】
「う~ん、緊張してきた」


tanpen_04_ranka 【ランカ】
「こういうのは度胸よ!!」
「っていうかいつも鬱陶しいくらい自信過剰なナルシストなのに」
「急にしおらしくなっちゃって、らしくないわねえ」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「ボ、ボクだって緊張くらいする!」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「で、でも自信は必要だ……!そ、そうだよ、ボクの美しさがあれば彼の心なんてイチコロ」


tanpen_02_rekka 【烈火】
「おまえたちの悪行はそこまでだ!!」



tanpen_01_kaoru 【カオル】
「ぎゃーーーー!!!!」



tanpen_02_rekka 【烈火】
「えっ?」


tanpen_02_rekka 【烈火】
「俺、そんなに声デカかった?」

tanpen_03_odu 【小津】
「いやそうでもないと思うけど」



tanpen_01_kaoru 【カオル】
「あわ……っ、あわ、あわあわあわ……」


tanpen_04_ranka 【ランカ】
「ちょっと、本命が現れたんだからしっかりなさいよ!」



tanpen_04_ranka 【ランカ】
「ほらっ、行きなさい!」

tanpen_01_kaoru 【カオル】
「ちょっ、押さないで……うわあ!」



tanpen_01_kaoru 【カオル】
「あっ、え~~~~……っと」

tanpen_02_rekka 【烈火】
「?」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「いや、その……」
「い、いい天気だよな」

tanpen_04_ranka 【ランカ】
「てめえ!!!!!!」

tanpen_02_rekka 【烈火】
「???」
「あ、ああ。うん。確かに雲一つない空だよな」

tanpen_03_odu 【小津】
「待って、ヤツらの作戦に乗っちゃ駄目だ烈火!」
「おそらくなんらかの時間稼ぎだよ!!」

tanpen_02_rekka 【烈火】
「えっ!?」



npc 【怪人たち】
「カオルさま!ファイトー!」
「がんばれーっ!」
「応援してますよ~!」



tanpen_02_rekka 【烈火】
「いや……なんか、なんもしてないっぽいけど」

tanpen_03_odu 【小津】
「?????」

tanpen_04_ranka 【ランカ】
「ちょっとあんた」グイッ

tanpen_03_odu 【小津】
「な、なに!?なにが狙い!?」

tanpen_04_ranka 【ランカ】
「シーッ!」
「……実はあの子、あんたのとこのリーダーに恋してるみたいなの」コソコソ

tanpen_03_odu 【小津】
「は????」

tanpen_04_ranka 【ランカ】
「どーせ玉砕するでしょうけど、束の間の恋愛ぐらい楽しませてあげてよ」
「アタシたちは敵同士、あの子にもそれをわからせてあげるチャンスよ」


tanpen_03_odu 【小津】
「……なるほど、応援しているようで本当はどうせ敵わぬ恋だと見下しているんだ」
「性格悪いね」


tanpen_04_ranka 【ランカ】
「悪の幹部には褒め言葉よ♡」




tanpen_02_rekka 【烈火】
「よくわかんねえけど、なんでずっとソワソワしてんだ?」

tanpen_01_kaoru 【カオル】
「あっ、え~っと、その……」
「ほ、ほら!久しぶりに顔を……その……」
「見れて……え~っと……」


tanpen_02_rekka 【烈火】
「……そういえば会ったの久しぶりだな?」

tanpen_01_kaoru 【カオル】
「そ、そう!そうそう、久しぶり……」


tanpen_03_odu 【小津】
「なに見せられてる?????」

tanpen_04_ranka 【ランカ】
「普通に空気が甘くなっててまずいわ」

tanpen_04_ranka 【ランカ】
「まあ、成功したら成功したで」
「アンタのリーダーをこっちに引き込めるってワケ♡」

tanpen_03_odu 【小津】
「なんだと……!?」
「……」
「……あのさ」



tanpen_03_odu 【小津】
「そっちが俺たちのところに来たらどうするの?」





tanpen_04_ranka 【ランカ】
「ヤバい!!玉砕しろ!!玉砕しろー!!」

tanpen_03_odu 【小津】
「そっちは考えてなかったんだ……」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「あの……」
「ボ、ボクのこと、どう思ってる……?」


tanpen_02_rekka 【烈火】
「どうって、そりゃ地球を襲う悪の幹部で――」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「そ、そうだけど!幹部のこと抜きに、ボク個人のこと!」

tanpen_02_rekka 【烈火】
「おまえのこと?」

tanpen_01_kaoru 【カオル】
「た、例えばボクは、おまえのこと……」
「つ、強くて……その、顔も悪くないし?」
「ボクの隣に立つなら、り、理想的だよねえ!」


npc 【怪人たち】
「ヒューーーーッッ♪♪」


tanpen_04_ranka 【ランカ】
「ギョエ~~~~~ッ!!」

tanpen_03_odu 【小津】
「どうなるんだこれ」


tanpen_02_rekka 【烈火】
「う~ん」
「俺もおまえのことは強くて、あと気高くてなにがあっても諦めなくて」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「ワワワワワ」


tanpen_02_rekka 【烈火】
「どんな姿の自分が一番輝くかわかってて、自分磨きもしてて」
「敵ながらすげえって思ってるぜ!」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「エ、エエェッ エッ アッ ワッ」


tanpen_01_kaoru 【カオル】
「キャァ~~~~~~~~~~~」







tanpen_03_odu 【小津】
「あっ、倒れた」



tanpen_04_ranka 【ランカ】
「あ、あっはっは~~~!!」
「力を行使せずとも我々を追い詰めるとは!さすがね!!」

tanpen_02_rekka 【烈火】
「えっ?あ、どうも」


tanpen_04_ranka 【ランカ】
「今日はこれくらいで勘弁してあげるわ~~!アンタたち!撤収よ~~!」

npc 【怪人たち】
「は~い」
「次くらいで告白できるかなあ」
「みんなでお祝いしようね~」







tanpen_02_rekka 【烈火】
「…………なんだったんだ?」

tanpen_03_odu 【小津】
「……さあね~……」



おわり

#短編創作

戻る

一次創作

飛んで火にいる冬の虫
センチメンタルなノワールのおはなし。


俺は自分のことを蛾だと思う。

光るものに釣られて、それが大きな炎だと気づいていない、哀れでちっぽけな虫。



それが、ノワールが自分に下す評価だ。
街中はすっかり冬に彩られて、白い雪が街を覆い尽くしている。
歩けば雪を踏み潰す音が聞こえて、息を吐けば白いもやが目の前を通り過ぎる。

周囲を見渡せば、雪を喜ぶ子供たちが思い思いに雪を使った遊びをしていた。
見ればあちこちに雪だるまがある。しっかり作られて感心するものもあれば、不器用だが温かみを感じれるものもある。

そのまま街を歩いて行って、自分たちが泊っている宿へと辿り着く。

そこには、またひとり雪だるまを作っている男がひとり。



stkyd_01_reinice_2 【レイニス】
「おっ!おかえり、ノワール!」



レイニスはぱっと表情を明るくしてこちらを見る。

stkyd_03_noir 【ノワール】
「ただいま。なにしてるんだ?」

stkyd_01_reinice_2 【レイニス】
「なにしてるって、見りゃわかるだろ。雪だるま作ってんの!」



stkyd_03_noir 【ノワール】
「俺が聞きたいのは」

stkyd_03_noir 【ノワール】
「成人にもなってひとりでなにしてるんだってことだ」



stkyd_01_reinice_2 【レイニス】
「なんだと~……」
「わかんねえやつだな」



stkyd_01_reinice_2 【レイニス】
「年齢に縛られて遊ぶ楽しさすら忘れたら悲しいだろ!」

stkyd_01_reinice_2 【レイニス】
「普段ちゃんとしてるんだから」
「こういうときくらい遊んだっていいだろ?」



stkyd_03_noir 【ノワール】
「ちゃんとしてるかなあ」

stkyd_01_reinice_2 【レイニス】
「はぁ~!?」





こういうとき、レイニスには縛るものがなくていいなと思う。




縛ろうとしてもその場から全て叩き切って前に進んでいく。
いや、縛るものが燃えて灰になっていくのほうが正しい。

いつだって燃えているような男だ、だからなんの障害も効かないし、人々は明かりに釣られて近づいていく。
その時に気付くのだ、その明かりは炎で、容易く触れられるものではないと。




レイニスにとって、自分はふさわしくない。






stkyd_01_reinice_2 【レイニス】
「なんか考えてるな」

stkyd_03_noir 【ノワール】
「ん?」
「う~ん……」




stkyd_03_noir 【ノワール】
「レイニスって暖房効果があるなって……」

stkyd_01_reinice_2 【レイニス】
「ど、どういうこと!?」


stkyd_01_reinice_2 【レイニス】
「熱い男ってこと?俺が」




stkyd_03_noir 【ノワール】
「正解」


#砂の月を目指して

戻る

一次創作

Re;dREgina 第7話(完)
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定


本編 第6話 前回>>






街中に溢れていたシーカーは、大槻真冬が開発した武器の支給により鎮静化された。

ディルクロ社はシーカー及び違法実験に関与していたとされ、社員の取り調べが行われた。
全員は関係しているわけではなく、御前の協力の元暴かれた研究員たちは全員逮捕。
エスーー、本名斎藤(さいとう) 三影(みかげ)は、研究内容と事件の始終を供述。




reregi_12_es 【斎藤三影】
「私はね、玩具を作りたかったんだよ」
「自我がある、そして私を守ってくれる、兵隊みたいな玩具」
「それを、国を守る兵器を作ろうって言って研究員を募った」


reregi_12_es 【斎藤三影】
「この供述を知ったら」
「私は研究員たちにも恨まれるだろうね」



親玉であったseeker-001が沈静化したことで、空を覆う赤は消え去っていた。










☆☆☆











あの時シーカーに飲み込まれていた人たちは、順調に回復していると報せが入った。

天音御前は、「松岡」と書かれた病室のドアをノックする。

reregi_08_toka 【松岡十日】
「はぁい」


reregi_06_misaki 【天音御前】
「調子はどう?」

reregi_08_toka 【松岡十日】
「ちょっと身体がしんどい程度」
「もう大丈夫だよ」


reregi_08_toka 【松岡十日】
「もう死んだものだと思ってたけど」
「まさかまだ生きてるとはね」
「運がいいんだか悪いんだか」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「ホントに」



