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呟き
飛んで火にいる冬の虫
#砂の月を目指して
俺は自分のことを蛾だと思う。
光るものに釣られて、それが大きな炎だと気づいていない、哀れでちっぽけな虫。
それが、ノワールが自分に下す評価だ。
街中はすっかり冬に彩られて、白い雪が街を覆い尽くしている。
歩けば雪を踏み潰す音が聞こえて、息を吐けば白いもやが目の前を通り過ぎる。
周囲を見渡せば、雪を喜ぶ子供たちが思い思いに雪を使った遊びをしていた。
見ればあちこちに雪だるまがある。しっかり作られて感心するものもあれば、不器用だが温かみを感じれるものもある。
そのまま街を歩いて行って、自分たちが泊っている宿へと辿り着く。
そこには、また雪だるまを作っている男がひとり。
「おっ!おかえり、ノワール!」
レイニスはぱっと表情を明るくしてこちらを見る。
「ただいま。なにしてるんだ?」
「なにしてるって、見りゃわかるだろ。雪だるま作ってんの!」
「俺が聞きたいのは」
「成人にもなってひとりでなにしてるんだってことだ」
「なんだと~……」
「わかんねえやつだな」
「年齢に縛られて遊ぶ楽しさすら忘れたら悲しいだろ!」
「普段ちゃんとしてるんだから」
「こういうときくらい遊んだっていいだろ?」
「ちゃんとしてるかなあ」
「はぁ~!?」
こういうとき、レイニスには縛るものがなくていいなと思う。
縛ろうとしてもその場から全て叩き切って前に進んでいく。
いや、縛るものが燃えて灰になっていくのほうが正しい。
いつだって燃えているような男だ、だからなんの障害も効かないし、人々は明かりに釣られて近づいていく。
その時に気付くのだ、その明かりは炎で、容易く触れられるものではないと。
レイニスにとって、自分はふさわしくない。
「なんか考えてるな」
「ん?」
「う~ん……」
「レイニスって暖房効果があるなって……」
「ど、どういうこと!?」
「熱い男ってこと?俺が」
「正解」
一次創作
2025.12.2
No.44
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俺は自分のことを蛾だと思う。
光るものに釣られて、それが大きな炎だと気づいていない、哀れでちっぽけな虫。
それが、ノワールが自分に下す評価だ。
街中はすっかり冬に彩られて、白い雪が街を覆い尽くしている。
歩けば雪を踏み潰す音が聞こえて、息を吐けば白いもやが目の前を通り過ぎる。
周囲を見渡せば、雪を喜ぶ子供たちが思い思いに雪を使った遊びをしていた。
見ればあちこちに雪だるまがある。しっかり作られて感心するものもあれば、不器用だが温かみを感じれるものもある。
そのまま街を歩いて行って、自分たちが泊っている宿へと辿り着く。
そこには、また雪だるまを作っている男がひとり。
レイニスはぱっと表情を明るくしてこちらを見る。
こういうとき、レイニスには縛るものがなくていいなと思う。
縛ろうとしてもその場から全て叩き切って前に進んでいく。
いや、縛るものが燃えて灰になっていくのほうが正しい。
いつだって燃えているような男だ、だからなんの障害も効かないし、人々は明かりに釣られて近づいていく。
その時に気付くのだ、その明かりは炎で、容易く触れられるものではないと。
レイニスにとって、自分はふさわしくない。