No.12

一次創作

Re;dREgina 第6話
※注意※
当作品に含まれる成分表。
暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定

参考
鏡の国のアリス ルイス・キャロル
赤の女王仮説 Wikipedia
四季(ヴィヴァルディ) Wikipedia


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夏生くん、これだけは憶えててほしい

誰がなんと言おうと、きみは獣地夏生というひとりの人間だ









最上階まで辿り着き、目の前にはカードキーを差し込まなければ開かない、白い扉がある。
この中に元凶であると考えられる、ディルクロの社長がいる。


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……開けるぞ」


柊一がそう言うと、朔良と夏生は黙って頷いた。

御前から受け取ったカードキーを差し込めば、静かな電子音と共にランプが緑に光る。


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「さすが」


御前の技術力に感服しながらも、この先への不安を疼かせる。
柊一はドアノブを握りしめ、意を決して開けた。









reregi_12_es 【???】
「赤の女王仮説をご存知だろうか」

「他種族との競争の中、生き残るためには常に進化していなければならないという仮説だ」

「1973年、リー・ヴァン・ヴェーレンによって提唱された」



部屋に置かれた蓄音機から流れ出すのは、アントニオ・ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲、「四季」より冬。
第1楽章では、寒波の中身震いを起こしているような表現がなされている。

部屋の奥には3人の人間がいた。

一人は赤い髪をし、不機嫌そうに顔を歪ませている女性。
もう一人は、地面に置かれた積み木に夢中になっている。夏生らのことなど眼中にないようだ。

もう一人は、椅子に座って目を細めながらこちらを見ている。
彼は薄ら笑みを浮かべながら言った。


reregi_12_es 【???】
「我々シーカーは、元々人間によって生み出された存在」
「ある街はずれの研究所で、非人道的に行われた研究」


reregi_12_es 【???】
「生み出されたシーカーは自我を宿し」
「生き残るために、支配される側ではなく支配する側へと意識を成長させた」

「それが、私たちが起こした人間への逆襲」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「人間への逆襲……」


reregi_10_tasikku 【???】
「アタシたちは、アタシたちのやり方で種を存続させたい」

「アンタたちは、アンタたちの世界を守りたい」

「なら、和解できる道はねえってことだ」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「でも……!」
「俺は、人間の世界を守りたいよ」
「自我のあるシーカーが話し合えば、まだ和解の道だってあるかも……」


reregi_10_tasikku 【???】
「甘っちょろいこと言ってんじゃねえよ」
「その姿、おまえはレギナの血を濃く継いでるはずなんだがな」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「レギナ……?」


reregi_10_tasikku 【???】
「最初に産まれたシーカー」
「実験体の番号になぞらえて言うなら……」
「seeker-001」


その時、爆風が窓を叩いていることを柊一は察知する。
ガタガタと音を立てて揺れる窓、ますます風は強くなっていく。


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「夏生、朔良!!伏せろ!!」


そう言い終わるや否や、全貌を見渡せるほどの窓は音を立てて砕け散った。
ビルから這い上がって来たのは、巨大な図体を構え、ギョロリと目玉を覗かせるシーカーであった。

まるで皮膚の中を剥き出しにしたような赤黒い肌、牙は人間のそれより獣に近い歯並びをし、頭だけが一際大きくなっている。
一つ目のように覗かせた巨大な目玉は、確かに夏生らを捉えている。

これがシーカーの本性、本来の姿。



reregi_10_tasikku 【???】
「ホベッツ、やるぞ」

赤髪の女性は、すっかり積み木が崩された様子のもう一人に声をかける。


reregi_11_hobexxt 【ホベッツ】
「タシック!積み木が~!」

reregi_10_tasikku 【タシック】
「また買い直せばいいだろ」


reregi_10_tasikku 【タシック】
「エス様とレギナ様の悲願の達成のために」
「アタシらは貴方達の手となり足になる」


そう言ったタシックとホベッツは、シーカーの前に立つ。
シーカーは躊躇うことなく二人を飲み込み、ただでさえ異形のものだったそれは、背中からなにかが生成されるような、生み出されるような骨の砕かれる音と共に、悪魔のような翼が広がる。


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「えーっと……」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……どうします?」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「どうするもなにも……」

絶望的な状況下に、思わず言葉を失う。


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「柊一、朔良」

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「な、なんです、か」


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「俺があんな感じの姿になっても、」
「嫌いにならないでくれる?」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「は!?」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……それは」
「おまえもあの姿になることで対抗するってことか?」

reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「そう」
「さっき、コアの一部を拾ったんだ」
「これを食えば、シーカーの力を増幅できると思う」

「でも……」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……ハァ」
「安心してくださいよ」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「そりゃ、あの姿になったら正直ちょっと引くかもしれませんけど」
「中身は夏生さんでしょ?」
「夏生さんなら大丈夫」
「友達ですからね!」


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「おまえが信じるほうへ駆けろ」
「本当の進化ってヤツを見せてやれ!!」