reregi_06_misaki 【天音御前】
「……研究所まで行って、あなたが掴んだのって」
「夏生がシーカーだってこと?」


reregi_08_toka 【松岡十日】
「そう」
「……あとは、夏生はレギナのクローンだったってことかな」
「それはシーカー全員がそうなんだけど」


reregi_08_toka 【松岡十日】
「シーカーはレギナの細胞から産まれた生物兵器」


reregi_08_toka 【松岡十日】
「レギナは、研究の総監督であるレオン・カーロイの息子でさ」
「産まれたときから父親の研究材料として様々な訓練と実験を繰り返されてたらしい」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「……そう考えると」
「レギナってひとの人生は、なんだったんだろうね」


reregi_06_misaki 【天音御前】
「父親が死んでも、最期まで研究材料としてしか見られていなかった」













reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「それがさ」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「斎藤三影は、レギナの墓を作ってやってほしいって」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「えっ」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「そんな情があったんですか?あのひと」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「情っていうか……」
「愛着、なのかも」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「いなくなったのは、寂しいそうだ」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「とことん、実験体としか見てなかったんですね」
「人の心ってのがない」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……俺も、少しでも違う道へ歩んでいれば」
「レギナみたいに、誰にも」
「なんにも期待できなくなっていたのかな」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「死ぬことすら恐怖できなくて」
「世界中の敵になってしまう絶望もなくて」
「なにも感じないひとに」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「…………」
「……人生ってそういうものですよ」
「一歩違えば奈落です」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「同情するのは勝手だが」
「これから、おまえの道はおまえしか選べない」
「シーカーではない、獣地夏生としての道を」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「おまえがしっかり考えて、選べよ」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「進化の競争では、生き残るためには走り続けないといけないんでしたっけ」
「大変ですけど」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「俺は明星朔良として、止まる気はありませんから」
「あんたらも、立ち止まらないでくださいね」




reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「あ、いたいた!」
「朔良~~!早くヴィルトゥスに戻れよ!」
「仕事が山ほど溜まってるぜ!」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「ヤダ~~~ッッ!!」





鈴鹿柊一はC課として、獣地夏生はシーカーとして。それぞれの問題を乗り越えたが……。
ただの会社員である明星朔良は、区切りなんてものはないらしい。












Re;dREgina  END





本編 第6話 前回>>

#Re;dRegina

戻る

一次創作

Re;dREgina 第6話
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定

参考
鏡の国のアリス ルイス・キャロル
赤の女王仮説 Wikipedia
四季(ヴィヴァルディ) Wikipedia


<<次回 本編 第7話    本編 第5話 前回>>






夏生くん、これだけは憶えててほしい

誰がなんと言おうと、きみは獣地夏生というひとりの人間だ









最上階まで辿り着き、目の前にはカードキーを差し込まなければ開かない、白い扉がある。
この中に元凶であると考えられる、ディルクロの社長がいる。


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……開けるぞ」


柊一がそう言うと、朔良と夏生は黙って頷いた。

御前から受け取ったカードキーを差し込めば、静かな電子音と共にランプが緑に光る。


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「さすが」


御前の技術力に感服しながらも、この先への不安を疼かせる。
柊一はドアノブを握りしめ、意を決して開けた。









reregi_12_es 【???】
「赤の女王仮説をご存知だろうか」

「他種族との競争の中、生き残るためには常に進化していなければならないという仮説だ」

「1973年、リー・ヴァン・ヴェーレンによって提唱された」



部屋に置かれた蓄音機から流れ出すのは、アントニオ・ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲、「四季」より冬。
第1楽章では、寒波の中身震いを起こしているような表現がなされている。

部屋の奥には3人の人間がいた。

一人は赤い髪をし、不機嫌そうに顔を歪ませている女性。
もう一人は、地面に置かれた積み木に夢中になっている。夏生らのことなど眼中にないようだ。

もう一人は、椅子に座って目を細めながらこちらを見ている。
彼は薄ら笑みを浮かべながら言った。


reregi_12_es 【???】
「我々シーカーは、元々人間によって生み出された存在」
「ある街はずれの研究所で、非人道的に行われた研究」


reregi_12_es 【???】
「生み出されたシーカーは自我を宿し」
「生き残るために、支配される側ではなく支配する側へと意識を成長させた」

「それが、私たちが起こした人間への逆襲」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「人間への逆襲……」


reregi_10_tasikku 【???】
「アタシたちは、アタシたちのやり方で種を存続させたい」

「アンタたちは、アンタたちの世界を守りたい」

「なら、和解できる道はねえってことだ」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「でも……!」
「俺は、人間の世界を守りたいよ」
「自我のあるシーカーが話し合えば、まだ和解の道だってあるかも……」


reregi_10_tasikku 【???】
「甘っちょろいこと言ってんじゃねえよ」
「その姿、おまえはレギナの血を濃く継いでるはずなんだがな」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「レギナ……?」


reregi_10_tasikku 【???】
「最初に産まれたシーカー」
「実験体の番号になぞらえて言うなら……」
「seeker-001」


その時、爆風が窓を叩いていることを柊一は察知する。
ガタガタと音を立てて揺れる窓、ますます風は強くなっていく。


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「夏生、朔良!!伏せろ!!」


そう言い終わるや否や、全貌を見渡せるほどの窓は音を立てて砕け散った。
ビルから這い上がって来たのは、巨大な図体を構え、ギョロリと目玉を覗かせるシーカーであった。

まるで皮膚の中を剥き出しにしたような赤黒い肌、牙は人間のそれより獣に近い歯並びをし、頭だけが一際大きくなっている。
一つ目のように覗かせた巨大な目玉は、確かに夏生らを捉えている。

これがシーカーの本性、本来の姿。



reregi_10_tasikku 【???】
「ホベッツ、やるぞ」

赤髪の女性は、すっかり積み木が崩された様子のもう一人に声をかける。


reregi_11_hobexxt 【ホベッツ】
「タシック!積み木が~!」

reregi_10_tasikku 【タシック】
「また買い直せばいいだろ」


reregi_10_tasikku 【タシック】
「エス様とレギナ様の悲願の達成のために」
「アタシらは貴方達の手となり足になる」


そう言ったタシックとホベッツは、シーカーの前に立つ。
シーカーは躊躇うことなく二人を飲み込み、ただでさえ異形のものだったそれは、背中からなにかが生成されるような、生み出されるような骨の砕かれる音と共に、悪魔のような翼が広がる。


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「えーっと……」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……どうします?」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「どうするもなにも……」

絶望的な状況下に、思わず言葉を失う。


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「柊一、朔良」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「な、なんです、か」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「俺があんな感じの姿になっても、」
「嫌いにならないでくれる?」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「は!?」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……それは」
「おまえもあの姿になることで対抗するってことか?」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「そう」
「さっき、コアの一部を拾ったんだ」
「これを食えば、シーカーの力を増幅できると思う」

「でも……」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……ハァ」
「安心してくださいよ」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「そりゃ、あの姿になったら正直ちょっと引くかもしれませんけど」
「中身は夏生さんでしょ?」
「夏生さんなら大丈夫」
「友達ですからね!」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「おまえが信じるほうへ駆けろ」
「本当の進化ってヤツを見せてやれ!!」


夏生は頷く。
赤く煌めく、宝石のようなコアを口にくわえ、かみ砕く。





地面を駆け抜け、屋上から身を投げ出した。
落下する途中――夏生の心臓から閃光が発され、それは周囲を包み込む。


長い四肢と胴体、白く塗りつぶされている細胞たち。
長い胴体を包み込むほどの白い翼には、赤い目玉が何個も相手のシーカーを射抜いている。

本来の天使というものは、人間の想像を絶するほどの異形をしているらしい。

どこかで聞いたことのあるような話だが、存在するとしたら、目の前にいるものだろう。


やがて二体のシーカーはぶつかりあい、奇声を上げながら空中で戦い合う。





reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
『聞こえるか、柊一、朔良!』


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「うおおお!!びっくりしたァ!!」
「は、はい!!聞こえますよ!!」


reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
『おれもおるで!』

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「瑞稀!」


reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
『今、俺が開発したスーパーウルトラミラクルボンバーレーザーガン』
『つまりあのシーカーを倒すためのレーザーガンの調整をしてる』

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
『さすがに俺だけじゃ難航するからよ』
『柑橘の姉ちゃんに付き合ってもらってるよ』


reregi_06_misaki 【天音御前】
『あとちょっとで細かい修正が完了する』

『……』

『よし……!これでどうかな』



reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
『さすがですね……!』

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「頼れる味方がいてよかったよ」
「いいか、撃つのはあの赤黒いほうのシーカーだ」
「白いほうは夏生だ、間違っても撃つなよ」


reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「バカ」
「撃つのはおまえだよ」


後ろを振り向けば、息を切らしながら壁に手をついている真冬がいた。
手にはケースが握られており、真冬はそれを柊一に向けて投げる。

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「っと……!」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「優れた銃の使い手じゃないのに、片方のシーカー狙って撃てるわけねーだろ」
「頼むぜ柊一」
「性能の限界でな、一発撃ったら壊れるぜ」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「んなぁ!?」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「十分だろ」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……ああ」

「一発あれば十分だ」









目の前のシーカーにぶつかればぶつかるほど、自分の、人間としての感覚が失われていくのを感じた。

どうしようもなく、自分は化け物で。

人間ではない、シーカーなのだと。


目の前のものを傷つけることで、自分の中のなにかが満たされていくのを感じた。
ああ、シーカーとはこうも加害性に満ちた存在だったのか。と、今になって思い知ることになった。


最初にシーカーを造りだした人間たちは、なにを考えてこんなものを生み出したのだろうか。


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「(……俺は)」
「(俺は、それでも)」
「(今まで、みんながくれたものを無下にしたくない)」


