ディープ・ブルー
by間宮
はなまる屋
概要
Bluesky
- Category -
イラスト
(5)
テキスト
(6)
キャラクター
(9)
メインストーリー
(6)
サブストーリー
(0)
DB創作メモ
No.15
テキスト
,
メインストーリー
Mother's call
ディープ・ブルー 第1話
20XX年、地球は
堕喰
(
だくろ
)
と呼ばれる異形の化け物によって存続の危機を迎えていた。
しかし、少数の生き残った人類は抵抗を諦めなかった。東京を中心とし、対堕喰殲滅組織「ディープ・ブルー」が結成され、各地に派生組織が建てられている。
ディープ・ブルーに属する部隊のひとつ、「春日井班」。
メンバーは
春日井
(
かすがい
)
京介
(
きょうすけ
)
をリーダーとし、副リーダーにディープ・ブルー隊員養成所の講師も務める
桃李
(
とうり
)
ジク。そしてあらゆる任務を成功させたと言われているベテランの
桐ケ谷
(
きりがや
)
夾
(
きょう
)
。更に派生組織「レッドライン」からの臨時メンバーとして呼ばれた
小清水
(
こしみず
)
正太朗
(
しょうたろう
)
。
春日井班は堕喰研究チームである「
神無木
(
かんなぎ
)
班」に呼ばれ、とある一室まで出向くことになった。
◇
20XX年 9月18日 13:12 神無木班のオフィス
春日井班は全員揃って神無木班のオフィスに来ていた。
ソファに座り、それぞれが待機している。その様子をシステムエンジニアである
由自
(
ゆうじ
)
カナコは腕を組みながら眺め、そしてひとつため息をついた。
由自「悪いわね……。神無木のやつ、まだ準備に手間取ってるみたい」
春日井「あ、いえ……。大丈夫です」
小清水「あはは、まあ色々あるんでしょうよ。こっちはゆっくり待つとします」
そうしていると、ようやく扉が開き、そこから
神無木
(
かんなぎ
)
雲雀
(
ひばり
)
が現れる。
神無木「やあ諸君!!元気だろうか!!オレは元気だ!!」デッケー声
桐ケ谷「……」キーン
桃李「うっ……は、は~い。元気ですよ、神無木さんもお元気そうで……」うるせ~……
神無木「うむ!!なら良し!!」
そう言って、神無木はタブレットを開きながら説明を開始する。
神無木「閉鎖地帯11区にて堕喰の存在が確認された。諸君には11区に向かい、堕喰を撃破してもらいたい」
神無木「ここまでの指示はいつも通りだが、注意点がある」
神無木「近頃、堕喰の凶暴化が進んでいる。ただでさえ凶暴なヤツだがな、それがより酷くなっているといった様子だ」
春日井「凶暴化……?」
神無木「端的に言えば、今までより出現率が高くなっている」「他の班の出撃数も、先月と比べれば大幅に上がっているんだ」
由自「それがあってか、どんどん危険地帯とみなされて閉鎖されている地区の数も増えているわ」「おかげで衣食住に困っている人への供給も追いつかない」
由自「もちろん、そういう人をうちの管理人は見捨てるわけもない。おかげでディープ・ブルーの食糧も圧迫されているんだけどね」
小清水「……」
小清水「(凶暴化か……)」
小清水は今問題視されている堕喰の凶暴化が、春日井が暴走し部下を喰い殺した事件となにか似ている部分があるのではないかと勘付く。
神無木はそこまで説明を済ませると、「では諸君、あとは任せたよ」と言い、出撃許可を下す。
それを受け取り、春日井班は目的地まで出向くことになる。
◇
20XX年 9月18日(同日) 14:56 危険閉鎖地帯11区
目的地に到着すれば、目標の堕喰はすぐに発見された。
辺りは朽ちて破壊され尽くした住宅街が広がっており、戦闘をするにはこちらが有利になるだろうと予想できる。
春日井が他のメンバーにアイコンタクトを送る。全員が頷き、武器を構えた――瞬間だった。
???「春日井班なんかに手柄渡してたまるかよ!!」
聞き馴染みのない声が背後から聞こえた。と思えば、複数人のディープ・ブルー所属の隊員たちが戦場へと足を踏み入れる。
