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※注意※当作品に含まれる成分表。暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定
一次創作 2025.9.12 No.34
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☆☆☆
誰もいなくなった研究室に、培養槽と機械の音だけが鳴っている。
培養槽に入れられている、人間の形をしたもの。あるいはモンスターや獣の形をしたもの。
その中に既に培養槽から出され、機械の椅子に座らされている個体があった。
頭に付けられた制御装置がピーという小さな音を鳴らし、停止する。
個体が目を覚ます。
周囲を見渡し、まだハッキリとしない意識のまま持ち上げた片手が頭の制御装置に触れる。
自身の状況をうまく呑み込めない。それでも異質なことは理解できた。
ふと、制御装置以外にも首に札が付けられていることに気付く。
その札には「seeker-002」と書かれていた。
出口を探すために部屋を出た彼は、その後監視カメラに映ったことで追われることになる。
☆☆☆
それからどれほどの時間が経ったかはわからない。
茂みから出た彼は、見慣れない道路に出ていた。
行き交う人々に思わず驚いてしまうが、忙しいのか或いは関わらないようにするためか、誰も彼を気にしなかった。
自身を追う人間もいないことの安心感からか、一気に疲労が襲い掛かる。
腹から聞こえる空腹を訴える声を聞きながら、彼は倒れ込んだ。
☆☆☆
目を覚ますと、またもや知らない場所だった。
覗き込んでくる顔は鮮やかなオレンジをした髪の女性で、彼女は優しく微笑むとそばに白湯を置く。
~ご飯ができた~
脳裏に「seeker-002」という文字が浮かぶ。
さすがにこれを名乗るわけにはいかない。
そうして名の無かった個体は、獣地 夏生として生きることになる。
☆☆☆☆
それから数ヶ月。
夏生は御前から仕事を教わり、今ではそれなりに充実した日々を送っていた。
常連客ということもあり、十日ともよく会う仲になっていた。
その楽しい日々も、ある殺人事件をきっかけに崩壊する。
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