世間にとって、自分の存在はいらないものかもしれない。



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「夏生!!!!!!!」


ビルのほうを見れば、柊一が銃を構えて夏生を見ていた。
夏生は心で頷き、目の前のシーカーに飛び掛かる。

必然的に目玉をビルの屋上へと向けてしまったシーカーは、遠くで笑う柊一を、確かに見た。


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「落ちろ……!!」













ディルクロのそばで、赤黒い天使が落ちていった。


それは紙が剥がれていくみたいにボロボロと剥がれ落ち、やがて塵となって消えていく。
その中から現れたのは、夏生と瓜二つの人型だった。


彼は夏生と同じ顔をしながら、同じ目はしていなかった。
どこまでも虚ろで、なにも映さない目。

夏生はその姿を見ながら、彼が本当に望んでいたのは、人間を支配することだったのだろうか?と逡巡する。






――その頃、ビルの屋上で聞こえたのは一発の銃声。
それは柊一に被弾することはなかったが、持っていた銃を落とすよう掠めたものになった。

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「柊一さん!!」

朔良が柊一に駆け寄る。
撃った人物は、あの時シーカーに食われていなかった一人……エスと呼ばれる、ディルクロの社長だった。


reregi_12_es 【エス】
「長かった実験も、失敗という結果に終わってしまったか」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「なに……?」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「まさか」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「あんた、シーカーじゃないんですか」



reregi_12_es 【エス】
「そうだよ、私はシーカーではない」
「ただの人間、シーカーを開発していた研究員のひとりだ」

「レギナは私の成果の第一番として、よく出来たシーカーだった」
「でもまさか、seekar-002もあそこまでよく出来たものだったとは」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……夏生さんは、もうあんたらに縛られる立場じゃない」


reregi_12_es 【エス】
「そうかな」
「化け物はどこまで行っても化け物だ」
「人間と違うと自覚してしまった以上」
「もう元の状態に戻れないと思うよ」



無数の足音が聞こえる。
部屋には瑞稀、千秋、御前。そしてついてくるようにして、警官たちが周囲を取り囲んだ。


reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「武器を捨てろ!違法研究、及び大量殺人の容疑者として逮捕する!」

エスは表情もなくそれを見、諦めたように武器を捨てる。
ほどなくして夏生も柊一たちと合流し、事件は一旦の収束を迎えることとなった。





<<次回 本編 第7話    本編 第5話 前回>>

#Re;dREgina

戻る

一次創作

Re;dREgina 第5話
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定


<<次回 本編 第6話    本編 第4話 前回>>






reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「お願いします、社長に会わせてください!」
「緊急事態なんですよ」
「どういう意味か説明していただかないと……!」




npc 【受付嬢】
「そ、そうは言われましても」
「社長からは誰も通すなと……」




ディルクロ社内、大槻千秋が受付嬢に対し必死に詰め寄っている。
社内は混沌としており、慌ただしく社員が動き回り、または逃げ場所を探そうとしている。

そんな中、千秋を探しに来た真冬がディルクロ社に訪れた。




reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「千秋!!」
「おまえなにしてんだ、こんなところで……」



reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「どうもこうも」
「シーカーについて社長から話を聞かないと」
「よくわからないけど、ディルクロ社がシーカーに関わってるなら……」
「今起こってることだって、なにか知ってるかもしれない」


reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「だからって一人でディルクロに行くなよ!」
「もしそうだとしたら、相手になにされるかわかったもんじゃ……」






npc 【ディルクロ社員】
「う、うわあああッ!!」




npc 【ディルクロ社員】
「ば、化け物!!」

「誰か助けてぇ!!」





npc 【受付嬢】
「な、なんですか、あれは……!」





reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「あ、あれが……シーカー……?」




ディルクロ社内から突如現れたシーカーが、周囲の物品や壁を破壊しながら歩いてくる。
そのシーカーは、いくつも人間を飲み込むように取り込み、人間たちで形を作っている異様な化け物だった。

千秋にはその顔に見覚えがあった。
かつてヴィルトゥスで働き、そしてディルクロに引き抜かれていった社員たちだ。



――一方で、真冬にも見覚えのある顔がある。




reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「……十日」




飲み込まれたシーカーの中に、この事件の発端となった人物。
松岡十日の姿があった。







☆☆☆








夏生たちはディルクロに到着する。
しかし彼らを出迎えたのは、恐ろしいほど静かなエントランス。そして、何者かが暴れまわったような荒れた光景だった。


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「まさか、シーカーがディルクロの中に……」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「さ、さっきから真冬さんと連絡つかないんですけど……!」
「まさかシーカーにやられちゃったんじゃ……」




reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「あっ!!」




その時、走ってくる音が聞こえた。
次いで現れたのは、ヴィルトゥスの社長 大槻千秋の姿だ。

彼はぜえはあと息を乱し、そして柊一にしがみつく。




reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「た、助けてください!!」
「兄さんが……兄さんが今シーカーと戦ってて……!!」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「なに……!?」



reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「奥の倉庫にいます!!」
「こ、このままだとシーカーにやられてしまう……!」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「わ、わかりました!」
「社長はとにかく安全な場所に隠れて!」







☆☆☆






reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「真冬さん!大丈夫……、」


夏生らは倉庫まで辿り着く。そしてその異様なシーカーを見て言葉を失くした。




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……十日!?なんで……」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「おせえぞおまえら!」
「見た感じ、こいつの原動力となるコアがあるらしいんだが」
「人間が覆い隠すみたいに集まってて撃てねえ!」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「この人間たちって、生きてるんですか……!?」


reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「多分生きてる」
「十日も生きてる……おそらくだけど」
「シーカーに繋がれて生命力が復活したんだろうな」




シーカーは腕を振り上げ、夏生ら目掛けて振り下ろす。




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「うわあっ!!」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「チッ……!」
「コアをなんとかすりゃいいんだな!?」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「なんとかすりゃいいんでしょうけど、なんともできないから困ってるんでしょ!」



シーカーの猛攻は続く。



棚が倒され、それは真冬が避けた先目掛けて落ちてくる。
頭上が暗くなり、真冬は限界は悟り目を瞑る。



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「真冬さん!!!!」





……しかし、いつまで経っても衝撃は訪れない。
恐る恐る目を開ければ、驚くことにシーカーが真冬を庇っていた。





reregi_08_toka 【松岡十日】
「間一髪ってやつだな、真冬」





reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「十日……!?」
「おまえ、意識あるのか!?」



reregi_08_toka 【松岡十日】
「どうやら、このシーカーは全員と意識を共有してるらしい」
「だから俺たちが眠っている必要があったんだ」
「動きを邪魔されないようにね」



reregi_08_toka 【松岡十日】
「俺が核を開く」
「けど意識を保つだけで必死だ」
「一発で打ち抜いてくれよ、柊一」





reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……撃ったらおまえはどうなる」




reregi_08_toka 【松岡十日】
「さあ」
「もう一度死ぬんじゃないかな」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「十日さん……」






reregi_08_toka 【松岡十日】
「夏生くん、これだけは憶えててほしい」
「誰がなんと言おうと、きみは獣地夏生というひとりの人間だ」
「御前が名前を与えてくれたのなら、きみはそれだけで人間だよ」





十日がそう言うと、コアを取り囲んでいた人間たちは次々に腕を下ろし、開かれるようにして中身を曝け出す。
そこには人間の心臓のように、赤く脈打つコアがあった。





reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「当たれ……!」




柊一は、真冬から受け取った銃を構え――目の前のコア目掛けて撃ち抜く。
それは照準がブレることなく、真っ直ぐにコアをぶち抜いた。宝石が砕ける瞬間のように四散し、飲み込まれていた人間たちが解放される。



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……!!」



倒れた人々に駆け寄った朔良は、彼らの顔色を見て気づく。




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「柊一さん!救急車……は動くかわからないか……」
「救護班でもなんでも、動けそうな人っています!?」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「瑞稀、どうだ」




指定のカスタム絵文字は見つかりませんでした。 【敷織瑞稀】
『急に連絡よこしたと思ったらなんや~!』
『手回せそうなのなら何人かおるで!』




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「ディルクロに向かってください!」
「このひとたち、まだ息がある!」



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え!?」

「十日さん……!!」




reregi_08_toka 【松岡十日】
「コアに繋がれて、一時的にもシーカーの治癒力が移ったのかも」
「う、もう意識朦朧だから……」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「ご、ごめん!ゆっくり休んで!」




reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「ここは俺に任せろ、おまえらは行くとこがあるんだろ?」





真冬がそう言うと、夏生たちは顔を見合わせる。


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「ディルクロの社長……」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「千秋も会おうとしてたが」
「おまえらが行ったほうがきっといい」
「気を付けろよ」




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「うん、行ってくる!」





<<次回 本編 第6話    本編 第4話 前回>>

#Re;dREgina

戻る

一次創作

Re;dREgina 第4話
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定


<<次回 本編 第5話    本編 第3話 前回>>






一時的な避難のために、柑橘へ訪れた夏生たち。
真冬は千秋が心配だからと言い、彼らとは別れヴィルトゥスへと戻って行った。

reregi_06_misaki 【天音御前】
「まずいことになったわね……」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「まずいどころじゃないですけどね」

「どうするんです、これから」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「気になることは山ほどあるが」
「さっき、夏生とぶつかった研究員っぽい男が気になる」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……シーカー002」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「なんでアイツが夏生をシーカーと呼んだのか……」
「夏生、どういう意味かわかるか?」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……正直なところ、俺もよくわかってないんだ」

「憶えているのは、目が覚めた時に研究所らしき場所にいたこと」
「そこには培養槽がたくさんあって、人型のものもあればモンスターみたいなものもあった」
「今思えば、さっき見たシーカーに形が似ている気がする」

「俺の頭には制御装置みたいなものが付けられていて……」
「そこには確かに、seeker-002って書かれていたんだ」


reregi_06_misaki 【天音御前】
「それで、研究所を逃げ出した先で私と会った……」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「うん」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「なにもわからないし、怖い場所だったし」
「とにかく人気のある場所まで逃げようって走って……」

「ま、まあ途中で見つかって、変な人たちに追いかけられたんだけど」

「アレって誰だったんだろう?」


reregi_06_misaki 【天音御前】
「シーカーを開発しているのがディルクロ社なら」
「ディルクロ社の構成員でしょうね」

「夏生はおそらく、シーカーとして作り出された存在……」

「逃げ出すことは想定外だったんじゃないかな」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「うおお……」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……なるほどな、状況は把握した」

