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※注意※当作品に含まれる成分表。暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定
一次創作 2025.9.19 No.38
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全面的に白を基調とした建物。
無駄をそぎ落としたシンプルなデザインに、洒落たフォントの会社のロゴが似合っている。
☆☆☆
受付嬢に話せば、彼女は「お待ちしておりました」と頭を下げる。
休憩できる場所を探して歩いていると、曲がり角に来たところで夏生が誰かにぶつかる。
向こうは走って来ていたようで、互いに尻餅をついてしまった。
ぶつかった相手は夏生の顔を見て目を見開く。
その名に、夏生だけではなく柊一と朔良も表情がこわばる。
柊一の無線から、瑞希の焦った声が響く。
怪しげな男から視線を逸らさないまま「わかった」と応答した柊一は、男を置いて出口へ歩き出す。
見逃されたと安心したのか、男はすぐ様その場から逃げ出す。
☆☆☆
現場へ向かう。
そこは人通りの多い交差点だ。今までのシーカー事件は人通りの少ない場所に出るのが常だった。
それが急に、多くの人間に目撃された。
既に周囲は多くの警官がおり、避難と射撃を続けていた。
避難誘導を続けていた瑞稀が柊一らに気づき、駆け寄る。
一言で表すなら、モンスターだと思った。
攻撃性を形にしたそのもの。
見た者の正気を削り取るようなその姿は、人に恐怖を植え付けるのには十分だった。
真冬は持っていた拳銃を柊一に渡す。
その拳銃は、子供向けの玩具売り場で売っているようなポップな形をしていた。
柊一は息を吐いて、シーカーに銃口を向ける。
そして引き金を引いて、その銃弾は真っ直ぐにシーカーの頭部を貫いた。
――しかし。
その開いた頭部から見えた真っ赤な血は、次第に周囲に巻き散らされていく。
赤い血はみるみるうちに地面を真っ赤に染め上げる。紙に染み込むコーヒーのように、建物にも手を伸ばす。
いつしか視界には赤しか映らなくなっていた。
白い雲は黒へ、青い空は赤へ、太陽は黒くぽっかりと穴を空け、いつしかそこにあったのは皆が知る世界ではない。
彼らの理解が追い付く前に、あちらこちらから絶叫が上がる。
地面から這い上がるシーカーが、人を襲っているのだ。
真冬が銃を与えなければ、柊一が当てなければよかったのか。
そう考える皆の思考を止めたのは夏生の声だ。
高らかに笑う声の向こうに、見知った顔が彼らを見据えていた。
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