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※注意※当作品に含まれる成分表。暴力/流血/倫理観の欠如/人外化/年齢が非常に若い刑事などのファンタジー設定
一次創作 2025.12.18 No.49
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「お願いします、社長に会わせてください!」
「緊急事態なんですよ」
「どういう意味か説明していただかないと……!」
「そ、そうは言われましても」
「社長からは誰も通すなと……」
ディルクロ社内、大槻千秋が受付嬢に対し必死に詰め寄っている。
社内は混沌としており、慌ただしく社員が動き回り、または逃げ場所を探そうとしている。
そんな中、千秋を探しに来た真冬がディルクロ社に訪れた。
「千秋!!」
「おまえなにしてんだ、こんなところで……」
「どうもこうも」
「シーカーについて社長から話を聞かないと」
「よくわからないけど、ディルクロ社がシーカーに関わってるなら……」
「今起こってることだって、なにか知ってるかもしれない」
「だからって一人でディルクロに行くなよ!」
「もしそうだとしたら、相手になにされるかわかったもんじゃ……」
「う、うわあああッ!!」
「ば、化け物!!」
「誰か助けてぇ!!」
「な、なんですか、あれは……!」
「あ、あれが……シーカー……?」
ディルクロ社内から突如現れたシーカーが、周囲の物品や壁を破壊しながら歩いてくる。
そのシーカーは、いくつも人間を飲み込むように取り込み、人間たちで形を作っている異様な化け物だった。
千秋にはその顔に見覚えがあった。
かつてヴィルトゥスで働き、そしてディルクロに引き抜かれていった社員たちだ。
――一方で、真冬にも見覚えのある顔がある。
「……十日」
飲み込まれたシーカーの中に、この事件の発端となった人物。
松岡十日の姿があった。
☆☆☆
夏生たちはディルクロに到着する。
しかし彼らを出迎えたのは、恐ろしいほど静かなエントランス。そして、何者かが暴れまわったような荒れた光景だった。
「まさか、シーカーがディルクロの中に……」
「さ、さっきから真冬さんと連絡つかないんですけど……!」
「まさかシーカーにやられちゃったんじゃ……」
「あっ!!」
その時、走ってくる音が聞こえた。
次いで現れたのは、ヴィルトゥスの社長 大槻千秋の姿だ。
彼はぜえはあと息を乱し、そして柊一にしがみつく。
「た、助けてください!!」
「兄さんが……兄さんが今シーカーと戦ってて……!!」
「なに……!?」
「奥の倉庫にいます!!」
「こ、このままだとシーカーにやられてしまう……!」
「わ、わかりました!」
「社長はとにかく安全な場所に隠れて!」
☆☆☆
「真冬さん!大丈夫……、」
夏生らは倉庫まで辿り着く。そしてその異様なシーカーを見て言葉を失くした。
「……十日!?なんで……」
「おせえぞおまえら!」
「見た感じ、こいつの原動力となるコアがあるらしいんだが」
「人間が覆い隠すみたいに集まってて撃てねえ!」
「この人間たちって、生きてるんですか……!?」
「多分生きてる」
「十日も生きてる……おそらくだけど」
「シーカーに繋がれて生命力が復活したんだろうな」
シーカーは腕を振り上げ、夏生ら目掛けて振り下ろす。
「うわあっ!!」
「チッ……!」
「コアをなんとかすりゃいいんだな!?」
「なんとかすりゃいいんでしょうけど、なんともできないから困ってるんでしょ!」
シーカーの猛攻は続く。
棚が倒され、それは真冬が避けた先目掛けて落ちてくる。
頭上が暗くなり、真冬は限界は悟り目を瞑る。
「真冬さん!!!!」
……しかし、いつまで経っても衝撃は訪れない。
恐る恐る目を開ければ、驚くことにシーカーが真冬を庇っていた。
「間一髪ってやつだな、真冬」
「十日……!?」
「おまえ、意識あるのか!?」
「どうやら、このシーカーは全員と意識を共有してるらしい」
「だから俺たちが眠っている必要があったんだ」
「動きを邪魔されないようにね」
「俺が核を開く」
「けど意識を保つだけで必死だ」
「一発で打ち抜いてくれよ、柊一」
「……撃ったらおまえはどうなる」
「さあ」
「もう一度死ぬんじゃないかな」
「十日さん……」
「夏生くん、これだけは憶えててほしい」
「誰がなんと言おうと、きみは獣地夏生というひとりの人間だ」
「御前が名前を与えてくれたのなら、きみはそれだけで人間だよ」
十日がそう言うと、コアを取り囲んでいた人間たちは次々に腕を下ろし、開かれるようにして中身を曝け出す。
そこには人間の心臓のように、赤く脈打つコアがあった。
「当たれ……!」
柊一は、真冬から受け取った銃を構え――目の前のコア目掛けて撃ち抜く。
それは照準がブレることなく、真っ直ぐにコアをぶち抜いた。宝石が砕ける瞬間のように四散し、飲み込まれていた人間たちが解放される。
「……!!」
倒れた人々に駆け寄った朔良は、彼らの顔色を見て気づく。
「柊一さん!救急車……は動くかわからないか……」
「救護班でもなんでも、動けそうな人っています!?」
「瑞稀、どうだ」
『急に連絡よこしたと思ったらなんや~!』
『手回せそうなのなら何人かおるで!』
「ディルクロに向かってください!」
「このひとたち、まだ息がある!」
「え!?」
「十日さん……!!」
「コアに繋がれて、一時的にもシーカーの治癒力が移ったのかも」
「う、もう意識朦朧だから……」
「ご、ごめん!ゆっくり休んで!」
「ここは俺に任せろ、おまえらは行くとこがあるんだろ?」
真冬がそう言うと、夏生たちは顔を見合わせる。
「ディルクロの社長……」
「千秋も会おうとしてたが」
「おまえらが行ったほうがきっといい」
「気を付けろよ」
「うん、行ってくる!」
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