「一応、確認したいことがある」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……なに?」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「これまでに、暴走しそうになったとか」
「我を忘れた瞬間とか」
「攻撃的になった瞬間……とかはあるか?」

「返答によっては、俺はおまえを止めるために」
「C課として、人を守るために……」
「……おまえを撃たないといけないかもしれない」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「し、柊一さん……!」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「いいよ、朔良」
「出会って少ししか経ってないけど、柊一は真面目なひとだってわかってるよ」

「だから隠さずに言う」
「“これから”どうなるかはわからないけど……」
「今のところ、自我を失ったことはないよ」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「そうだね、私から見ても」
「自我を失ったりするところは見たことがない」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「オーケー。ならよし」

「……おまえがシーカーだってバレたら、上から色々言われるだろうけど」
「そんときゃ、俺がなんとかする」
「とりあえず」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「今はもう一度ディルクロ社に行って、社長と会う」
「あとはあの研究員と話が出来りゃいいんだが」
「この異界じみた世界を元に戻さないとな」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「了解」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「おっけー!」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「なら、ディルクロ社内の地図を渡しておく」
「あとは、社長室に入れるマスターキーね」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「無敵すぎません?」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「貰っておく」


reregi_06_misaki 【天音御前】
「十日以外の警察にこんなことするなんて、初めてだよ」

「活躍を期待してるね、柊一くん」





<<次回 本編 第5話    本編 第3話 前回>>

#Re;dREgina

戻る

一次創作

Re;dREgina 第3話
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定


<<次回 本編 第4話    本編 第2話 前回>>






reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「ここがディルクロ社か~……」

全面的に白を基調とした建物。
無駄をそぎ落としたシンプルなデザインに、洒落たフォントの会社のロゴが似合っている。

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「でもなんか……」
reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「遊び心ないね、玩具の会社なのに」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「玩具作りはヴィルトゥスだけですよ」
「ディルクロは様々な事業を展開させてる会社です」
「有名所で言ったら、法人でサイト立ち上げるのにディルクロのサーバーを使っている。なんてよくありますよ」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「へえ~」
reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「よくわかってない顔してんな」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「とにかく」
「折角ヴィルトゥスの社長が話通してくれたんだ、さっきみたいな暴走すんなよ」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「ウ。は、はぁ~い……」






☆☆☆






受付嬢に話せば、彼女は「お待ちしておりました」と頭を下げる。



npc 【受付嬢】
「ただ……、申し訳ありません」
「会議の時間が長引いているようで」
「社長がまだお戻りになっていないんです」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え~っ!?」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「いつ頃戻るか目処はつくか?」

npc 【受付嬢】
「30分ほどお待ちいただければ、お姿が見えるかと」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「わかった」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「お忙しいんですねえ」
「まあ、社長ですし……」
「常に別の会社に行って挨拶とか、営業とか、飛び回っているものですからねえ……」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「へー」
「最上階で街を見下ろしてるイメージしかなかったな」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「絶対悪役で想像してるでしょ」



休憩できる場所を探して歩いていると、曲がり角に来たところで夏生が誰かにぶつかる。
向こうは走って来ていたようで、互いに尻餅をついてしまった。



reregi_09_enmiss 【???】
「うわッ!!」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「いてっ!!」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「あ~らら……」
「二人とも、大丈夫ですか?怪我は?」



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「俺は大丈夫!」
「す、すみません!大丈夫ですか!?」



reregi_09_enmiss 【???】
「こ、こちらこそすみません、不注意で……」





reregi_09_enmiss 【???】
「……え?」





ぶつかった相手は夏生の顔を見て目を見開く。



reregi_09_enmiss 【???】
「な、seeker-002……なんで!?」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え?」





その名に、夏生だけではなく柊一と朔良も表情がこわばる。




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……今、シーカーって言ったか?」




reregi_09_enmiss 【???】
「え、あっ、い、いや……」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「どういうことです」
「あんた、なにか知ってるんですか?」



reregi_09_enmiss 【???】
「え、えぅ、う」



reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
緊急!緊急!

reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
『シーカーと思わしき怪物を発見!』
『街中で人を襲っとるんや!大事件やで!』



柊一の無線から、瑞希の焦った声が響く。




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……」



怪しげな男から視線を逸らさないまま「わかった」と応答した柊一は、男を置いて出口へ歩き出す。




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「行くぞ」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「で、でもどうするんですこいつ」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「今は事態の収束が最優先だ」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「行けるか、夏生」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「う、うん」



見逃されたと安心したのか、男はすぐ様その場から逃げ出す。



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「…………」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「おまえにも聞きたいことはあるが」
「今は協力し合う仲間だ」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……そうですね、それはもちろん」



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……ありがとう」






☆☆☆






現場へ向かう。
そこは人通りの多い交差点だ。今までのシーカー事件は人通りの少ない場所に出るのが常だった。
それが急に、多くの人間に目撃された。

既に周囲は多くの警官がおり、避難と射撃を続けていた。

reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「あっ」
「柊一さん!!」

避難誘導を続けていた瑞稀が柊一らに気づき、駆け寄る。

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「悪い、遅くなった」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……あれが、シーカーか」

一言で表すなら、モンスターだと思った。
攻撃性を形にしたそのもの。
見た者の正気を削り取るようなその姿は、人に恐怖を植え付けるのには十分だった。

reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「攻撃は続けてるんやけど、効いた感じが一切せえへん」
「このままやと被害が拡大してまう!」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「とはいっても……」
「拳銃効かないんだったら他のも効かなくないですか?」





reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「効かねえんだったら効くヤツ作りゃぁいい」





reregi_03_sakura 【明星朔良】
「え」
「ま、真冬さん!?」


reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「おらよ、刑事さん」

真冬は持っていた拳銃を柊一に渡す。
その拳銃は、子供向けの玩具売り場で売っているようなポップな形をしていた。

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「シーカー専用の銃弾が入ってる」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「十日が持ってきたシーカーの組織から解析して、俺が作ったオリジナル武器」
「銃で作っちまったけど、俺に射撃の腕なんてねえし!」
「頼んだぜ~」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「(銃刀法違反……)」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「す、すごいじゃないですか真冬さん!!」
「これでアイツ倒せるんですね!?」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「倒せる!」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「多分!」
reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「多分!?」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「絶対倒せる!」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「多分絶対!」
reregi_03_sakura 【明星朔良】
「どっちなんですか!!」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「とりあえず当ててみないとわからないな」




柊一は息を吐いて、シーカーに銃口を向ける。
そして引き金を引いて、その銃弾は真っ直ぐにシーカーの頭部を貫いた。




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「当たった……!!」






――しかし。






その開いた頭部から見えた真っ赤な血は、次第に周囲に巻き散らされていく。



赤い血はみるみるうちに地面を真っ赤に染め上げる。紙に染み込むコーヒーのように、建物にも手を伸ばす。




いつしか視界には赤しか映らなくなっていた。




白い雲は黒へ、青い空は赤へ、太陽は黒くぽっかりと穴を空け、いつしかそこにあったのは皆が知る世界ではない。



彼らの理解が追い付く前に、あちらこちらから絶叫が上がる。
地面から這い上がるシーカーが、人を襲っているのだ。




reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「……話が違うな」



真冬が銃を与えなければ、柊一が当てなければよかったのか。



そう考える皆の思考を止めたのは夏生の声だ。



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「違う……」
「最初からこうなるように仕組まれてたんだ」










reregi_10_tasikku 【???】
「ようこそ人類たち」
レッドレギナの世界へ!!





高らかに笑う声の向こうに、見知った顔が彼らを見据えていた。










<<次回 本編 第4話    本編 第2話 前回>>

#Re;dREgina

戻る

一次創作

Re;dREgina 第2話
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定


<<次回 本編 第3話    本編 第1話 前回>>






reregi_03_sakura 【明星朔良】
「眩暈してきた……」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「だ、大丈夫?」
「やっぱり朔良は外で待っとく?」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「ウ、ウウ~ッ」
「で、でも自分の会社がもしかしたらよくないことしてるかもなんて」
「疑いたくないし!!」
「シロならシロって言ってほしいし!!」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「あ、あ、あと俺……」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「上司のことも……尊敬してるし」





reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「じゃあ行くぞ」
「いつでも入っていいって言われてるからな」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「うう~」




柊一は扉をノックする。
すると中から「どうぞ」と声がした。ドアノブに手をかけ捻れば、問題なく扉は開く。








reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「初めまして」
「ヴィルトゥスの社長、大槻 千秋です」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「真冬でーす」



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「え、アレ!?苗字一緒!?」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「知らなかったのかよ……」
「自己紹介した時点で気づけよ」

reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「まあまあ」



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え、なにが?」
「どういうこと?」



reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「僕はこの人……」
「大槻 真冬の弟です」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「大槻 真冬か」
「世界的天才クリエイターとして名高い」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「世界的天才クリエイター」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「オウム返しすんな」
「ま、特に日本で有名な玩具は、大体この人が作ってるといってもいい」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え!?すご!?」
「めっちゃすごい人じゃん!!」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「めっちゃすごい人で~す」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「二人が兄弟だなんて、知らなかった……」
reregi_03_sakura 【明星朔良】
「(あの時言ってた千秋って、社長のことだったのか……)」






reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「それはともかく……、聞きたいことがあると」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「単刀直入に聞くけど」
「シーカー事件って知ってるか?」



reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「……近頃、あちこちで話は聞きます」
「それが……我が社となんの関係が?」



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「シーカーの製造に、ヴィルトゥスの社員が関わってるって聞きましたよ!?」
「社長も真冬さんもシーカーに関わってるんですか!?」
「この会社って実はヤバいのに関わってるんですか~!?!?」
reregi_03_sakura 【明星朔良】
「おっ、俺、この会社に憧れて入ったのに」
「犯罪の片棒担がされるなんて聞いてないですよ~っ!!」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「あ、あ~……」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「おっっっ……まえバカ!!」
「こういうのは慎重に聞き出すモンなんだよ!邪魔すんな!」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「慎重に聞いてはぐらかされたら」
「俺のモヤモヤが溜まって、仕事も上手くできなくて、真冬さんから使えねえ~って言われて」
「クビになる未来しか待ってないだろ!!」




reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「想像力豊かで良いな」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「すごい、褒めてくれるんだ」




