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雨が降っている。



騒々しいほど降りしきる雨の槍。濡れないようにしてシャッターが閉まった見知らぬ店の前に駆け込む。
雨粒が付着した上着を払って、これはしばらく止まないなと桐ケ谷はため息をついた。

桃李「ごめんなさい、ちょっと入らせてもらいますね」
桐ケ谷「あ、ああ。どうぞ」

そう言って入ってきたのは桃色の髪をした女性だ。
彼女はぱたぱたと走って、申し訳なさそうに一言申し出てから桐ケ谷の隣に立った。

桃李「ひどい雨ですね」
桐ケ谷「そう、ですね……」
桃李「一昨日も昨日も雨だったから、今日くらいは落ち着くものかと思っていたのだけど。そんなこと全然ありませんでしたね」
桐ケ谷「はあ……(よく喋るな……)」嫌味ではない
桃李「あら、ごめんなさい。少し喋りすぎっちゃったかしら」
桐ケ谷「あ、い、いえ……自分が人見知りなんです」
桃李「そうなの?ふふ、大柄な人だからどっしり構えてるものかと思っていたけれど」くすくす
桐ケ谷「……よく言われます」

桃李「お仕事はなにをされてるんです?」
桐ケ谷「……」少し悩んで「……一応、警察の者でして」
桃李「そうなの!?あらあら、刑事さんとは知らずに、失礼なこと言っちゃったかもしれないわ」「聞いておいてこちらだけ言わないのはフェアじゃないわよね、私は中学教師をやってます。一応、これでも体育担当なんですよ」
桐ケ谷「そ、そうなんですか?体育って……大変でしょう、声を出すことも多いでしょうから」
桃李「案外楽しいですよ。それに、自分で言うのもなんだけれど、笑顔が取り柄だから生徒から人気もあるの」にっこり!
桐ケ谷「……確かに、素敵な笑顔です」言ってからハッとする「あ、いえ、これは下心とかはなくて……その……」
桃李「予防線を貼ると余計に見えますよ?……ふふ、冗談です」

桃李「……雨も止んできたし、私はそろそろ行きますね。」「あ、お名前お聞きしてもいいかしら?」
桐ケ谷「桐ケ谷です、桐ケ谷夾といいます」
桃李「ありがとう、桐ケ谷さん。私は桃李ジク。また会えたらいいわね」
桐ケ谷「ええ、また」

桃李は笑顔を浮かべ、少し手を振ってから去っていく。その様子を、桐ケ谷は手を振り返して見ていた。
すぐ後に桐ケ谷も家を目指して屋根の下から出ていく。しばらくして、同業者から仕事の連絡が来るのはまた別の話。






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桃李(とうり) ジク ▼詳細はここ
体育教師。朗らかで穏やかな印象を受けるが、割と勝気で負けん気が強い。ゾンビパニック系の映画に出たらウェディングドレスを破けるくらいの男気はある。



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桐ケ谷 夾(きりがや きょう) ▼詳細はここ
捜査一課の刑事。大柄な体格と強面とは裏腹に、押しに弱く誰に対しても敬語を使う腰の低さ。しかし正義感は人一倍強く、誰よりも自身を信用している。

TRPG

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