春日井「なっ……!?」
桃李「な、なによあんたたち!?」
隊員A「なあに、俺たちもこの近くの堕喰の討伐任務を与えられたんだよ」「そっちが完了したから、ついでにおまえらの手柄を奪ってやろうってワケ」
隊員B「まあ黙って見てなって!新設された班より、連携の取れる班の方が優秀だってことを見せつけてやる!」
そう言って意気揚々と立ち向かう隊員たち。桃李は彼らを見て頭を抱えながらため息をつく。
そして、そんな彼らとは一歩遅れて来た隊員がいた。
彼は春日井のほうを一瞥し、それから飛び込んだ隊員たちを見る。
影狗
(
かげいぬ
)
「……連携の取れた班だと?笑わせる」
春日井「……違うのか?」
影狗「他班が争った後のトドメを攫うのが上手いだけのヤツらだ」
影狗「大方は他班が体力を削ってくれたおかげだ、自分たちは一番美味い場所だけ盗っていく」
影狗「それを実力だと勘違いしていれば―― どうなるかはわかるだろう」
そう言う男の目は、軽蔑に満ちていた。
春日井はそんな彼の目を見、それから飛び込んだ隊員たちを見る。見れば連携など取れているようには見えない。凶暴化が進んだ堕喰の手には負えず、彼らはあっという間に喰らい尽くされてしまった。
影狗「おまえらが与えられた仕事だろう」
影狗「俺は知らん。帰る」
そう言って、彼は春日井に背を向ける。
春日井「……おまえの名はなんという?」
影狗「教える義理があるか?」
春日井「報告書におまえの名を書くためだ、巻き込まれた存在だとな」
影狗「……」
桃李「あら、彼は無罪放免なのね」
小清水「ま、馬が合わないカンジっぽいんでね」
小清水「あんなヤツらと一緒にされちゃかなわんでしょ」
桐ケ谷「……」そうかな……そうかも……
影狗「……」それぞれを一瞥しつつ
影狗「
影狗
(
かげいぬ
)
吠曉
(
はいぎょう
)
だ」
影狗と名乗った男性はそう名乗ってから去って行く。
小清水「なんかやる気削がれちゃいましたけど、任務は完了してませんし、やりますか」
桐ケ谷「……そうですね、やりましょう」
そう言って、春日井班もそれぞれ武器を構え、飛び込んだ。
◇
かくして目標を倒し、任務を完了した春日井班は帰投することになる。
彼らの仕事を神無木は称え、春日井は任務を成功したという報告書を出すことになる。
途中乱入してきた班についての名簿を見る。そこには確かに影狗 吠曉という名前が記載されていた。
春日井「……」
春日井は影狗の目を思い出す。
何故か彼は、どこか自分と似ている気がした。
そうして報告書を出し終え、それぞれが自室に戻る。
その晩、春日井は夢を見た。
???「――」
???「――、」
幼い子供のような声。
それは歌のようにも聞こえた。
何故だかひどく懐かしい気持ちになり、そこへと手を伸ばすように――。
そこで、目を覚ました。
そこは変わらず自室が広がっており、奇妙な夢を見たものだと後ろ頭を掻く。
朝食を取るためにある程度の準備を整え、自室を出る。
隊員「なあ、知ってるか?」「
花道
(
かどう
)
霞
(
かすみ
)
ってヤツ、殉職したらしいぜ」
隊員「え、そうなのか?」
春日井はその会話に、一瞬足を止める。
春日井「(そう、だったのか)」
小清水「春日井さーん」
春日井「……小清水さん、おはようございます」
小清水「どうしたんです?浮かない顔して」
春日井「……いえ」「知らないうちに、仲の良かった同僚が……殉職したそうで」
小清水「……ああ」「まあ、戦場なんでね。そういうこともありますよ。……悲しいことにね」
春日井「……そうですね」
小清水「ま、とりあえず腹が減ってはなんとらです」
小清水「飯食いに行きましょ」
春日井「はい」
小清水「(……花道 霞か)」
小清水は、少し前の事件を思い出す。
春日井が堕喰として暴走し、部下を喰い殺した事件。
あれはディープ・ブルーの管理人 ジン・ブラッドレイにより隠蔽され、殺害された隊員――花道 霞は堕喰との戦闘で殉職したということになっている。