千秋は真剣な表情で、朔良の話を聞いていた。




reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「なるほど」
「いえ、単刀直入に聞いてくださって助かります」

reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「ではこちらも素直に。ヴィルトゥスはシーカーに関わっていません」
「……ですが」




reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「時折……親会社のディルクロから妙な指示をされることがあります」




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「親会社……ディルクロ?」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「一体どんな?」




reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「僕たちは玩具を作ることが常ですが、社員たち数名を一時的ディルクロに送れと言われるんです」
「実力を見て、ディルクロのほうが合えばディルクロのほうへ引き抜いたりしているんですが、ディルクロのほうへ出向いても引き抜かれた社員の姿が見えないんです」
「行方を聞いたりもしたんですが、微妙にはぐらかされているような気がして……」



reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「それで実は、こっそり警察の人に捜索をお願いしたりもしたんですが」
「結局なんの手がかりも掴めないままで……」





reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「…………」





reregi_03_sakura 【明星朔良】
「じ、じゃあシーカーに関わってたヴィルトゥスの社員は?」

reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「それに関しては本当に知らなくて、なんと言えばいいか……」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……大体わかった」
「一応裏は取らせてもらうけど、いいな?」

reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「はい、お手数おかけします」




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「うーん、今の話だと、一番怪しいのはディルクロってとこになるね」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「ディルクロ社にも行ってみるか」



reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「でしたら、こちらから連絡してみます」
「解決に向かってほしいのは、僕も同じですから」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「助かる」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「やっぱこの事件、おれらも巻き込まれる感じか」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「そういえば……」
「さっきもこの事件としばらく付き合うことになるかもしれないって言ってましたね」
「も、もしかしてなんか関わってるんですか……?」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「松岡十日っているだろ、今回の被害者」




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「うん、十日さんがどうかした?」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「友達だったから」
「それも、結構深くまでシーカー事件について調べてたらしいぜ」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「なに……?」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「おれには聞くなよ」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「そうじゃないかって思ってるだけで詳しくは知らないんだから」
「でもシーカーについて首を突っ込みすぎたから死んだ」


reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「そう思ってるけどな」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「…………」



reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
「ディルクロと話をしまして」
「会ってもいいそうです」




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「ほんと!?」
「結構順調じゃない!?」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「まだ触りしかわかってないでしょ」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「なんか怖いな~……」
「行ったら俺たちも行方不明の一員になったりして……」



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「考えすぎだよ~!」





reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「(十日……)」
「(おまえはなにを掴んだんだ?)」





<<次回 本編 第3話    本編 第1話 前回>>

#Re;dREgina

戻る

一次創作

Re;dREgina 第1話
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定


<<次回 本編 第2話    前日譚:獣地夏生 前回>>

流れる雲の隙間から光が差し込んでいる。
天使の梯子だとか言われているアレだ。

これから死ぬというのに、随分洒落たものを見せられていると思った。




あ。これから死ぬから天使が迎えに来てるのか。
そういう考え方もできる。




せっかく尻尾を掴んだと思ったのに、ここで死ぬのか――悔しいな。
自分を襲った男は慌てた様子でどこかへ逃げていってしまった。
誰にも気づかれないまま、ここで意識を落としていくだけだ。




ダイイングメッセージでも書いておけばよかった。






でも最期までそんな考えには至らなかったらしい。








☆☆☆



玩具制作会社「ヴィルトゥス」。
主に子供向けに玩具を制作しているが、大人にも大人気であり、今やその名を知らない者はいない。



つい先日。新たな部署へ配属された明星 朔良は、前よりも移動距離が長くなった道のりを歩きながら目的の部屋のドアを開ける。



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「おはようございま~す」




reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「おはよ~」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「だいぶ過ごしやすい季節になりましたよねえ」
「さ~て、今日も仕事頑張るかあ」






reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「あのさあ」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「はい?」







reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「これなに?」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「え?」







真冬が指さすテレビを見れば、そこには近所で起きた殺人事件が報道されていた。
殺人事件の概要も妙なものだったが、なにより目を引いたのはそこに落ちていたらしいアイテムだ。



npc 【ニュースキャスター】
「遺体のそばにはヴィルトゥス社が制作した玩具が落ちており、警察は凶器の可能性もあると見て調査中です」








reregi_03_sakura 【明星朔良】
「…………」





その玩具はケモノをモチーフとしたかわいらしいデザインの車型の玩具だ。
先頭はケモノの顔があり、口が開閉するようになっている。


朔良にとっては馴染み深いその玩具。何故なら。




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「お、俺が作った玩具…………」






npc 【部下】
「真冬さん、失礼します!」
「朔良さんに話があると……、下に警察の人たちが来てるんですけど」










reregi_03_sakura 【明星朔良】
「…………」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「イヤァ~~~!!!」
「助けて真冬さん!!」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「頑張って行ってこい!」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「そんなあ!!」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「俺無関係ですよ!!」
「俺はただ仕事で作っただけで!!」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「おまえが無関係なのはちゃ~んとわかってるよ」
「別に疑ってるとか全然ねーし」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「そ、そうなんだ よかった」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「大体、おまえが疑われてるんなら、この世の殺人事件の犯人が全部凶器の制作者じゃないとおかしいだろ」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「確かに……」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「大方、商品の説明してほしいだけだと思うぜ」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「そこから犯人のヒントが得れるかもしれないって希望だろ」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「そ、そっか。そうですよね」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「ありがとうございます、真冬さん」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「俺だって折角できた部下手放したくねーもん」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「ただ……」




reregi_03_sakura 【明星朔良】「ただ?」








reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「……ちょっとこの事件には」
「しばらく付き合うことになるかもしれねえ」





reregi_03_sakura 【明星朔良】
「…………?」







☆☆☆






reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「(……現場に来たはいいものの)」



鈴鹿 柊一は事件の被害者、松岡 十日が殺害された現場に来ていた。
証拠になりそうなものは既に回収されたため、他に気になるものとはといえば正直に言えば無い。



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「ダイイングメッセージでも描いといてくれたらな」





npc 【警備員】
「ああっ!」
「こらキミ!関係者以外立ち入り禁止!」




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「ん?」




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「バレた!!」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「ちょっとだけ見せてください!」
「邪魔しないんで!」



npc 【警備員】
「そういう問題じゃないよ!」
「ほら、あっち行った行った」





reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「…………」






reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「おまえ、この事件に興味あるの?」

npc 【警備員】
「す、鈴鹿警部!?」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「う、うん!ある!」
「俺、この事件の被害者と友達だったんです」
「犯人捕まえてやりたくて!」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「ふーん……」






reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「いいよ、入ってきな」

npc 【警備員】
「ええ!?」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「責任は俺が取る」
「俺が面倒見とくから、あんたらは通常通りやってくれ」

npc 【警備員】
「は、はあ……」






reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え、いいの?」
「やったー!ありがとうございます!」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「別に」
「気になったことあったら言えよ」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「は~い!」







reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……ん?」




夏生は周囲から漂う異臭に気付く。






reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「(……どこかで嗅いだことある匂いだ)」
「(どこだっけ……?)」





reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……あ」





reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「(思い出した)」
「(あの研究室みたいなところだ)」





reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「ねえ、刑事さん」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「ん」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「この辺り」
「ちょっとだけ異臭がするんだけど……、これってもうみんな知ってる?」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「異臭……?」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「いや、そんな報告はなかった」
「どんな匂いだ?」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「薬品みたいな匂い」
「もうほぼ消えかけてるけど……」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「いや、これ消臭されたのかも」
「別の匂いで掻き消してるみたいな」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「なるほど……」
「覚えとく」




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「意外と使えるかもな、あんた」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え!?」
「最初から『協力してくれそう』とか思って入れてくれたんじゃないの!?」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「や、なんか、仲間にしたらいいかもと訴えてて」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「なにそれー!?」








npc 【警備員】
「あーっ!!」
「ちょっと!!立ち入り禁止です!!」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「あ?」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「ん?」



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「うるさ~~~い!!」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「今日聞きに来た警察の態度め~~~っちゃくちゃムカつく!!」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「なんだか知らないけど『実は犯人と関係あるんじゃないですか?』とか半笑いで言いやがって!!」
「ぜ~ったい無関係だって突きつけてやる!!」




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「ええ……」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「失礼な人もいるもんだなあ」
「可哀想だし入れてあげようよ」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「ええ~……?」




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「まあいいけど」

npc 【警備員】
「いいの!?!?」






☆☆☆






reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「まあ、色々来てくれたところで悪いんだけど」
「大体の証拠はもう鑑識が持って行っちゃったから」
「調べてもあんま意味ないかもな」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「う~ん、そっかあ……」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「その鑑識の人に落ちてた玩具って見せてもらえないんです?」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「無理だと思うよ」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「あとは警察に任せて……、って言いたいけど」




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……正直、進展は望めない」




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え、なんで?」




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「もうずっと似たような事件で足踏みしてる」
「ついに同僚まで被害にあったときた」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「もしかしたら今度は警察に目を付けたのかもしれない」
「被害は広まるだけ」
「事態は悪化する一方」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「でも、どうすればいいのか……」






reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……そっか」
「十日さん、警察の人だったんだ」








reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「うーん……」







reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「あのさ、うち、情報屋なんだけど」






reregi_03_sakura 【明星朔良】
「え、情報屋?」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「御前さんに聞けばなにかわかるかも」
「来てみない?」



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「そ、そーゆーのって警察に言うことじゃなくないですか?」
「言っていいんです?」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「多分駄目!」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「ええ…………」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「でも解決したいんでしょ」
「じゃあ立ち止まったままのほうがもっと駄目だよ」
「俺も協力するから」





reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「………」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「おまえ」




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「めちゃくちゃ面白い人間かも」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「ええ!?」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「んじゃ、助けてもらおうか」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「本気ですか~……?」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「ま、俺もなんとしても無実を証明したいんで」
「ついて行かせてください」