夏生は頷く。
赤く煌めく、宝石のようなコアを口にくわえ、かみ砕く。





地面を駆け抜け、屋上から身を投げ出した。
落下する途中――夏生の心臓から閃光が発され、それは周囲を包み込む。


長い四肢と胴体、白く塗りつぶされている細胞たち。
長い胴体を包み込むほどの白い翼には、赤い目玉が何個も相手のシーカーを射抜いている。

本来の天使というものは、人間の想像を絶するほどの異形をしているらしい。

どこかで聞いたことのあるような話だが、存在するとしたら、目の前にいるものだろう。


やがて二体のシーカーはぶつかりあい、奇声を上げながら空中で戦い合う。





reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
『聞こえるか、柊一、朔良!』


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「うおおお!!びっくりしたァ!!」
「は、はい!!聞こえますよ!!」


reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
『おれもおるで!』

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「瑞稀!」


reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
『今、俺が開発したスーパーウルトラミラクルボンバーレーザーガン』
『つまりあのシーカーを倒すためのレーザーガンの調整をしてる』

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
『さすがに俺だけじゃ難航するからよ』
『柑橘の姉ちゃんに付き合ってもらってるよ』


reregi_06_misaki 【天音御前】
『あとちょっとで細かい修正が完了する』

『……』

『よし……!これでどうかな』



reregi_05_chiaki 【大槻千秋】
『さすがですね……!』

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「頼れる味方がいてよかったよ」
「いいか、撃つのはあの赤黒いほうのシーカーだ」
「白いほうは夏生だ、間違っても撃つなよ」


reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「バカ」
「撃つのはおまえだよ」


後ろを振り向けば、息を切らしながら壁に手をついている真冬がいた。
手にはケースが握られており、真冬はそれを柊一に向けて投げる。

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「っと……!」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「優れた銃の使い手じゃないのに、片方のシーカー狙って撃てるわけねーだろ」
「頼むぜ柊一」
「性能の限界でな、一発撃ったら壊れるぜ」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「んなぁ!?」

reregi_04_mahuyu 【大槻真冬】
「十分だろ」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「……ああ」

「一発あれば十分だ」









目の前のシーカーにぶつかればぶつかるほど、自分の、人間としての感覚が失われていくのを感じた。

どうしようもなく、自分は化け物で。

人間ではない、シーカーなのだと。


目の前のものを傷つけることで、自分の中のなにかが満たされていくのを感じた。
ああ、シーカーとはこうも加害性に満ちた存在だったのか。と、今になって思い知ることになった。


最初にシーカーを造りだした人間たちは、なにを考えてこんなものを生み出したのだろうか。


reregi_01_natsuo 【獣地夏生】
「(……俺は)」
「(俺は、それでも)」
「(今まで、みんながくれたものを無下にしたくない)」


世間にとって、自分の存在はいらないものかもしれない。



reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「夏生!!!!!!!」


ビルのほうを見れば、柊一が銃を構えて夏生を見ていた。
夏生は心で頷き、目の前のシーカーに飛び掛かる。

必然的に目玉をビルの屋上へと向けてしまったシーカーは、遠くで笑う柊一を、確かに見た。


reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「落ちろ……!!」













ディルクロのそばで、赤黒い天使が落ちていった。


それは紙が剥がれていくみたいにボロボロと剥がれ落ち、やがて塵となって消えていく。
その中から現れたのは、夏生と瓜二つの人型だった。


彼は夏生と同じ顔をしながら、同じ目はしていなかった。
どこまでも虚ろで、なにも映さない目。

夏生はその姿を見ながら、彼が本当に望んでいたのは、人間を支配することだったのだろうか?と逡巡する。






――その頃、ビルの屋上で聞こえたのは一発の銃声。
それは柊一に被弾することはなかったが、持っていた銃を落とすよう掠めたものになった。

reregi_03_sakura 【明星朔良】
「柊一さん!!」

朔良が柊一に駆け寄る。
撃った人物は、あの時シーカーに食われていなかった一人……エスと呼ばれる、ディルクロの社長だった。


reregi_12_es 【エス】
「長かった実験も、失敗という結果に終わってしまったか」

reregi_02_syuichi 【鈴鹿柊一】
「なに……?」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「まさか」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「あんた、シーカーじゃないんですか」



reregi_12_es 【エス】
「そうだよ、私はシーカーではない」
「ただの人間、シーカーを開発していた研究員のひとりだ」

「レギナは私の成果の第一番として、よく出来たシーカーだった」
「でもまさか、seekar-002もあそこまでよく出来たものだったとは」


reregi_03_sakura 【明星朔良】
「……夏生さんは、もうあんたらに縛られる立場じゃない」


reregi_12_es 【エス】
「そうかな」
「化け物はどこまで行っても化け物だ」
「人間と違うと自覚してしまった以上」
「もう元の状態に戻れないと思うよ」



無数の足音が聞こえる。
部屋には瑞稀、千秋、御前。そしてついてくるようにして、警官たちが周囲を取り囲んだ。


reregi_07_mizuki 【敷織瑞稀】
「武器を捨てろ!違法研究、及び大量殺人の容疑者として逮捕する!」

エスは表情もなくそれを見、諦めたように武器を捨てる。
ほどなくして夏生も柊一たちと合流し、事件は一旦の収束を迎えることとなった。





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