春日井はなにも知らない。しかし、隠し通さねばならない。
小清水は春日井と任務をこなすにつれ、彼の持っている強い魂と熱い正義心に、いつしか心を打たれるようになっていたのだ。
小清水「(なにも知らないままでいてくれよ)」
そうして二人は食堂へと向かった。
2024.11.17
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20XX年、地球は堕喰と呼ばれる異形の化け物によって存続の危機を迎えていた。
しかし、少数の生き残った人類は抵抗を諦めなかった。東京を中心とし、対堕喰殲滅組織「ディープ・ブルー」が結成され、各地に派生組織が建てられている。
ディープ・ブルーに属する部隊のひとつ、「春日井班」。
メンバーは春日井 京介をリーダーとし、副リーダーにディープ・ブルー隊員養成所の講師も務める桃李 ジク。そしてあらゆる任務を成功させたと言われているベテランの桐ケ谷 夾。更に派生組織「レッドライン」からの臨時メンバーとして呼ばれた小清水 正太朗。
春日井班は堕喰研究チームである「神無木班」に呼ばれ、とある一室まで出向くことになった。
◇
20XX年 9月18日 13:12 神無木班のオフィス
春日井班は全員揃って神無木班のオフィスに来ていた。
ソファに座り、それぞれが待機している。その様子をシステムエンジニアである由自 カナコは腕を組みながら眺め、そしてひとつため息をついた。
由自「悪いわね……。神無木のやつ、まだ準備に手間取ってるみたい」
春日井「あ、いえ……。大丈夫です」
小清水「あはは、まあ色々あるんでしょうよ。こっちはゆっくり待つとします」
そうしていると、ようやく扉が開き、そこから神無木 雲雀が現れる。
神無木「やあ諸君!!元気だろうか!!オレは元気だ!!」デッケー声
桐ケ谷「……」キーン
桃李「うっ……は、は~い。元気ですよ、神無木さんもお元気そうで……」うるせ~……
神無木「うむ!!なら良し!!」
そう言って、神無木はタブレットを開きながら説明を開始する。
神無木「閉鎖地帯11区にて堕喰の存在が確認された。諸君には11区に向かい、堕喰を撃破してもらいたい」
神無木「ここまでの指示はいつも通りだが、注意点がある」
神無木「近頃、堕喰の凶暴化が進んでいる。ただでさえ凶暴なヤツだがな、それがより酷くなっているといった様子だ」
春日井「凶暴化……?」
神無木「端的に言えば、今までより出現率が高くなっている」「他の班の出撃数も、先月と比べれば大幅に上がっているんだ」
由自「それがあってか、どんどん危険地帯とみなされて閉鎖されている地区の数も増えているわ」「おかげで衣食住に困っている人への供給も追いつかない」
由自「もちろん、そういう人をうちの管理人は見捨てるわけもない。おかげでディープ・ブルーの食糧も圧迫されているんだけどね」
小清水「……」
小清水「(凶暴化か……)」
小清水は今問題視されている堕喰の凶暴化が、春日井が暴走し部下を喰い殺した事件となにか似ている部分があるのではないかと勘付く。
神無木はそこまで説明を済ませると、「では諸君、あとは任せたよ」と言い、出撃許可を下す。
それを受け取り、春日井班は目的地まで出向くことになる。
◇
20XX年 9月18日(同日) 14:56 危険閉鎖地帯11区
目的地に到着すれば、目標の堕喰はすぐに発見された。
辺りは朽ちて破壊され尽くした住宅街が広がっており、戦闘をするにはこちらが有利になるだろうと予想できる。
春日井が他のメンバーにアイコンタクトを送る。全員が頷き、武器を構えた――瞬間だった。
???「春日井班なんかに手柄渡してたまるかよ!!」
聞き馴染みのない声が背後から聞こえた。と思えば、複数人のディープ・ブルー所属の隊員たちが戦場へと足を踏み入れる。
春日井「なっ……!?」
桃李「な、なによあんたたち!?」
隊員A「なあに、俺たちもこの近くの堕喰の討伐任務を与えられたんだよ」「そっちが完了したから、ついでにおまえらの手柄を奪ってやろうってワケ」