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「決まりだね!」
「じゃ、レッツゴー!」






☆☆☆






reregi_06_misaki 【天音御前】
「随分多いお客さんだね」

情報屋「柑橘」。
そこでは店主の天音 御前が待っていた。

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「俺からの依頼だ」
「シーカー事件について知ってることがあれば教えてほしい」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「シーカー事件……?」
って、最近オカルト系で言われてる、アレですか?」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「知ってるみたいだね、話が早い」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「正直渡せる情報はそんなにはないけどね」
「カーロイ研究所って知ってる?」

御前の言葉に全員が首を横に振る。

reregi_06_misaki 【天音御前】
「この街から少し離れた場所にある研究所なんだけど」
「そこでは信じられない研究がされてたの」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「人間を使った生物実験」
「そしてそこから兵器にするための実験をね」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「兵器だと……?」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「兵器っていうのは、そこにあった手記からの引用だけどね」
「隠喩かもしれないけど、そのままの意味の可能性が高い」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「その兵器を使って、なにするつもりなんです?」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「そこまでは知らない」
「ただ、その手記を残した研究員は、ヴィルトゥス社の社員だったの」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え……」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「嘘!?え!?」
reregi_03_sakura 【明星朔良】
「全然知らないんですけど!!」
「待って!!無罪です!!俺は!!」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「ヴィルトゥスの社員が全員クロではないでしょうね」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「で、その兵器が所謂シーカーで」
「そのシーカーを造っているのはヴィルトゥス社員」
reregi_06_misaki 【天音御前】
「上層部なら、なにか知ってるんじゃないかな」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「じ、上層部って、そんな」
「…………」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「真冬さん……」




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「社長に聞くのが一番手っ取り早い」
「連絡を入れてみる」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「う、うん」




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……朔良、大丈夫?」




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「正直気分悪い、ですけど……」
「すみません、心配かけました?」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「う、うん」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「なんか……」
「思ってたより、大変なことになっちゃいそうだね」




reregi_06_misaki 【天音御前】
「こういうのは大抵、ロクでもない真実だよ」




<<次回 本編 第2話    前日譚:獣地 夏生 前回>>

#Re;dREgina

戻る

一次創作

Re;dREgina 前日譚:獣地 夏生
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定


次回 本編 第1話   前日譚:鈴鹿柊一 前回>>







reregi_09_enmiss 【???】
「数値は正常……」
「こっちも問題無し」




reregi_09_enmiss 【???】
「ハァ……早く完成して俺の負担を減らしてくださいよ」
「いやこいつが完成したらまた新しいシーカー造らされるのか……」
「面倒くさいな……」





reregi_10_tasikku 【???】
「おい、エンミス」

reregi_10_tasikku 【タシック】
「タシックだ」





reregi_09_enmiss 【エンミス】
「あ、ああ」
「タシックさん。こんばんは」



reregi_09_enmiss 【エンミス】
「何の用です、別になんの問題も起こってませんよ……」




reregi_10_tasikku 【タシック】
「何の用です、じゃねーよ!」
「会議時間になっても来ねえから迎えに来たんだろうが」

reregi_10_tasikku 【タシック】
「あたしの手を煩わせやがって、さっさと来い!」



reregi_09_enmiss 【エンミス】
「あ、ああ。すみません、すみません」








☆☆☆








誰もいなくなった研究室に、培養槽と機械の音だけが鳴っている。
培養槽に入れられている、人間の形をしたもの。あるいはモンスターや獣の形をしたもの。

その中に既に培養槽から出され、機械の椅子に座らされている個体があった。




頭に付けられた制御装置がピーという小さな音を鳴らし、停止する。




reregi_01_natsuo 【???】
「……」




個体が目を覚ます。
周囲を見渡し、まだハッキリとしない意識のまま持ち上げた片手が頭の制御装置に触れる。



reregi_01_natsuo 【???】
「なんだ、これ……」



自身の状況をうまく呑み込めない。それでも異質なことは理解できた。
ふと、制御装置以外にも首に札が付けられていることに気付く。
その札には「seeker-002」と書かれていた。




reregi_01_natsuo 【???】
「しー……かー……ゼロゼロニー?」





reregi_01_natsuo 【???】
「よくわかんないけど……」
「ここ怖いし、出よう」



出口を探すために部屋を出た彼は、その後監視カメラに映ったことで追われることになる。








☆☆☆








それからどれほどの時間が経ったかはわからない。



茂みから出た彼は、見慣れない道路に出ていた。
行き交う人々に思わず驚いてしまうが、忙しいのか或いは関わらないようにするためか、誰も彼を気にしなかった。




reregi_01_natsuo 【???】
「は……」




reregi_01_natsuo 【???】
「腹、減った……」






自身を追う人間もいないことの安心感からか、一気に疲労が襲い掛かる。
腹から聞こえる空腹を訴える声を聞きながら、彼は倒れ込んだ。








☆☆☆








reregi_06_misaki 【???】
「あ、起きた?」




目を覚ますと、またもや知らない場所だった。



覗き込んでくる顔は鮮やかなオレンジをした髪の女性で、彼女は優しく微笑むとそばに白湯を置く。




reregi_06_misaki 【天音御前】
「私は天音(あまね) 御前(みさき)
「このお店の主」


reregi_06_misaki 【天音御前】「君が倒れてたから、ここまで運んできたんだけど……」
「体調のほうはどう?」





reregi_01_natsuo 【???】
「あ、ありがとうございます」
「お……おなか空いてて……」





reregi_06_misaki 【天音御前】
「どういうのだったら食べれそう?」



reregi_01_natsuo 【???】
「ど、どういうのがあるんですか?」



reregi_06_misaki 【天音御前】
「そうだなあ」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「チャーハンとかどう?」
「重いイメージを持たれるかもしれないけど、味付けのやり方によってはさっぱりして食が進むものにだってできるよ」


reregi_01_natsuo 【???】
「じ、じゃあそれで!」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「オッケー」





~ご飯ができた~





reregi_01_natsuo 【???】
「お……」
「美味しい~~~!!」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「うんうん、よかったよかった」
「落ち着いて食べて。ご飯は逃げないからさ」

reregi_01_natsuo 【???】
「こんな美味しいご飯初めて食べた……!!」

reregi_01_natsuo 【???】
「本当にありがとうございます!!命の恩人です!!」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「大袈裟だなあ」




reregi_06_misaki 【天音御前】
「ところで、キミの名前は?」





reregi_01_natsuo 【???】
「名前?」
「……えーっと……」



脳裏に「seeker-002」という文字が浮かぶ。
さすがにこれを名乗るわけにはいかない。



reregi_01_natsuo 【???】
「……じ、実はちょっと記憶喪失で……」

reregi_01_natsuo 【???】
「名前も帰る場所もないっていうか……」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「へえ、複雑な状況なんだ」




reregi_06_misaki 【天音御前】
「ふーむ……」





reregi_06_misaki 【天音御前】
「あのさ、ここって情報屋を営んでるお店なんだけど」
「従業員が私一人しかいないんだよね」
「だから衣食住を与える代わりに、私のお仕事手伝ってくれない?」

reregi_01_natsuo 【???】
「え……い、いいんですか!?」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「もちろんちゃんと働いてもらうけどね」

reregi_01_natsuo 【???】
「ぜ、是非是非!!俺、しっかり働きます!!」




reregi_08_toka 【松岡十日】
「社員入社おめでとう、御前」




reregi_01_natsuo 【???】
「え、誰!?」



reregi_08_toka 【松岡十日】
「初めまして、俺はここのお店の常連客」
松岡(まつおか) 十日(とーか)っていうんだ」

reregi_08_toka 【松岡十日】
「前頼んだものを受け取りに来たんだけど」



reregi_06_misaki 【天音御前】
「ああ、これね」



reregi_06_misaki 【天音御前】
「はい、どうぞ」

reregi_08_toka 【松岡十日】
「どうも~♪」




reregi_01_natsuo 【???】
「なに?それ」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「大手企業ヴィルトゥス社の社員情報が入ったデータ」
「なんで必要なのかは詳しく知らないけど」
「それなりに大金払ってもらっちゃってるからお仕事はしないとね」

reregi_08_toka 【松岡十日】
「いつも助かってま~す♪」



reregi_01_natsuo 【???】
「へえ~……。なんか、本当に情報屋やってるんですね」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「疑ってたの?」

reregi_01_natsuo 【???】
「え!?いや、別にそんなつもりじゃ」

reregi_08_toka 【松岡十日】
「ドラマに出てくるみたいな情報屋でしょ?こういうところが好きなんだよ」




reregi_08_toka 【松岡十日】
「じゃ、俺はこれで」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「はーい、今後ともご贔屓にー」





reregi_06_misaki 【天音御前】
「じゃ、今日からはキミに情報屋としてのノウハウをキッチリ叩きこんでいくからね」

reregi_01_natsuo 【???】
「かっこいい~……!!任せてください!」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「やる気あっていいね~」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「その前にキミの名前だね」
「いいの決めてあげる」



そうして名の無かった個体は、獣地(じゅうじ) 夏生(なつお)として生きることになる。








☆☆☆☆








それから数ヶ月。




夏生は御前から仕事を教わり、今ではそれなりに充実した日々を送っていた。
常連客ということもあり、十日ともよく会う仲になっていた。
その楽しい日々も、ある殺人事件をきっかけに崩壊する。




reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「え……十日さんが、殺された?」



reregi_06_misaki 【天音御前】
「どうやら近頃密かに囁かれてる事件に巻き込まれた可能性が高いみたい」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「シーカー事件って知ってる?」



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「シーカー事件……?」



reregi_06_misaki 【天音御前】
「今は表立って報道はされてないけど」
「警察が密かに捜査している事件」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「SNSとか、オカルト系配信者の間では」
「化け物が人を襲ったとか言ってる人がちらほらいるんだけど」
「事件現場に『seeker』と書かれてる札が落ちていたのが発端でそう呼ばれてるみたいね」



reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「…………」



reregi_06_misaki 【天音御前】
「それで、今回の十日の事件もシーカーが引き起こしたものじゃないかって言われてるらしいの」
「遺体に噛みつかれてるような痕があるってね」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「現時点で不明なのは、その遺体のそばにヴィルトゥス社が制作した車型の玩具が落ちていたってこと」
「確かにケモノモチーフの車のデザインをしているけど」
「これが嚙みついたなんてありえないでしょ?」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「俺もそう思う……」





reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「……うーん……」






reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「御前さん、俺現場に向かってみていい?」


reregi_06_misaki 【天音御前】
「ちょうど頼もうと思ってたところ」

reregi_06_misaki 【天音御前】
「これは誰に依頼されたものでもないけど」
「贔屓にしてくれてた客を一人失ったもの」
「彼の無念は晴らしてあげたいしね」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「うん。じゃあ行ってきます!」




