テキスト
文章系統の作品はこちら
概要
イラスト
テキスト
ゲーム
位宅
語り
雑記
呟き
まみったー
少女のわがまま
男×女/短編/全年齢
小さな手のひらから伸びる指は相応に短く、指先から目的の本に届くには遠目からでもかなりの距離があった。
木材でできた足場を使ってなお届いておらず、そんな彼女を
柊木
(
ひいらぎ
)
一真
(
かずま
)
は見ていた。
しばらく奮闘を続けていた彼女はぐぐっとさらに身体を伸ばして、脱力する。降参したのだろう。一真はしばらく助けるかどうか悩んでから、彼女に声をかける。
「
撫子
(
なでしこ
)
さん」
撫子
(
なでしこ
)
無題
(
むだい
)
。撫子と呼ばれた彼女は一真のほうを見上げる。宝石なような輝きを持った目が一真を射抜く。
「あの」躊躇ってから声を絞り出す。「俺が取りましょうか」
「いいの?」
「はい」
一真は持ち前の180cmの高身長で軽く本を取り出す。それを撫子に手渡すと、撫子は柔らかな微笑みで「ありがとう」と言った。
「でも、戻してもらうときにまた助けてもらわなきゃ」
「それは……全然構いませんが」
「一緒にいてくれるの?」
「いていいんですか?」
「うーん」彼女はしばし思考する様子を見せて「じゃあ、いなきゃだめ」
「いなきゃだめですか」
「うん」
撫子は楽しそうに笑う。一真の表情が図らずも困ったように歪む。彼女のわがままに振り回されるようでいて、自分はそれを享受している。いや、振り回してくれているのだと思っている。
少女のわがまま、どうかそのわがままを受け止めるのが自分だけであってほしい。
「柊木くん、本読まないの?」
「……読みます」
適当にその場にあった分厚い本を手に取る。しかし手に取ったのは良いものの、意識は彼女に向けられたままで、頭には入ってこないのに。
彼女の小さな手が一真の服の裾を掴み、引っ張った。
一次創作
2024.12.29
No.15
一覧に戻る
無断転載・転写・URLのシェア・晒し行為など一切を禁止します
小さな手のひらから伸びる指は相応に短く、指先から目的の本に届くには遠目からでもかなりの距離があった。
木材でできた足場を使ってなお届いておらず、そんな彼女を柊木 一真は見ていた。
しばらく奮闘を続けていた彼女はぐぐっとさらに身体を伸ばして、脱力する。降参したのだろう。一真はしばらく助けるかどうか悩んでから、彼女に声をかける。
「撫子さん」
撫子 無題。撫子と呼ばれた彼女は一真のほうを見上げる。宝石なような輝きを持った目が一真を射抜く。
「あの」躊躇ってから声を絞り出す。「俺が取りましょうか」
「いいの?」
「はい」
一真は持ち前の180cmの高身長で軽く本を取り出す。それを撫子に手渡すと、撫子は柔らかな微笑みで「ありがとう」と言った。
「でも、戻してもらうときにまた助けてもらわなきゃ」
「それは……全然構いませんが」
「一緒にいてくれるの?」
「いていいんですか?」
「うーん」彼女はしばし思考する様子を見せて「じゃあ、いなきゃだめ」
「いなきゃだめですか」
「うん」
撫子は楽しそうに笑う。一真の表情が図らずも困ったように歪む。彼女のわがままに振り回されるようでいて、自分はそれを享受している。いや、振り回してくれているのだと思っている。
少女のわがまま、どうかそのわがままを受け止めるのが自分だけであってほしい。
「柊木くん、本読まないの?」
「……読みます」
適当にその場にあった分厚い本を手に取る。しかし手に取ったのは良いものの、意識は彼女に向けられたままで、頭には入ってこないのに。
彼女の小さな手が一真の服の裾を掴み、引っ張った。