隊員B「まあ黙って見てなって!新設された班より、連携の取れる班の方が優秀だってことを見せつけてやる!」
そう言って意気揚々と立ち向かう隊員たち。桃李は彼らを見て頭を抱えながらため息をつく。
そして、そんな彼らとは一歩遅れて来た隊員がいた。
彼は春日井のほうを一瞥し、それから飛び込んだ隊員たちを見る。
影狗「……連携の取れた班だと?笑わせる」
春日井「……違うのか?」
影狗「他班が争った後のトドメを攫うのが上手いだけのヤツらだ」
影狗「大方は他班が体力を削ってくれたおかげだ、自分たちは一番美味い場所だけ盗っていく」
影狗「それを実力だと勘違いしていれば―― どうなるかはわかるだろう」
そう言う男の目は、軽蔑に満ちていた。
春日井はそんな彼の目を見、それから飛び込んだ隊員たちを見る。見れば連携など取れているようには見えない。凶暴化が進んだ堕喰の手には負えず、彼らはあっという間に喰らい尽くされてしまった。
影狗「おまえらが与えられた仕事だろう」
影狗「俺は知らん。帰る」
そう言って、彼は春日井に背を向ける。
春日井「……おまえの名はなんという?」
影狗「教える義理があるか?」
春日井「報告書におまえの名を書くためだ、巻き込まれた存在だとな」
影狗「……」
桃李「あら、彼は無罪放免なのね」
小清水「ま、馬が合わないカンジっぽいんでね」
小清水「あんなヤツらと一緒にされちゃかなわんでしょ」
桐ケ谷「……」そうかな……そうかも……
影狗「……」それぞれを一瞥しつつ
影狗「影狗 吠曉だ」
影狗と名乗った男性はそう名乗ってから去って行く。
小清水「なんかやる気削がれちゃいましたけど、任務は完了してませんし、やりますか」
桐ケ谷「……そうですね、やりましょう」
そう言って、春日井班もそれぞれ武器を構え、飛び込んだ。
◇
かくして目標を倒し、任務を完了した春日井班は帰投することになる。
彼らの仕事を神無木は称え、春日井は任務を成功したという報告書を出すことになる。
途中乱入してきた班についての名簿を見る。そこには確かに影狗 吠曉という名前が記載されていた。
春日井「……」
春日井は影狗の目を思い出す。
何故か彼は、どこか自分と似ている気がした。
そうして報告書を出し終え、それぞれが自室に戻る。
その晩、春日井は夢を見た。
???「――」
???「――、」
幼い子供のような声。
それは歌のようにも聞こえた。
何故だかひどく懐かしい気持ちになり、そこへと手を伸ばすように――。
そこで、目を覚ました。
そこは変わらず自室が広がっており、奇妙な夢を見たものだと後ろ頭を掻く。
朝食を取るためにある程度の準備を整え、自室を出る。
隊員「なあ、知ってるか?」「花道 霞ってヤツ、殉職したらしいぜ」
隊員「え、そうなのか?」
春日井はその会話に、一瞬足を止める。
春日井「(そう、だったのか)」
小清水「春日井さーん」
春日井「……小清水さん、おはようございます」
小清水「どうしたんです?浮かない顔して」
春日井「……いえ」「知らないうちに、仲の良かった同僚が……殉職したそうで」
小清水「……ああ」「まあ、戦場なんでね。そういうこともありますよ。……悲しいことにね」
春日井「……そうですね」
小清水「ま、とりあえず腹が減ってはなんとらです」
小清水「飯食いに行きましょ」
春日井「はい」
小清水「(……花道 霞か)」
小清水は、少し前の事件を思い出す。
春日井が堕喰として暴走し、部下を喰い殺した事件。
あれはディープ・ブルーの管理人 ジン・ブラッドレイにより隠蔽され、殺害された隊員――花道 霞は堕喰との戦闘で殉職したということになっている。
春日井はなにも知らない。しかし、隠し通さねばならない。
小清水は春日井と任務をこなすにつれ、彼の持っている強い魂と熱い正義心に、いつしか心を打たれるようになっていたのだ。
小清水「(なにも知らないままでいてくれよ)」
そうして二人は食堂へと向かった。