次回 本編 第1話    前日譚:鈴鹿柊一 前回>>


#Re;dREgina

戻る

一次創作

Re;dREgina 前日譚:鈴鹿 柊一
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定


<<次回 前日譚:獣地夏生     前日譚:明星朔良 前回>>








reregi_08_toka 【松岡十日】
「柊一、ごめん」
「これが最後の連絡になりそうだ」



reregi_08_toka 【松岡十日】
「今度予約してた飲み屋、キャンセルしといて」










☆☆☆










reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「……さん」
「柊一さん!」








身体を揺らされる感覚に目を覚ます。




鈴鹿(すずか) 柊一(しゅういち)が目覚めたそこは刑事部のオフィスであり、既に同僚たちは各々仕事をするために出払っていた。



柊一の顔を覗き込むようにして、目の細い男が言う。




reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「いつまで寝とるんや!もう朝やで~!?」

reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「ま~た徹夜で作業しての寝落ちなんやろ!」
「身体に悪いでホンマ!」




ぼんやりとした頭で考える。



この関西弁の男は、つい先日我が課に配属された新人刑事、敷織(しきおり) 瑞希(みずき)だ。
まだ配属されて3日しか経っていないというのに、既に柊一が家に帰らない男として認定されているようだ。



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「(3日か……)」







3日前。



瑞稀が配属されたと同日に、同僚である松岡(まつおか) 十日(とーか)が殉職した。
死ぬ直前の通信は、悠長な会話など許されず、一方的な十日の連絡で終わった。






警視庁刑事部シーカー捜査係。通称C課。
表立っての公表はされていない、秘密裏に動いている捜査班だ。
表向きには捜査一課の刑事を名乗っている。






シーカー、現時点では解剖結果により「人造兵器」として危険視されており、近頃はシーカーが引き起こした事件も増えつつある。
市民の混乱を防ぐためまだ報道はされていないが、動画サイトの配信者やSNSはチラホラと「化け物が人を襲っている」という話がささやかれている。



警察組織でもシーカーについてわかっていないことが多い。人型をした形態もあれば、無機物が一人でに動き、その内部からシーカーの反応を起こしたことも確認されている。
なにかしらに憑依するタイプのものなのか。十日が遺したであろう映像も破損しており情報が少ない。





しかし、迷うこともない。今の柊一にできることは、仲間の無念を晴らすことだけだ。





reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「柊一さ~ん!?聞いてはります~!?」




reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……ん?」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「ああ、なに?」

reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「また魂抜けたみたいな顔してたで!」
「まあええわ」

reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「松岡警部の私物が事件現場のちょっと離れた距離に落ちとってん」
「もしかしたらその周囲にシーカーの拠点があるかもしれへんし、ボクはまた探ってきます」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「気ィ抜いて十日みたいにはなるなよ」





reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「……それ、ツッコんでええのかわからんわ」
「柊一さんはどないすんの?」
「あんま仕事詰めすぎて倒れられても困るし、休んでてもええけど」



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「今が一番忙しいのに休めるかよ」





reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「もう一度事件現場に行ってみる」
「まだ人もそこまで寄り付いてないだろうし」
「早めに行って疑問は解消しておかないと」


reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「りょーかい」



reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「ほな互いに達者で!」



瑞稀は元気よく部屋から出て行く。
それを見届けた柊一は、一旦伸びをしてから荷物をまとめ、オフィスを出た。







<<次回 前日譚:獣地夏生     前日譚:明星朔良 前回>>

#Re;dREgina

戻る

一次創作

Re;dREgina 前日譚:明星 朔良

※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定


<<次回 前日譚:鈴鹿柊一






日本でも有名な超大手企業、ヴィルトゥス社。

昔はテーブルの上で遊べるような玩具を細々と作っている小さな会社だったらしい。
それが今では知らない者はいない、誰でも一度はこの会社の玩具を買ったことがあるだろうと言えるほどのものになった。



社内は社員がのびのびと活動ができるよう様々な設備があると噂で、ホワイトも超ホワイトだとネットでは言われている。



競争率も高いので、内定が貰えた時は飛び上がって喜んだものだ。






しかし、そんな新入社員の朔良に待ち受けていたのはホワイトの中の汚れの部分だった。







明星(あけほし) 朔良(さくら)が配属された部署以外は、本当に優しくて良い人ばかりだ。なのに……。

光が強くなればなるほど、影も濃くなるということなのか。朔良が配属された部署は、他の部署の人間から見ても最悪が詰め込まれた場所。
上司たちからは陰口、悪口。奴隷のような扱いをされ、仕事を押し付けられ……。
逆に、よくもまあこの会社に居られるなと感心するほどである。

転職。その考えも過ったが、折角つかみ取った憧れの会社を捨てるには惜しかった朔良は、最後のあがきとばかりに部署の異動を申し込んだ。
申請は通り、なんとか新たな部署に配属されることが決定したのだ。



……そして今、まさにその新たな部署へ異動するところなのだが。





reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……14階って、社長室の下だよな?」





この会社は15階建て。
そして目的地は、14階。
社長室の下の階である。

思わず冷や汗が背を伝う。
しかし、ここまで来たからには逃げるわけにはいかない。
せめて中の様子を見てから判断しよう、そしてこの会社を信じよう。

そうしているうちにエレベーターは目的の階へと止まる。
そしてしばらく廊下を歩き、ノックを2回。
ドアを開き、中に入る。






reregi_03_sakura 【明星朔良】
「失礼します。本日からお世話にな……る……?」






朔良の目に飛び込んだのは、ガラクタ部屋でも、不機嫌な顔で座る上司でもない。
座っているどころか地面に転がって、輪っかになっているゲームコントローラーを握りしめている成人男性の姿だ。




reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……資料に書いてあった、大槻(おおつき) 真冬(まふゆ)さんですよね?」


reregi_04_mahuyu 【???】
「うおおおお!!」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「あの……」




ゲーム音声『ペースを上げるよ!1、2、3!』




reregi_04_mahuyu 【???】
「ぐああああ!!」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「…………」






~しばらく経って~






reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「ふいー!いい汗かいたー!……あ、どうもどうも。俺大槻真冬です」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「あ、はい。今日からお世話に、」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「あ!ちょっと待って、今汗だくだからシャワー浴びてくるわ」



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「…………」






~しばらく経って~






reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「いやーサッパリサッパリ!」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「あ、今日からお世話になりまーす」



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「あ、はい。」
「……あの、さっきから何を?」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「見てわかんねーか?リングレッスンアドベンチャーだよ」
「ずっと座りっぱなしじゃ健康に悪ぃーし、こうして身体動かさないとなー」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「はあ……」






☆☆☆






reregi_03_sakura 【明星朔良】
「あの……、ところで、他に社員は?」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「俺と真冬さんしか見当たりませんけど」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「あ?ああ!」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「ここは俺だけで回してたんだけどさ」
「さすがに人手が欲しくておまえを受け入れたんだよ~」



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……ええ!?ま、真冬さんだけで!?」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「なんてったって俺は天才だからな!」
「こーゆーのは一人で回せちゃうんだよな」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「は、はあ……すごいですね……」




reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「でも作る以外のことはてんでできねーから、千秋にいい加減部下を雇って!って言われてさあ」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「千秋……?」




reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「おまえ優秀なんだろ?」
「だったら俺のできないこともやってくれるんじゃないかって」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「まあ……はい。ある程度のことはできますよ」



reregi_03_sakura 【明星朔良】
「俺も、天才なんで」



reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「お~!言うな~!おもしれーヤツ!」






reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「じゃあさっそく今日からよろしく!」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「この部署なんでもあるから好きに使っていいよ」
「ここ洗面所、ここトイレ、ここは……」






大槻(おおつき) 真冬(まふゆ)という人物がこの会社にとってとんでもない天才だったというのを知ったのは、この会社にあるメカの全てが彼によって造られたのを知ってからだった。




<<次回 前日譚:鈴鹿柊一

#Re;dREgina

戻る

一次創作

微妙でも、お守り
「奇々怪々霧雨一族」の続き。




―――――





ある時の並行世界。


redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「きみはここでずっと一人で寂しくないのか」

redalarm_01_kirisamekasumi 【霧雨霞】
「……?」
「考えたことがない」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「そうか……」


例の化け物を倒すために呼び出されたあと、帰還までの間。

夕映は自身の隣に霞を座らせ、他愛のない雑談を始めた。


redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「よかったら、これを持っているといい」

redalarm_01_kirisamekasumi 【霧雨霞】
「これは?」


夕映はキーホルダーを取り出した。
なんとも微妙なデザインをしたゆるキャラのストラップだ。それを霞に渡すと、霞は不思議そうにそれを見つめる。


redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「私が子供の頃に買ったストラップだ。きみにあげよう」

redalarm_01_kirisamekasumi 【霧雨霞】
「戦闘に必要ない」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「いや、戦闘には関係なくてだな……」


redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「そうだな……お守りだと思ってくれ」

redalarm_01_kirisamekasumi 【霧雨霞】
「お守り」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「そう」



霞は相変わらず「よくわからない」といったような表情をしていたが、とりあえずは納得したようでストラップを受け取る。


redalarm_01_kirisamekasumi 【霧雨霞】
「貰っておく」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「そうしてくれ」








redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「あのひとたち、なにしてるんだろう」

redalarm_04_kirisameseren 【霧雨世恋】
「ムムッ!藍子さん、こういうのはそっとしておくのが吉ですよ」

redalarm_03_kirisamekeigo 【霧雨圭吾】
「世恋ってそういうのわかるんだな」

redalarm_04_kirisameseren 【霧雨世恋】
「世の恋と書いて世恋ですからね」


#短編創作

戻る

一次創作

奇々怪々霧雨一族
町一体を取り締まっている霧雨一族。その前当主の葬式が今日だ。
霧雨一族のひとりである「霧雨(きりさめ) 藍子(らんこ)」は、久々に見る親族の顔ぶれを懐かしみながらも一日を終えようとする。
しかし、気づけば荒廃した世界に辿り着いていて……。


―――――








田舎と呼べるほど閉鎖的でもなく、都会と呼べるほど商業施設がわかりやすく建ち並んでいるわけでもない。
しかし、そんな町の一帯を取り締まっている巨大な家があった。



霧雨(きりさめ)一族。



今日はその霧雨家の当主の葬式が上げられていたのである。





線香の匂いが漂う。
ある程度の行事も食事も終えて、各々自由な時間を過ごしていた。




redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子(きりさめらんこ)
「(こんなつまらない場所、帰ってもいいんだけど)」




親戚が一堂に会することなんて滅多にない。
霧雨藍子は懐かしい顔を見ながら、煙草を吸っていた。




redalarm_03_kirisamekeigo霧雨圭吾(きりさめけいご)
「煙草は身体に悪いよ~、藍子ちゃん」



ぱっと目の前が陰る。
顔を上げれば、そこには顎鬚を蓄え、いかにもちゃらんぽらんな雰囲気をした男性が立っていた。

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「自分の身体の責任くらい自分で取るわよ」

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「そうかい、んじゃ俺も一服」

説教しておいて自分も吸うのかよ。と心の中で呟き、藍子はライターを渡す。

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「新しい当主さまの顔見た?」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「見てない」

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「まだ若い兄ちゃんだったよ、大丈夫なのかね」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「なにが?」

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「若いモンが家の風習に囚われて、自由を得る間もなく家のてっぺん任されるんだぜ」
「俺ァ、若い子には自由に生きてほしいね」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「……」











ちらほらと帰宅する人も増えていく中、藍子も帰路につくために霧雨家を出た。

住宅地に入り、一層人の気配はなくなっていく。
夕陽が周囲を赤く照らしており、まるで世界中が赤く染まったみたいだった。




redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「(世界の終りみたい)」




ぼんやり、そう思った。







――遠くからアラームの音が聞こえる。




どこかの家のものだろうか、そう思いながら歩みを進めていく。アラームの音は止まない。

頭の中にずっとアラームの音が響いている。



redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「(……おかしい)」



アラームの音は次第に大きくなっていく、ぐわんぐわんと頭の中を揺らし、それは頭痛に変わっていく。

耐えきれないほどの騒音に、藍子はついに目を閉じた。













redalarm_04_kirisameseren 【???】
「目を覚ましませんねえ」

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「起きろ藍子!!ここにいたら危険だ!!」





目を覚ます。



redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「え……圭吾さん?」
「と、誰?」

そこは荒廃とした赤い世界だった。
見慣れた街並みは倒壊し、全体が廃墟のようになっている。

空は赤く染まり、まるで永遠の夕暮れだ。

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「こいつは霧雨家のヤツだよ、世恋(せれん)っつーんだ」

redalarm_04_kirisameseren 【霧雨世恋(きりさめせれん)
「どうも♪よろしくお願いしま~す♪」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「は、はあ」
「こちらこそ……、っていうか、なんなのこの状況」

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「俺にもよくわかんねえ、目が覚めたらここにいた」

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「状況は当主サマが見てくれてるらしいが……」

藍子が「当主さま?」と言えば、圭吾は親指を自身の後ろに向けた。
そこには若い男が周囲を見ており、腰には日本刀を下げている。


redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「あなたが、当主さま……?」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映(きりさめゆえ)
夕映(ゆえ)でいいですよ、お気遣いなく」

redalarm_04_kirisameseren 【霧雨世恋】
「あ!ではわたくしのことも、お気軽に世恋とお呼びください♪」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「え?あ、うん……」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「じゃなくて、一体どうしてこんなことに……」




redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「話が長くなりますが」





redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「私たちがいるこの世界は、私たちが元居た世界とは違う並行世界です」
「地球が壊滅した世界……、私たち霧雨一族は、壊滅した地球を救うために何世代にも渡って戦ってきた戦闘一族」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「前当主が亡くなった今、新たに選抜されたのが我々だということです」





redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「そ、そりゃまた……とんでもねえ話だな」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「じ、じゃあ私たちは、この世界を救うために戦えってこと?」
「そんなこと、いきなり言われても……!!」

redalarm_04_kirisameseren 【霧雨世恋】
「そもそも、戦えと言ったってなにと戦うんです?」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「それは……」






話し合いの中に、突如として獣の咆哮が遮った。
振り返れば、ワイヤーを人型に何重をも巻いたような黒い渦の異形がそこに立っていた。
幽霊のような、化け物のようなそれは、ゆっくりと藍子たちに歩み寄ってくる。




redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「……考えなくても、アレと戦えってことよね」

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「つったって武器らしきモンはなにも持ってねえぞ!?」

redalarm_04_kirisameseren 【霧雨世恋】
「あったら戦うんです?」



redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「皆さん、隠れていてください。ここは私が……!」

夕映が刀を引き抜き確実に化け物へと振り下ろした。
しかし、刃を受けても化け物にダメージが通ったように見えない。

化け物は夕映を薙ぎ払い、藍子たちを狙い走り出す。

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「ヤバい……っ!!」







redalarm_01_kirisamekasumi 【???】
「エネミーを探知した、これより排除する」




どこからともなく声が聞こえた。
次いで一陣の風が吹いたかと思えば、見知らぬ男が目の前に立っていた。
男は刀を鞘に仕舞う――化け物は、目にもとまらぬ速さで斬られ、爆風と共に消え去った。




redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「……」




redalarm_01_kirisamekasumi 【???】
「排除完了。帰還する」



redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「ちょちょちょ、ちょーーーっと待った!!」
「お、俺たちは世界を救うために来たらしいけど、きみはなんだ?」

redalarm_01_kirisamekasumi 【???】
「帰還する」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「帰ろうとするな!」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「……」
「……(かすみ)、説明してやってくれ」
「対話を許可する」

霞と呼ばれた男は夕映を見てから、一回頷く。

redalarm_01_kirisamekasumi 【霧雨霞(きりさめかすみ)
「俺もこの世界を救うために造られた」
「長時間この世界に居続けることのできないおまえたちの代わりに、ずっとここにいてこの世界を監視している」

redalarm_01_kirisamekasumi 【霧雨霞】
「霧雨一族が生み出したアンドロイドだ」

redalarm_04_kirisameseren 【霧雨世恋】
「ほほー!!アンドロイドですか!!」
「面白いですねえあなた、ところで私たちの武器とかはどうなっているんです?」

redalarm_01_kirisamekasumi 【霧雨霞】
「引継ぎ式だ。前当主から受け取れ」
「霧雨家が保管しているはずだ」

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「……もう一回霧雨家に行くしかねえ、か」
「ん?長時間いられないってことは……俺らは帰ることができんのか?」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「任務を達成したら自動的に帰還できるはずです」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「なるほど、そうだったのね……」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「っていうか、なんで選ばれたのが私たちなの?戦闘経験もなにもないんだけど」

redalarm_01_kirisamekasumi 【霧雨霞】
「それを答える権限はない」
「帰還する」


redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「あっ!!こら待てーーー!!」


redalarm_04_kirisameseren 【霧雨世恋】
「ふ~む、この世界を守るためにこれから戦う……」
「なんだかワクワクしますねえ♪」

redalarm_03_kirisamekeigo【霧雨圭吾】
「そうかぁ?おじさんちょっとしんどいぜ」

redalarm_05_kirisameyue 【霧雨夕映】
「……選ばれてしまったからには、遂行するしかありません」
「頑張りましょう、皆さん」

redalarm_02_kirisameranko 【霧雨藍子】
「本当に大丈夫かなあ……」




突如として実家が世界を守る組織だったことを知り、そして世界を救うという任務を背負う羽目になった。
果たしてうまくいくのだろうか……。
不安を胸に抱えつつ、明日霧雨家に乗り込むことを予定に組み込み、改めて帰路につくのだった。


#短編創作

戻る

CardWirth

人選センス
連れ込みNPCたちと砂月宿の話。




 ユーニスが砂月宿に来てから数日、レイニスは依頼へ赴く彼女の後姿を見送ってから隣のカウンターに座るノワールに言った。

「おまえの人選センスどうにかなんねえか?」
「なにか悪いか?」
「悪いとこしかねえよ、なんでこうも闇属性の人間ばっか連れてくるかね」
「おまえだってそこそこ闇属性のヤツ連れてくるだろ、最初に来た女の子なんて特に」
「シアは雰囲気ダークなだけで真面目で良い子なんだぞ!」
「はいはい……」

 親父、お冷注いで。と言いながら受け流す。

 実際、ノワール絡みで連れてきたのがニコルとユーニスなのだから、人選にモノ申したい気持ちもわかる。
 しかしどうも、自分が惹き付けているより、自分が惹かれているように思える。
 それは自分もまた手を汚した経験のある人間だからか、真っ直ぐに生きられなかった者同士惹かれ合うなにかがあるのか。

 まだ文句を垂れているレイニスを、ロバートが困ったように笑いながら宥めていた。
 同じく「うゆー!」という謎の泣き声を発しながらレイニスを宥めているくりまんじゅうを見て、そういえばこいつこそなんなんだという気持ちにもなる。本当になに?

「あ、ヤバい。昼飯食べたら眠くなってきた」
「それはドカ食いばたんきゅ~部ってやつだよノワール!」

 後ろからファイが謎の言葉を発してきた。





プルクラ・ルペスを破く者 ユーニス
アルクレンクは惜別の果て ロバート
くりまんじゃろと冒険者 くりまんじゃろ
Mimic ニコル
硝子月 シア


#レイニス一行

戻る

About
▼操作方法
・「カテゴリを選択」から見たいカテゴリを選んでください
・ヘッダーを横にスクロールすることで他の行き先も見れます

当サイトにおけるクトゥルフ神話TRPGの探索者は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』シリーズの二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」「新クトゥルフ神話TRPG」

無断転載、転写、複製、AI学習、URLのシェアを禁止します